つぶやきカルテ2010(3月10日)
みなさんお元気ですか。
東北地方太平洋沖地震により被災された方には心よりお見舞い申し上げます。
また犠牲となった方々のご冥福をお祈りし、
これから一人でも多くの方が一日も早く家族に再会できますよう願っています。
芸工大の学生も、全在学生2,153名の安否確認が取れ、災害での在学生の死亡者は居ないという報告がありました。
そこで少しずつ日常を取り戻すためにも、あえて『うんどうのオフィスアワー』のつぶやきをさせていただくことにしました。
1.どんなことをしていましたか(子)
見てください。
今年度第1回のオフィスアワーの様子です。
こんな感じでスタートしたんですね。
それを考えるとずいぶんとダイナミックな『うんどう』の世界ができたのではないでしょうか。
2.どんなこと(関わり)をしていましたか(母)
お母さんたちのまなざしコメントが愛にあふれてきました。
「できる・できない」という他者との比較による客観的評価、「力がない・遅い」という物理的な尺度による客観的評価から、少しずつ少しずつわが子が運動をしながらどんな表情を見せ、どんな発見をし、どんな感覚を感じたのかという主観的な『うんどう』のとらえ、理解、共感、そして共振が生まれてきたのではないでしょうか。
“知性”ではなく“感性”
ということも少しなじんできたでしょうか(笑)
すご〜くあいまいな説明で、相変わらず知性にあふれたお母さんたちの頭を混乱させていますが、なんとな〜く「?????」が「???」になって「……!?」って感じになってくれれば嬉しいです。
なんてまたポワ〜ンとした説明ですね。
でも1年間まなざしカルテを書き続けてくれたお母さんたちには感じてもらえましたよね。
3.運動面において気づいたこと、変化はありましたか
この時期になって突然だいち組の運動に対する志向性が勢いづきました。
まるでラストスパートがかかったように……
おかげで、たいよう組やほし組の子どもたちも「運動」に向きあうことを始めました。
なぜか不思議と毎年だいち組の子どもたちはおきみやげを残してくれます。
来年度に向けて大事にしたいですね。
それからこれから動く自分の運動感覚をあらかじめ感じることができるようになってきました。
だからこうやって前の人がデバイスを終えるまでスタートしません。
この先に気持ち良く運動する感覚が、動く前にも感じられているからです。
だいち組の運動の志向は跳び箱の「開脚跳び」だけではなく鉄棒の「逆上がり」にも向けられました。
私は普段あまり「逆上がり」の技術的な指導をしません。私の長い人生をかけた取り組みの中で、「逆上がり」をできるようにするための方法(テクニック)があります。このテクニックは論文にしたり、学会で発表したり、『柳川式逆上がり』なんてことでテレビで紹介してもらったりしました(ちょっと自慢ぽいかな)。
そして短期的な出会いの子どもたちにはその方法を使って指導しますが、長い期間をすごす子どもたちにはそれをしません。
それはひとつの運動を完成に近づけるためには、さまざまな運動の感覚も必要だからです。そのさまざまな運動感覚を体験して身体感覚の知識“身体知”として理解していくことが運動を>“感性”でとらえるために重要だと考えているからです。
逆上がりをテクニックを使って近道をさせると早くできるようになります。でもそれは型にはめていったということにもつながります。つまり運動の鋳型化現象というものです。ここでは身体は物理的に訓練された状態で、できたという喜びは十分に得られますが、そのために必要とされる運動の感性が育っていない可能性があります。
小学生の子どもたちに頭を使って、工夫をして、自己の運動をふり返りながら運動を指導するときには、それでもよい体験になることもあります。
でも、さまざまな運動感覚の感性を使って運動を展開していくと、もっともっと応用のきく運動の習得ができるようになります。
たとえばこの逆上がりができるようになるためには
まず体育館が好きにならなければいけません。
そして鉄棒が好きにならなければいけません。
そして『うんどう』が好きにならなければいけません。
‘好き’になるっていうことは、‘嫌い’がスタートだったりします。それが‘嫌いじゃない’、‘いても(やっても)いい’になり、やがて‘好き’になったりするのです。そんなゆっくりしたまなざしで“うんどう”を見守るのがこの時間です。
そして少しずついろんな運動感覚の感性を創発していきます。
前に回る感覚
後ろにひっくり返る感覚
支える感覚
その支える感覚のためにこんなことをしたり
こんなことをしたりします。
それから自分のからだをコントロールする感覚
いろんな感覚の素材(動感素材)を体験、蓄積して運動と向きあうと、 自分自身の工夫の中で運動の感覚を発見することができます。
「あ!こうすればいいんだ!!」
そんな運動感覚の発見の喜びを、この「うんどうのオフィスアワー」の展開のなかで感じてもらえたら嬉しいなと思っています。
4.次回のオフィスアワーに向けて
だいち組のみなさん
“うんどう”って楽しいと思ってもらえましたか。
最後に言ったように、この「うんどうのオフィスアワー」は、そう思える時間にしていきたいと思っています。
もし運動が嫌いになりそうになったら、またここを覗きにきてください。
「あ〜やっぱり楽しいな♡」そう思ってもらえる“うんどう”の世界を次年度も展開していきたいと思っています。
いや、もっとパワーアップ!!です。
少しずつ少しずつ
無理をしないで元気をとりもどしていきましょう!
