「ロンドンの歴史あるデザイン作品の展示会〈デザイナーズブロック〉に出品したいから応援して欲しい、と突然訪ねてきたLinkメンバーの大沼さんと篠塚さんのことはよく覚えています」と赤坂先生。芸工大生が世に出るときに立ちはだかる東京の壁や世界の壁、その壁をこういうカタチで突き破ろうとしているエネルギーに感銘を受け、これは応援しなくてはいけないと思ったそうです。使ったことのない英語を一生懸命駆使してメールで主催者とやり取りし、渡航費の一部は大学の予算があてられたもののほとんどが自腹。そんな思いをして初代Linkのメンバーがアクションを起こしたからこそ、それが伝統となって〈デザイナーズブロック〉への出品が3年4年と続いていったのです。
「彼らは芸工大の若いデザイナーたちが世界に出て行く道筋を作ったパイオニアですよね」と赤坂先生はLinkの活動を非常に高く評価。さらに、「ひとりではなかなかやれないことを芸工大のLinkというグループとして出て行ったのがよかった。そのやり方がパイオニアとして大きな役割を果たしたと思いますよ。その中で一人ひとりがどのように育っていくかはまた次のステップ」と、大学院を修了して巣立っていった彼らの近況も気になる様子。
昨年12月に大沼さんと篠塚さんが塩釜市で9日間限定のインテリアショップ「9DAYS DESIGN STORE」を開催したというニュースには顔をほころばせていました。そのイベントの出品者には他のLinkメンバーも名を連ねており、Linkが離合集散を繰り返しながらも存続していること、さまざまなカタチでメンバーがつながっていることを知ると赤坂先生はさらにうれしそうな表情を見せたのでした。
「僕がやったことはたいしたことじゃないよ」と、赤坂先生は当時をこう振り返りますが、大沼さんや篠塚さんにとって赤坂先生の支援はどんなに心強かったことか。あの時、背中を押してもらったことで早々と世界に飛び出し、厳しい意見にもさらされたからこそ今の自分たちがいるのだと感じているのです。現在、大沼さんと篠塚さんは仙台市内に共同でオフィスを構えてそれぞれに活動中。創作活動のかたわらワークショップを行ったり、講師として教壇に立ったり、さらには新たなブランドの立ち上げも構想中という話もありました。
「こんな厳しい時代に社会に投げ出されて、彼らは本当に大変だ」と赤坂先生は卒業生たちのその後を気に掛けているようですが、大沼さん、篠塚さんを見る限り、大変ながらもなかなか楽しそうにやっているので大丈夫。それでも、赤坂先生は、巣立っていった卒業生たちを大学として応援し続けていきたいと考えています。そのための道筋も少しずつ整いつつあると明るい展望を語ってくれました。