文芸学科が教えてくれた、本をつくる楽しさ。
読むこと・書くことは社会につながっている。

これまで、『置かれた場所で咲きなさい』や『1リットルの涙』、『13歳のハローワーク』など、様々なベストセラーを生み出してきた幻冬舎。文芸学科の一期生である樋口早紀さんは、現在、編集本部に所属。編集者として書籍の編集や企画の考案に携わっています。「私たちの仕事は、まず著者と知り合うことから始まります。そのため本屋に通い、どんな本が売れているのかを常にチェックします。そして、その本を買って実際に読んでみて、そこからどんな本をつくりたいかを企画し、著者に直接コンタクトをとってお会いする、というのが主な流れになりますね」。また、原稿への赤入れはもちろん、書籍のタイトルや帯の文章、裏表紙に掲載するあらすじを考えたりするのも編集者の仕事なのだそう。現在は主に、先輩の仕事を手伝う形で本づくりに携わる毎日。そんな中、初めて全体を通して関わることができた1冊が、文芸学科の学科長でもある山川健一氏の著書『人生の約束』でした。

実は大学時代、山川教授のゼミに所属していた樋口さん。第一線で活躍する教授陣との自由かつ濃密な時間が、自らを大きく成長させてくれたと言います。「文芸学科には、本音で話してくれる先生方が多かったですね。授業では、政治のことや社会問題などいま起きていることを顕著に取り上げてくれましたし、すごく世の中の見え方が変わったことを覚えています」。また樋口さんは、友人とともに、東北芸術工科大学創造性開発研究センターの講師である有賀三夏氏の著書『女子大生に超人気の美術の授業』を企画・編集。在学中に出版するという大きな経験を得ることができました。「連日徹夜できつかったけど、著者である有賀先生の話をじっくり聞いたり、一緒に困難に立ち向かっていくうちに、だんだん気持ちがシンクロしていって、まるで脳を共有しているかのように考えることが一緒になっていく感じがとても面白かったです。この経験がなかったら、編集の仕事には就いていなかったかもしれません」と当時を振り返ります。そして、その頃から実感し続けているという、信頼関係を築くことの大切さ。「『本を作る』というのは、『人間対人間』の仕事であるといつも感じています。そのためには、著者のことを知ろうとする努力が必要なんです」。著者が出した過去の本を全て読むことはもちろん、Twitterやホームページを見て、その著者がいまどんなことを考え、ど
んなことに興味を持っているのかを把握し、提案につなげていくのだそう。さらに、「この仕事に就いてから、『自分が好きだから』という視点だけでなく、『世の中の人がどれだけ関心があるか』という視点で物事を注目するようになりました」と樋口さん。

そんな樋口さんに普段読む本の冊数を尋ねてみたところ、なんと「1日に3冊」との答えが。しかも多い時は5~6冊読むというから驚きです。「本を読んだりモノを書く行為って、全ての基礎につながっている気がするんです。アートは全方位でつながってますしね。だから、何かを作りたいんだけど何を吸収したらいいかわからない、という人は、1年間で100冊本を読む、というところから始めてみるのがいいんじゃないかな」。それは、教授に本を多く読むことを勧められながらも、あまり読まずに大学時代を過ごしてしまった自分への反省でもあると正直な気持ちを教えてくれた樋口さん。文芸学科で教わったこと一つひとつが結果的にとても有効であったことを、社会人になったいま改めて感じながら、樋口さんは今日も編集者として、多くの本、そして多くの人と向き合っています。

 

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