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卒展開催記念パネルディスカッションの前に行われた卒展プライズ2008 公開講評会の様子。今回は、プライズ受賞者が登場し、作品をプレゼンテーションするとともにスピーカーのみなさんから直接講評をいただきました。

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杜の都で開催された「茂木健一郎×宮島達男」特別トークライブ
テーマは「アートが世界にできること」。脳科学者と芸術家による興味深いトークの一部をここに再現、ご紹介いたします。

宮島:先日、エイズ発祥の地で孤児が沢山生まれているウガンダに行ってきました。その孤児たちが暮らす施設に行き、芸工大生が考えたプランを使って、子供たちと絵を描くワークショップをやってきました。みんな絵の具なんて使ったことがないので恐る恐る描き始めたのですが、暗かった子供たちが、自己実現をして、明るくなっていく、そんな経験をしました。茂木先生は、「芸術」という大きなくくりの中では何を考えておられますか?

茂木:アートというのが、ともすると我々の生活の必要から離れた、道楽ととらえがちですが、我々が生きることと結びつく表現だと思います。例えば、「戦争反対」をするにもデモや行進をするというストレートな表現もありますが、それをアーティストは、別の表現というかたちで昇華できるのですから。

宮島:私は、アートには2つのソウゾウリョクを養成する教育があると思っています。ルソーは、イマジンの想像力の究極は、他人の苦しみや悲しみを想像する力としています。もうひとつのソウゾウリョクはクリエイティブな創造力。難しい問題や袋小路に入った問題の突破口を考える力のことだと思うのです。アートはその2つのソウゾウリョクを涵養することができるのではないかということ。その2つの想像力を使ってそれを表現に結びつける人もいるし、一般職で発揮することもできると大学では学生に伝えています。

茂木:日本は、これからは感性の時代。アート的感性は、普通の仕事でこそ生かされていくし、芸術大学で育まれているイマジネーションとクリエイティビティを生かす場所は数限りなくあって「アート」だけではないというのは、良く考えれば、当たり前のことですよね。

宮島:芸工大では、今年から企画構想学科という新しい学科もできました。企画やアイディアは、人を幸せにするために存在するデザインがあるはずだという趣旨で立ち上げました。いろんな職場でクリエイティビティが、イマジネーションが発揮されたとき、世界が変わるのではないだろうかと。そういう人材を育てていきたいと思っています。

茂木:この10年20年で世界に変化をもたらす鍵って何だと思いますか?

宮島:ひとり一人が自分のソウゾウ性に気がついていくこと。他者の痛みを想像できたら、戦争もおこらないし、子どもも殺さないし、地雷も埋めないはず。

茂木:アートって、地位とか名誉とか関係なく、人を幸せにすることができるんじゃないかと思うんですけど。

宮島:アート作品というのは、単なる物質。でも実は、それを通じて、自分の中のアートを見ているのだと思います。観る人がすばらしい。作品は単なるトリガー。それをきっかけにして、自分の中のアートを見て感動している。

茂木:作品の中にある美しさや清々しさは、もともと自分の心の中にあったもので、存在していないものは、見えないというわけですね。

宮島:ええ。僕は、「Art in You」ということをよく言うんですが、一つのアート作品を様々なシチュエーションで見て欲しい。嬉しい時、悲しいとき……、きっと変わって見えると思います。なぜなら自分の心の状態が変わっているから。

茂木:僕、宮島さんの声が好きなんですよ。言葉というのは音楽の側面があって、そういう意味ではみんな音楽家。声のリズムや声質で、その人の言ってることが心に入ってこなかったりするでしょう?自分の中に浮かぶことの中から何を選択して発していくか。言葉が、世界を変えていくことに繋がるんです。

宮島:自分には世界を変える才能なんてないと思っている人も多いですよね。でも、朝、起きたら近所の人に「おはよう」って言うだけで人を心地よくできて、その時に幸せのインカネーション、連鎖が起こる、それが広がると世界を変えてくことにつながるんじゃない?と言うんです。今、副学長として、学生にはデッザンとか芸術平和学を教えています。世界の問題をどんな風にアートとしてとらえて活かしていくか。クリエイターとして、世界問題を受け入れながら、自分の中で分析をしながら何をしていくのかという授業です。今、目指しているのは、授業はアートだということです。感動しないと人には伝わらない。自分が感動していないと、学生には伝わらない。自分が感動できる、授業が感動できる。そしたら、学生たちにもっと伝わるのではないかと思っています。

茂木:感動することは、新しい世界にふれること。自分の人生で今までと違うことを始めたくなるような、そんな授業にしたいですよね。
そして、それを聞きたい人はぜひ、東北芸術工科大学へどうぞ(笑)!

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