OBと教授が語る、高畠町のこと。
地域の文化資源を教育に取り入れ、次世代につなぐ。

『高畠まちあるきプロジェクト』を主宰し、学生と共に高畠石の石切技術と利用実態の調査を続けている歴史遺産学科の北野博司教授と、歴史遺産学科卒業後、中学校の社会科教員となった三宅祐介さんが、再び高畠町で出会いました。大学2年の時に、人生の選択肢のひとつとして考えた教職が人生の道筋となったという三宅さん。現在は、高畠町立第二中学校で1年生のクラス担任をしながら、地域の社会科部会長も務めています。三宅さんは、教員には定期的に転勤があり、地域の文化遺産を知る機会が少ないことに着目。これを教育に活かす取り組みのひとつとして、2014年の夏に恩師である北野教授を招き、地域の小中学校の教員と高畠石の現地調査の研修を企画しました。「北野先生が高畠石にスポットを当ててくれていたので、久々に連絡を取り来ていただきました。10人程のフィールドワークでしたが、北野先生と話しながら調査をすることで、地域資源としての高畠石についての認識が教員の間に確実に広がっているようです」という三宅さん。北野教授は「高畠の中学校に赴任していると聞いて身近に感じました。高畠町は、私が山形に来てから14年間調査に通っている土地。自分の故郷のように思っている場所です。そこに卒業生がいるということは心強いし、共通の話題で語り合えるのはいいですね。私が本に書いた子どもが三宅くんの学校に通っているのですから」と、顔をほころばせました。

三宅さんは高畠町立第二中学校に赴任して3年目。高畠町には不思議な居心地の良さがあるといいます。「人とのつながりが濃密といいますか、温かくて他人とは思えないような付き合いをする親御さんが多いです。子どもたちも小さな頃からお互いのことを知っているからか、優しい視線で友達を見ているんですね」という三宅さん。北野教授は「外から来た人に対しても上手く受け入れている感じがありますよね。人との付き合いが濃密といっても、変にくどいわけではなく、良い距離感を持って接してくれます」と同意。さらに「まちあるきでは石や水という自然資源を大切に使い続ける習慣を目の当たりにし、この地域独特の石の景観が生まれたことを知りました。もとより有機農業が根付いた土地、自然と人のより良い関係、食の安全やいのちの大切さを語る人たちに出会いました。地に根を張り、誇りを持って生きている人が多いのが高畠町。今の自分の暮らしを見直したくなる、そんな魅力があります」と、続けました。三宅さんはそれを受け、「子どもたちは、その環境が当たり前と思っていて、大事な町の良さだとは気づいていないようです。環境のことで言えば、どの子の家にもある高畠石や、近くの遺跡をなんとも思っていません。せっかくこの地域に生まれ育った子どもたちなので、外から来た私たちがその価値に気づかせてあげたいですね」と、頷きました。

学生時代は、歴史学、考古学、民俗学以外に、保存科学や建築史、遺跡整備学もカリキュラムに組まれていて大変だったという三宅さん。しかし、天童市の西沼田遺跡での発掘や、山陰へのゼミ旅行、卒業論文で取り組んだ曹洞宗の組織研究のために費やした時間は貴重で、幅広く学び色々な経験をしたことが、子どもに教えていくベースになっているといいます。「専門で学んだことを子どもに還元できる時間はなかなか取れない状況ですが、例えば百姓一揆の項で地域の資料を活用したり、地域文化や遺跡を積極的に取り入れる教育現場をつくっていけたら」と、思いを語りました。北野教授は、三宅さんが専門としていた歴史学を、教科書の歴史に重ねて説明したり、考古学の知識を活かした日向洞窟遺跡の案内などを提案。「大学をもっと活用してくれていいと思います。我々が間に入り、上手くジョイントしたら地域資料を教育に活かしていけるでしょう」と、現場の難しさを気遣いつつ、大学と連携することで学びを還元し、次世代の子どもたちに歴史的遺産を大切に思う心を育む三宅さんの仕事に期待を寄せました。

 

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