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向井山朋子『Nocturne 夜想曲』がオランダフェスティバルに出展されます

この度、2011年秋に東北芸術工科大学 美術館大学センターにて企画開催した、ピアニスト/アーティストの向井山朋子さんのプロジェクト『Nocturne 夜想曲』が、『オランダフェスティバル』で初公演をむかえることとなりましたのでご報告いたします。

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TOMOKO MUKAIYAMA 向井山朋子
『Nocturne 夜想曲』オランダフェスティバルに参加
ピアニスト/アーティストの向井山朋子による「Nocturne 夜想曲」(2011年初演、山形) を、オランダ最大の国際舞台芸術祭であるオランダフェスティヴァルにてヨーロッパ初演いたします。 本作は、昨年2013年の瀬戸内芸術祭でも発表され、多くの方に強い感銘を与えました。海を超え、遠くオランダの地で奏でられる東日本大震災の津波で被災したピアノと女性たちをめぐる鎮魂と再生の物語をぜひ体験、体感ください。

■開催情報
展覧会名:Nocturne/夜想曲
会期:2014年6月1日(日)~29日(月)
会場 :Muziekgebouw aan’t IJ/Piet Heinkade 1,1019 BR Amsterdam
料金 :無料 ※オープニングコンサート:2014年6月2日(月)18時30分~

■向井山朋子 “Nocturne/夜想曲”
「夜想曲」は、津波によって激しく損なわれ、楽器としての生命を絶たれた2台のグランドピアノによるインスタレーションである。避難所となった石巻の小学校に残された、黒い海水に押し流され、泥が堆積したピアノをギャラリーに移設し、向井山はその表面に「口紅」を施していくという。避難所の女性たちにとってメーキャップは日常の恢復へ至る最初のステップ、あるいは秘符のような役割をもっていたと聞く。赤、ピンク、オレンジ… 訪れる観客によって色とりどりの口紅に塗り固められていくグランドピアノは、女性たちにあたらしい日常への転調を促す、一種の儀礼的な供物としてそこに置かれるのである。未だ福島の放射能汚染が収拾の兆しが見えず、むしろ深刻さを増す2011年10月。東北において初演される「ノクタ ーン」は、おそらくはまだ、〈演じられた日常〉の、捩じれのなかで幕をあげることになるだろう。ピアノのすべらかな表皮で混じりあう、乾いた汚泥と口紅から発する声なき声は、女性たちは、果たして何を語りはじめるのだろうか?

■アーティスト・メッセージ
地震があってから数週間後、
友人から津波で破壊されて、路上に捨てられたピアノの話を聞いた。
声も出せず、泥に飲まれて死んでいった何台ものピアノ。
その光景はメディアで伝えられた映像のどれよりも、
3.11の悲惨なリアリティとしてとして心に焼き付いた。
避難所のご婦人が再びお化粧を始められたとき、
そこに日常が戻る兆しが見えた、と言う。
口紅が普通の生活が戻ってくる最初の印しだった、と聞く。
ここに2台のピアノがある。 泥の中から戻ってきたピアノ。
足がもぎ取られ、ハンマーがずっしり泥を吸い込んで声が出ないピアノ。
死んだピアノ。
1台はそのまま、できるだけそのまま、その悲しい姿をさらす。
2台めは少しずつ目が覚める、ゆっくり生きかえる。
皆がそう願っているから。
皆が口紅をつけていく。
ピアノのために、自分のために。
向井山朋子_2011年6月15日
「静謐な気持ちをもたらす力強いインスタレーション。津波の被害者たちに対する黙祷の気持ちは、2台のグランドピアノが津波によって破壊された小学校の音楽室で使用されていたということを知るとさらに印象深いものとなる。」
〜アクセル・ルーガー/ゴッホ美術館館長

撮影:瀬野広美

■クレジット
コンセプト & デザイン:向井山朋子
ピアノ&ビデオによるオープニングコンサート:向井山朋子
制作:Tomoko Mukaiyama Foundation, 東北芸術工科大学
共催:オランダ・フェスティバル、Muziekgebouw aan ’t IJ
協力:株式会社コーセー、エーオンジャパン株式会社、Atlantische Assuradeuren B.V、オランダ舞台芸術基金、公益財団法人アサヒビール芸術文化振興財団

