g*g Vol.20 SPRING 2012

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総合美術コースの学生と仙台市内の子どもたちが、
東北復興への願いとメッセージが込められた
10万羽の折り鶴でオブジェを制作しました。

総合美術コースは、1月13日から15日にかけ、エスパル仙台で「世界からやってきた10万羽の折り鶴たち」ワークショップGIFT BY GIFT FOR A BETTER WORLDの企画と制作協力を行いました。これは、東日本大震災以降「折り鶴に東北復興の願いを込め被災地に贈ろう」という動きが世界中に広がったことから始まりました。非営利団体ベソスファミリーファンデーションはそれを「世界の子どもたちが折った折り鶴を集め一羽あたり2ドルを寄付する」方法として体系化。世界38カ国から200万羽の折り鶴と40万ドルの寄付金が被災地へと寄せられました。総合美術コースでは、「NPO法人東北の造形作家を支援する会」と協働し、2万ドルの寄付金と10万羽の折り鶴を使用して東北の子どもたちと世界の子どもたちとを繋ぐ〈折り鶴プロジェクト〉を始動。折り鶴を使って子どもたちと一緒のワークショップと、大きな作品制作を行いました。

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榴岡小学校体育館にディスプレイした折り鶴のタペストリーと、それを背景にオブジェを積み上げる総合美術コースの学生と子どもたち。世界中から贈られた折り鶴に驚きと感謝の気持ちを抱き、直接触れて一つひとつを梱包することでその想いを受け止めた。

ワークショップでは仙台市内の子どもたちと一緒に、12cmの透明の立方体に折り鶴を詰め、テープやカッティングシートなどで装飾したキューブ約2000個を積み上げ大きなオブジェを作成しました。また、折り鶴を使った吹き流しや、大きさ3.6m×4.5mのハート形世界地図に折り鶴を貼っていく大きなタペストリーも制作。学生たちはこれらの構想を昨年9月から練り試作を重ね、当日は世界から届けられた想いの一つひとつを子どもたちと一緒に開梱していきました。学生たちは、子どもたちのために7種類のオリジナル缶バッチを作り、キューブを一つ装飾するごとに好きなバッジをプレゼントしました。子どもたちが元気で一生懸命に取り組む姿に嬉しさを感じたと語る学生は多く、子どもならではの独創的な感性にも刺激を受けた様子でした。

ワークショップの内容管理と運営のリーダーを務めた粟野さんは、石巻市出身。『福しまピクニック』など、山形県内で復興支援プロジェクトに携わっていましたが、宮城県での活動は初とのことで、自分にとって馴染みある場所で活動できたことに大きな想いと達成感があったことを伝えてくれました。また、「NPO法人東北の造形作家を支援する会」代表の藤原さんとの話し合いや、普段関わることのない多くの人々との関わりが学びになったそうです。藤原さんは、「芸工大の学生は一生懸命に考えてくれました。友達や地元が被災したりしている子もいて、このプロジェクトに対する想いが強いことが伝わってきました。鶴を折った子、被災者、学生、いろんな想いがあり、みんなで受け止めてここまできたことに意義を感じます」とこれまでを振り返りました。

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左:藤原久美子さん/NPO法人東北の造形作家を支援する会代表 中:久能和夫校長/宮城県仙台市立榴岡小学校校長 右:花澤洋太准教授/東北芸術工科大学美術科総合美術コース准教授。「生まれるイメージ」山形美術館(2005)、VOCA展 上野の森美術館(2006)など個展グループ展多数。

折り鶴に込められたメッセージがより多くの人に伝わるように、オブジェの一部は榴岡小学校、幸町児童館等、仙台市内数カ所に設置。榴岡小学校の子どもたちが、折り鶴のオブジェを背に各国の言葉で書かれた「ありがとう」のメッセージを伝える映像は、NHKインターナショナルを通じて全世界へと発信されました。子どもたちは「オブジェを見ていると明るい気持ちになります。津波の被害に遭った人にも見てもらいたいです」と、元気いっぱいに話しました。榴岡小学校久能和夫校長は、「海を渡って日本へ届けられた想いを若者につなげていきたいと思っています。小学校を開放し、想いに触れる展示の場を提供すること、小中高大学を問わず宮城県の学校が連携して積極的に動いていくことが今私たちにできる取り組みです。今回、東北に芸術の灯を灯し続けている芸工大と関わり合い、大変熱いものを感じました。学生、子どもを介して想いをつなぐ先に"希望"という可能性があるのではないでしょうか」と、志あつく語りました。

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左:段ボールに詰められて届いた10万羽の折り鶴。 中:テープやカッティングシートを使って、折り鶴に込められた想いや願いを子どもたちが表現 右:幸町児童館に設置した、別のパターンのタペストリーとオブジェ。手前の吹き流しも折り鶴を使ったもの。

花澤准教授は今回の〈折り鶴プロジェクト〉に関わるにあたり、「最初にサンプルとして送ってもらった折り鶴の入った箱を開けた時、心のこもったメッセージに言葉にならない感動を覚えました。しかし、それでオブジェを作っただけでは被災地の子どもにとっては実感が乏しいものになるのではと思い、共に作り楽しい時間を過ごすこと、一人ひとりの手のひらに重さが感じられるものにすることを大事にしました」と語り、多くの人の想いと想いをつなぐプロジェクトとなったことに手応えを感じています。

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