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小白川町にある「Café Espresso」が出店した1Fカフェスペース。インテリアのアクセントにもなっている赤い椅子は、旧シネマ旭の座席を再利用したものです。長時間座ってもお尻が痛くなりません。

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日常の中の芸工大

アートの利用価値を高めたアジアハウス
国際映画祭で実現した「映画の中で暮らす」こと。

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「あらゆるジャンルと関わってリノベーション出来たことが嬉しい」と語る川上謙さん。

2009年10月8日から15日まで山形国際ドキュメンタリー映画祭2009が開催されました。毎年映画祭では期間中に訪れる多くの外国人客を受け入れる宿泊施設として〈アジアハウス〉を設けていましたが、2009年は〈ミサワクラス〉とコラボレーション。ミサワクラスの隣のビルを改装し、1Fをカフェスペースに、2〜4Fをドミトリーとして開放しました。また、期間中は映画祭との連携プログラムとして連続レクチャー『再生のスタンス』を発表するなど、新たな関わりをみせました。

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「立体作品として完成品を見た時には驚きと感動がありました」と語る後藤和也さん。

改装にあたっては、川上謙さん(大学院建築・環境デザイン領域)をはじめとするミサワクラスのメンバー20名程が参加。古い畳の和室、触るとポロポロと崩れる土壁、寒々しい印象を与える鉄筋の建造物をあたたかみある空間にするために、多くの人と話し合いながらプロジェクトを進めたそうです。その中で生まれたコンセプトは「映画の中で暮らす」。運搬用の木製パレットを利用してドミトリースペースのベッドやカフェスペースのテーブルカウンターなどを作り、また旧シネマ旭の座席を椅子として使うなど、限られた予算の中で異国の映画セットのような雰囲気を作り上げる工夫が随所に見られました。

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映画祭期間中は、メイン会場のazと、市民会館、フォーラム、ソラリスを繋ぐルートとして七日町の人通りも格段に増加します。そんな中、街行く人々の足を止めたのは、アジアハウスの2〜4Fの外窓に施されたグラフィックでした。このグラフィックを担当したのは後藤和也さん(大学院ビジュアルコミュニケーション領域)。2003年の映画祭で大賞を受賞した王兵(ワン・ビン)監督の『鉄西区』のワンシーンを画像化したもので、夜は中からの光で街の中に『鉄西区』の登場人物とビルの中で生活する人の影が浮かび上がり、昼は外からの光でドミトリーの床に映画のワンシーンが映る仕掛けになっています。廃れ行く中国の工業地域「鉄西区」の工場、街、鉄路などの風景に「再生」という共通項を見いだし、ビジュアルとして採用したそうです。後藤さんは、「今回の経験を通して空間における目線、ボリュームの置き方、新しいものの見方を得て、インスタレーションの新たな可能性を感じた」と語りました。

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夕方になると存在感を際立たせ始めるアジアハウスの外観。ドミトリー内部はシンプルで過ごしやすい空間になりました。

その日観た映画の内容について真剣に話し合い、映画のワンシーンが映る部屋で寝起きし、明日観る映画について考える。文字通り「映画の中で暮らす」ことを具現化したアジアハウスは利用客にも好評で、川上さんは海外からのお客様から感謝の気持ちが記されたカードをプレゼントされた事もあったそうです。アジアハウスは宿泊費の安さやチェックイン時間の自由度などが要求されることが多いため、郊外に設けられることが多かったのですが、七日町に宿泊客を受け入れることで不便さをなくすとともに街を24時間活性化することにも繋がりました。

アートの利用価値を大きくアピールしたアジアハウス。今後は、シェアアパートやデリバリーカフェとしての開放も考えられており、ますます目が離せません。

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