■「夜想曲」演奏歴
2011年10月10日―11月27日| 展覧会|東北芸術工科大学,山形
2011年10月15日|『夜想曲』コンサート,白鷹町文化交流センター,山形
2011年10月17日|『夜想曲』コンサート,門仲天井ホール、東京
2013年3月6日|『夜想曲』コンサート,ジャパン・ソサイエティ,ニューヨーク
2013年7月20日―9月10日 展覧会|伊吹島、香川,瀬戸内国際芸術祭
2013年8月17日|『夜想曲』コンサート,観音寺,香川
2013年8月26日|『夜想曲』コンサート,ベケットフェスティバル,アイルランド
2014年6月1日―29日 展覧会|アムステルダム,オランダフェスティヴァル
2014年6月2日|『夜想曲』コンサート,アムステルダム

■アーティストプロフィール
向井山朋子(ピアニスト/美術家)
オランダ・アムステルダム在住のピアニスト、美術家。1991年国際ガウデアムス演奏家コンクールに日本人として初めて優勝、村松賞受賞。アンサンブル・モデルン、アンサンブル・アンテルコンタンポラン、ロンドンシンフォニッタ、ロイヤルコンサルトヘボウなどに毎年ソリストとして招聘され、新曲の初演に携わる。また、近年は従来の形式にとらわれない舞台芸術やインスタレーション作品を発表。オランダでの初演後、世界各国で再演された、たった一人のためのピアノリサイタル ‘for you’ (2005年横浜トリエンナーレ参加作品)は、観客とコンサートの定義を巡り論議を呼ぶ。2006年シドニービエンナーレで、ガラス、光、ピアノとノイズ を使った ‘you and bach’ を発表。2007年に「向井山朋子財団」を設立し,自らアーティステックディレクターとしてプロデュースの分野でも活躍。デザイナー、クラヴァース・ファン・エンゲレンとの共同制作 ‘show me your second face’ (2007年)は「ファッションと音楽の融合」と高い評価を受ける。日本で初演した観客参加型の企画‘夏の旅―シューベルトとまちの音’(2007年)を欧州と米国で展開。また、振付家イリ・キリアン/ネザーランドダンスシアターとの共同作品 ‘Tar and Feathers’(2006年初演)は好評を博し、ノルエー国立バレエ,ボストンバレエ等と共演。越後妻有アートトリエンナーレで発表した、12,000着の絹のドレスと経血とピアノ作品が織りなす壮大なプロジェクト‘wasted’は世界から1000人の女性たちが参加し,その過程はドキュメンタリー映画「白い迷路」として記録され、今再び世界を巡回している。2011年東北芸術工科大学の招きで津波で損なわれた2台のピアノによるインスタレーション「夜想曲」を発表。翌年ダンストリエンナーレトーキョーとの共同制作でダンス作品「シロクロ」を制作し、ヨーロッパツアーが進行中。2013年は瀬戸内芸術祭で「夜想曲」が再演されたほか、愛知トリエンナーレでイリ・キリアンの新作「EAST SHADOW」の音楽を担当、ジャン・カルマンと恊働したインスタレーション・パフォーマンス「FALLING」が好評を得る。今年はオーケストラとの米ツアーと並行し、子供の為のミュージック・シアター、イスラエル人振付家 Guy&Roniとの新作が発表される。
→向井山朋子公式ウェブサイト: www.tomoko.nl
→プロジェクト’wasted’ ウェブサイト: www.wasted.nl

■オランダフェスティヴァルについて
オランダフェスティヴァルは1947年以来、毎年国際レベルの舞台芸術をオランダの内外に向けて発表する蘭最大規模のアートの祭典。六十年以上の歴史を持つこのフェスティバルのプログラムは音楽、演劇、ダンスを中心としており、世界のトレンドセッターと言われることが多い。
→オランダフェスティヴァル公式サイト: http://www.hollandfestival.nl/en/