生活環境の中に彫刻を
山形の天然石「蔵王石」の魅力を伝える産学連携

9月17日から30日までの間、美術科彫刻コース有志の学生9名が蔵王山麓で「蔵王石」を使ったベンチやテーブルなどの彫刻作品を制作しました。この制作は株式会社「ざおう」と美術科彫刻コースの産学連携企画であり、「蔵王石」をくり抜いた石風呂を主力製品としている株式会社「ざおう」が、天然石である「蔵王石」の魅力を一般の人たちに知ってほしいという想いから生まれました。提案を受け、本学共創デザイン室が今回の企画をコーディネート。株式会社「ざおう」が所有する山から産出した「蔵王石」を使い、制作現場や使用する機材の提供、作品の運搬と設置にもご協力いただきながら、学生たちは自由に作品制作に取り組みました。完成した作品は学生たちの手で11月上旬に宮城県遠刈田温泉の宿泊施設「ゆと森倶楽部」に設置されます。

学生たちの作品のテーマは「生活環境の中の彫刻」。宿泊施設の中にある4.2万坪の遊歩道に設置するにあたり、8月26日と27日に当地で合宿視察を行い、環境を確認しながらどのような作品が必要なのかをプランニング。それぞれのイメージを起こしながら全体的に調和するようにデザインし制作に入りました。加工しやすい安山岩とはいえ1つひとつの作品は大きく、鉄の棒を打ち込み切り出していく作業は大変な体力と気力を要します。この企画には1年生から大学院生まで学年を越えた学生が参加していて、演習経験の少ない1、2年生には上級生が声をかけ手伝う場面もありました。指導している前田耕成教授は、今回の制作は彫刻のプランニングから制作、設置までの過程を共に実体験できる貴重な機会であるとし、「全てのプロセスを経験することは彫刻家として世に出た時、臆せずに制作に取り組める力となるでしょう」と語りました。

美術科彫刻コースはこれまでにもいくつか産学連携を行ってきましたが、全てのプロセスに学生が関わる案件ははじめてのこと。美術科彫刻コース4年の森本諒子さんは、「視察をしてその場でわき起こったイメージをアイデアとして提案していくことは初めての経験。1泊2日の視察は楽しく内容の濃いものでしたが、逃げ場がないような環境で緊張感もあり、普段より集中して制作に取り組むことができたと思います」と、粉塵が舞う現場でも充実した笑顔を見せました。森本さんが制作しているのは、「蔵王石」そのものを見せるような、ごろりとした丸い形のベンチ。座る部分だけがくり抜かれているので、緑の遊歩道の中で目にした人はオブジェではなくベンチであることに意外性を感じるような作品です。歩き疲れた人がほっと一息ついてリラックスして欲しいという気持ちから、座りやすさも追求。普段の彫刻作品では行わない、自分で腰掛けて座り心地を確認する作業にはプロダクトデザインの側面もあったといいます。また、株式会社「ざおう」の現場で見かける職人の仕事ぶりは興味深く、大学がある山形の、この地域でしか採れない石を彫ることにも面白みを感じたそうです。

前田教授は「実際にクライアントの話を聞きその要望に応えること、大きな作品に取り組み視察から設置までを行うことなど、大学の授業だけでは得られない経験を積むことができたと思います。企業と連携し、こういった機会に学生が学べることはとても大きい。今後も照明器具や車止めなども作り、作品を通して「蔵王石」の魅力を伝えていきたいですね」と、連携企業に感謝を表すとともに、これからの展開についても語りました。

 

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