「頑張らない!」がモットーの柳川郁生です。
みんなの元気がそろってきたら、またいつも通りやりましょう。
その時を楽しみにしています。
こんな時だからこそ、つぶやいてみました。
つぶやきカルテ2010(3月 3日)
1.どんなことをしていましたか(子)
スタートはいつものブリッジ返しでした。
ここのところ特に目新しいデバイスはつくらず、同じ運動をくりかえしています。
しかしそれがかえって子どもたちにとって、自分自身のうんどうの変化を感じさせてくれるのかもしれません。「あ!この間より簡単にできた♡」、「お!しっかり支えられたかも…♪」なんて感じで。
柳川式の跳び箱です。
「支えて・返して」、「軽やかに走って」、「支えて・おしりをフワッと持ち上げる・からだをサッと切り返す」そんな感覚をつくりだしたりしてきて、ここでは支えた腕や肩の上にフワッとからだがのっかる感覚をつくりだしていきます。
そんなさまざまな運動の感覚が、開脚跳びや、逆上がり、それから側転など、さまざまな運動の動感素材として蓄積されていきます。
そしてすき間を開けたマットの上を軽やかに走り抜け
それから今度もっとよく観察してみようと思ったこの走りのデバイス。
マットに残った足跡のつき方になにか発見がありそうな……どうでしょう?
その先には駆けあがっていってジャンプがあります。
坂道から放物線を描くようにとびだせるようになると
フワッとからだが浮いてきます。
すると横を走っているお母さんも床の上でフワッとしているのかもしれませんね(いづみさんとあづさちゃん、そっくりの姿勢です)。
ボールタッチジャンプもありました。
この運動からデバイスへ気持ちが向かっていく子どもたちもいるようです。
子どもたちにとって優しい入口になっているんですね。
鉄棒は、びゅんびゅん振るっていうことが分かってきたみたいですね。
前回りや逆上がりもいいけど、本当の使い方はスウィングだと思っています。自分のからだを運動の発信源として動かすと、大きなスウィングが生まれてくる。そしてそれを大きく、小さくコントロールしていき……やがて次の技(運動)がなんて考えるとおもしろいですョ。
でも逆上がりもみんなにとってはひとつの目標ですよね(これは仕方がない)。
私は逆上がりや開脚跳びといった運動課題にあまり特化して取り組みたくはないのですが、子どもたちがここに興味をもって取り組み出したら応援せずにはいられませんよね(笑)
大人が与えた課題ではなく、子どもたちが自ら取り組んでいる最近の逆上がりや、開脚跳び、それから側転などというのもこの時間の重要な志向性の現われではないでしょうか。
つい最近まで体育館に遊びに来たの?って感じで楽しんでいただいち組のみんなの真剣な取り組み。
なにがきっかけでこうなったんだろう?
どう導いていったらこうなるのだろう?
こんな気持ちにさせるにはどんなまなざしが必要なのでしょう?
これって難しいことなのでしょうか?
いろいろとまた発見できそうですね。
<促発に必要な能力>の2つ目「交信能力」の
“『共鳴能力』:運動感覚能力を前提として、相互にチャンネルが生化される。”
ということですね。
2.どんなこと(関わり)をしていましたか(母)
なんとなくお母さんたちの早いリード(導き)があったからでしょうか、子どもたちは集中して“うんどう”の世界へ没頭していたように思います。
あまりにも熱気にあふれていて、思わず競技前の体操の大会会場を思い出してしまいました。
まるでワールドカップに出場する選手とコーチのように子どもたちが真剣に運動に取り組み、それをお母さんたちが熱く見守っています。
にわかに活気づいた試合前って、そんな感じなんですョ。
それにひきかえ前日までの練習は意外と地味で、コツコツとした基本トレーニングを黙々とこなしながら、ひとつひとつの感覚を丹念に納得のいくまで確認するような練習をしていたりします。
それはそれは世界一を争う競技の大会であっても、ゆったりとした時間の中で“うんどう”という空間の中にまずは感覚をゆだねる心地の良い瞬間です。
私は大会に出場する側ではなく運営する側でしたが、なんとなくその時のことをふと思い出してしまいました。
3.運動面において気づいたこと、変化はありましたか
「だいち組の変貌」がオフィスアワー全体に影響を与えているような感じです。
やっぱりそのパワーってスゴイですね。
そう考えると来年はどうなるんだろう?
