g*g Vol.20 SPRING 2012
2011年7月にオープンした山形市の中心部十日町にあるオリジナル木工家具の店、〈TIMBER COURT(ティンバー コート)〉。代表を務めるのはプロダクトデザイン学科卒業生の相田広源さんです。相田さんは卒業後、県内の2つの木工所と内装デザインの会社で職人の技術を磨き、知識と経験を積みましたが、〈ティンバー コート〉開店にあたっては多くの人の縁が助けになったと振り返ります。「最初は個人的にものづくりをしていました。仕事をしていくうちに知り合った方から、古材を使った木製家具など制作、販売を行っている〈Claps(クラップス)〉を紹介され、作業場が必要になった時に、〈クラップス〉のオーナーから現在の店舗のオーナーである小嶋さんを紹介されました。独立開業は、人の縁がつながりその成り行きで始めたようなものなんです」。もともとは自転車店だった場所を改装したショールームは、築70年の趣きと国道112号線に面した大きなガラス戸が印象的。人の往来がすぐそこに見えるこの場所で、相田さんは少しずつ〈ティンバー コート〉が地域に受け入れられているのを感じているそうです。「店舗を出す前、裏の作業場で仕事をしている時は地域の人との関わりはありませんでした。店舗の工事が始まると、何作ってるんだ?と声をかけられるようになり、段々とご近所さんから注文をいただくようになりました。今では町内会に入ったり、商店街の組合に入ったりしていますね。今度、組長にもなるんですよ」と、笑顔をみせた相田さん。老舗店が多く、それぞれの生活の場と仕事場が密着しているという十日町の特色に、自然と馴染んでいる様子がうかがえました。
木のぬくもりが優しい雰囲気を醸し出すショールームには、丹念な仕事が光るダイニングテーブルやキャビネット、イスが並んでいます。〈ティンバー コート〉は完全受注生産で、お客様の家、部屋、個性に合わせてデザインし、丁寧な手仕事で高品質の家具を生み出していきます。デザイン・製材・切断・接着・組み立ての全ては、相田さんと職人の丹さんの2人によって、店舗の裏手にある作業場で行われています。「お客様の顔を見て、ものづくりができるのが嬉しいです。大きな会社では、建設会社で打ち合わせし、お客様や現場に触れることなく"会社の顔"をみながら仕事をすることになりがちなので」という相田さん。相田さんが制作したフォトフレームを雑誌で見かけ、ここで働くことを決めたという丹さんは、山形にこのようなものづくりの場所があることに驚いたといいます。「最初から最後まで1人の職人が責任を持って制作ができる場所は、全国的に見てもそうそうありません。人とのつながりが持てる理想の職場だと思っています」と語り、〈ティンバー コート〉で技術を磨くことにやりがいを感じていました。
ショールームには、県内の作家8人の作品も展示されていて、山形の若い作り手が発信する"ものづくり"に直に触れることができます。少しずつ認知度を高めている〈ティンバー コート〉ですが、お客様から「ふらっと入るには敷居が高い」と言われたことから、通りを歩く人々が気軽に立ち寄れるよう、コーヒーが飲める場所にしたい、と思うようになったという相田さん。「通りに面した立地を活かし、人の流れを作りたい」と展望し、作家たちが作ったカップやスプーンなどでサービスをするカフェへと、店舗の改装を進行中。2012年7月のリニューアルオープンを目指し奮闘中です。
TIMBER COURT:http://timbercourt.net/