夏のオープンキャンパスでスペシャルトーク開催
「宮島達男副学長とのリアルトーク
卒業生が語る芸工大の魅力」

8月1日と2日に開催した「夏のオープンキャンパス 2015」。学内には全国各地から多くの高校生や受験生が集まり、猛暑にも関わらず在学生作品展示や実技体験など様々な企画を精力的に見て回っていました。本館3階201講義室では「宮島達男副学長とのリアルトーク 卒業生が語る芸工大の魅力」と題しスペシャルトークイベントを開催。社会で活躍している芸工大卒業生と、アーティストで本学副学長の宮島達男教授とのトークに多くの来場者が聞き入っていました。芸工大で何を学び、どんな力を身に付けたのか、そして現在の仕事や活動にどう活かしているのか、を語ってくれたのは現在様々な分野で活躍している4人の卒業生です。

プロダクトデザイン学科を卒業後、株式会社本田技術研究所でCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザインに携わっている、カラー・テキスタイルデザイナーの秋山ゆかりさんは、幼い頃からの夢を叶える大きな一歩となった芸工大への進路決定と入学当初について語りました。カーデザイナーに必要な知識を学べる学校を探していた際、モーターサイクル全般のプロダクトデザインを専門分野にする上原勲教授が芸工大にいることを知り、志望したという秋山さん。「上原先生には入学当初からカーデザイナーになりたいことを伝えていたので、ものすごく熱心に指導してくださいました。18歳の自分には先生の情熱が受け止められず逃げ出したことも(笑)。厳しい先生ですが、就職活動の課題制作ではその分とても親身になって相談に乗ってくださいました」。宮島副学長は「うちの先生は確かに熱い。学生に向かい合う姿勢は我が子に対するもののようですね。そういう先生が本当に多いです」と、頷きました。また秋山さんは、本学がある山形県は自動車保有率が世帯比で全国2位であり、1人1台の割合で自動車を持っている社会を学生時代に身近に感じられたことは、仕事をする上で役立っていることも語りました。

作家として活動しながら、母校である埼玉県本庄第一高等学校で美術の非常勤講師をしているのは、美術科洋画コースで油絵を学んだ棚澤寛さん。「生徒と関わりながら作家活動をすることにやりがいを感じ、作品創りを頑張っていることで生徒がついてきてくれていると感じます」という棚澤さんに対し、宮島副学長は「芸術だけをやって暮らしていける人はほんの一握り。本学では、職業を持ちながら芸術家になろう、両方併せてやっていこうということを伝えています。その見本のような生き方ですね、素晴らしい」と賞賛しました。高校生当時は、人と関わるのが苦手で学校も嫌いだったという棚澤さんですが、本学では様々な出会いに恵まれたといいます。「アトリエに入ると1人で描きたい人や、朝から晩まで描いている人がいました。同じ空間で制作しているうちに仲間ができてきて、皆で少しずつ貯金して貯まったら研究室で鍋をしたりもしました。大学院生になると学科を越えたプロジェクトも増え、天童市の居酒屋の看板や、今日いらっしゃる坂戸さんと一緒に遊佐町で着ぐるみを作ったりもしましたね」。学生時代を思い起こしながら、違った視点を持ち、新しいテーマに取り組める機会が多くあったことを振り返りました。

高校2年の時に本学美術科洋画コースで油絵を学ぼうとしていた小山優さんは、オープンキャンパスで出会った企画構想学科に一目惚れ。学生時代に「月山青春音楽祭」のリーダーを務め、地域の人や団体と共にイベントを企画運営する経験をしました。「企画構想学科はアイデアで勝負していく学科。様々な学科や地域の人と関係を作りながら自分の夢を実現できます。プロジェクトに応じて専門分野を持つ人の性能を見つける能力が培われますし、視野を広く持てる学科だと思います」という小山さん。現在は株式会社オレンジ・アンド・パートナーズに入社し、アシスタントプランナーとして、首都高の事故を減らすための『東京スマートドライバー』プロジェクトなどに取り組んでいます。油絵、ファッション、アニメ、映像、会社設立など、やりたいことが多かった小山さんにとって、本学で過ごした4年間は多くの出会いと可能性とのびのびと学ぶ時間を得た貴重な経験であったことを話しました。宮島副学長は「アメリカやイギリスの芸術大学は社会にダイレクトに関わるジャンルとして確立しています。1人の天才芸術家を育てるのではなく、それぞれが自分で考え主体性を生み出していく人を育てること。そして芸術を学んだ人たちが様々な分野で創造力を発揮していって欲しいという願いを持ち、芸工大を運営しています」と述べ、企画構想学科やコミュニティデザイン学科が育む「ものを創らないデザイン力」の重要性を語りました。

文化財保存修復学科で学んでいた学生時代、洋画コースの学生が炭酸カルシウムと木工用接着剤を水溶きして絵の下地として使っていたことから接着剤に興味を持ったという坂戸千鶴さん。現在は、そのボンドを製作しているコニシ株式会社に就職し、木工用ボンドの研究補助を行っています。「学生時代に学んで役立っているのは、実際に素材に触れてどうなっているかを実験と検証を通して分析していくこと。学科の演習で、手を動かしながらものを考える習慣が身についていることは良かったです。一見楽しくないような作業に価値を見出せることも保存修復を学んだおかげですね」という坂戸さん。訪れた高校生や受験生へ「社会に出ることは不安がらなくてもいい気がします。芸術大学は就職し難いと言われますが、スキルは社会に出てからも身につきます。私は大学4年間で生きる力、生命力を培うことができました」と、力強いメッセージを送りました。それを受け、宮島副学長は「絶えず変化していく社会の中で、生きる力を身につけることは重要です。今、安定しているように見える仕事も今後どうなるかは分かりません。そこで自分で考え、社会の変動に対応してイノベーションしていくことができるのが、生きる力。将来を創る1番大きなポイントではないかと思います」と語り、本学の教育の根幹を印象づけました。

最後に宮島副学長がそれぞれに将来の夢を聞くと、秋山さんは「私の立場からすれば車検の度に車を買い替えてもらうのが理想なのですが、10年、20年乗り続けられる車を作りたいという夢があります」、棚澤さんは「今年31歳になりましたが、後ろを振り返らず新しいことにどんどん挑戦していきたいです」、小山さんは「ものを作る人は外になかなか出てこないので、そういった人の力を外に出していくような仕事がしたいです」、坂戸さんは「宇宙の真理に近づきたいという人生の目標があります。自分の視点から社会がどうなるか定点観測していきたいですね」、と各々に大きな夢を語りました。卒業生たちの輝いた表情や言葉は来場者に届き、芸工大生になった自分がイメージできる、豊かな時間となったのではないでしょうか。

 

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