いまのたいよう組とほし組の子どもたちとお母さんたちのパワーが育っていくと……
お、恐ろしい
い、いや楽しみです(笑)
でも本当にやっと子どもたちの中にはっきりとしたかたちの‘運動’が見えてきたって感じですね。だから運動感覚を感じて、だから夢中になれる。ということではないでしょうか。
ふわっとした“うんどう”という感じ方から始まって、今だいち組のみんなは‘運動’を発見できたのではないでしょうか。これをもっともっと続けていけば、もっともっと‘運動’を好きになってくれると思うのですが……ぜひ忘れずに(涙)といったところでしょう。
4.次回のオフィスアワーに向けて
今までやってきたことを今まで通りにやる。
特別なことをするのではなく、今まで通りにする。
そのための素材(動感素材)をこれまでたくさん体験してきたはずですから。
そしてまだまだこれからも楽しい運動と出会えるはずですから。
なんてはなむけみたいな言葉になってしまいましたが、まだまだ続くということです。
たくさんの子どもたちとお母さんたちが体育館に集まって、なんだかすごく活気のある時間になりました。
ど、どうしちゃったんだろう(汗)みたいな、嬉しい時間でした。
つぶやきカルテ2010(2月24日)
今回も少しブログアップが遅くなってしまいました。実は先週の金曜日から昨日まで、芸工大と東北文教大学、羽陽短期大学の学生による「<遊具>を創る」というワークショップ展開の共同授業を行なっていたからです。
その様子は「かたけんブログ521」でご覧下さい。
濃密な3日間でしたよ。
1.どんなことをしていましたか(子)
スタートは平均台でした。
立って歩いたり、4つ足で進んだりしていました。
ブリッジ返しはこども芸大の定番になりつつあります(笑)
最近はとび箱がみんなの課題になっています。なんとなく目標がはっきりとする、分かりやすい運動になってきました。
ここは走っていって跳びのるデバイスですが、ちょっと淋しいですね。
なにかもっと勢いよく走れて、どか〜んと跳び上がれるような展開がほしいところです。
前へ前へぐんぐんと走っていく力強い感じがでてきました。
ジャンプの連続をリズミカルにこなしています。
やっぱりこのつま先までピンと伸びた、のびやかなジャンプ姿勢がいいですね。
輪くぐり前転。
この先になにかがあると今度はクルッと立ち上がることを誘発できるかもしれませんね。
でもこんなふうにできると、まるで体操選手みたいです!
(本日のベストショット!! 大車輪を回っている体操選手みたいです)
鉄棒もしていました。
こはなちゃんはこの前回りが今の課題のようです。こだわりをもって取り組んでいました(スゴイ!!)
スイングもずいぶんみんな自分でつくれるようになってきました。
自分で思った振りをつくれると気持ちいいですよね♡
2.どんなこと(関わり)をしていましたか(母)
お母さんが見ている「うんどう」と子どもが見ている「うんどう」。
お母さんに見えているこれからの「うんどう」と子どもたちに見えているこれからの「うんどう」。
だんだんと同じものが見えてきているのではないでしょうか。
するとジャンプを見ているお母さんのひざも
いっしょにジャンプしています。
こんなふうに徐々にお母さんと子どもたちのうんどうがつながってきています。
子どもたちが運動感覚に向きあい、取り組んでいくときの志向性と感覚を理解できるようになってくると、お母さんたちは子どもたちの運動の理解者となります。
以前お母さんたちに“『まなざしカルテ』を振り返る”ということで「振り返りの参考にする<促発に必要な能力>」という資料を配って説明をしましたが、またそんな時間をとりたいなと思いました。
3.運動面において気づいたこと、変化はありましたか
子どもたちの中にも、お母さんたちの中にも、「失敗」ということが前へ進むためのきっかけとしてとらえられるようになっていったように感じられます。
うまくできなかったことに対して、いっしょに工夫をしながら取り組んでみる。
お互いに考えを出し合い、相談しながら取り組んでみる。
すごくすごく知的な取り組みだと思います。
某体育協会から来年度の構想プログラムの中で知的プログラムなんていうのを投げかけられていますが、まさにこのオフィスアワーの場では幼児の段階においてすでに展開されているのではないでしょうか。
そうすると子どもたちの“うんどう”の結果ではなくプロセスがもっともっと見えてくるはずです。
まきこさんのように、笑顔で助走してくるときとそうでないときの違いが見えてきたり、えつこさんのように助走の勢いと踏み切りがつながってくることなど、運動のプロセスのなかでどんなことができるようになったのかを感じとれるようになっているんですね。
ほかにもたくさんのお母さんたちの「まなざしカルテ」に書かれるコメントに、どんどんと取り組みにまなざしを向けた記述が多くなっています。
4.次回のオフィスアワーに向けて
だいち組のみんなにとってはあと2回のオフィスアワーですが、そのことを考えつつも柳川の構想は来年から先へもずっとつながっています。
あと何回なんて数えずに、今やりたいことを楽しくやりましょう。