g*g Vol.23 WINTER 2013
無印良品の家と芸工大が連携し、これからの日本の住まいのあり方と環境、温熱性能の研究を通して未来の暮らしを提案していく「未来の家プロジェクト」が進行中です。本学敷地に建つ「山形エコハウス」の工学的な研究データとデザイン性の高さに無印良品の家が注目。2010年から連携が始まり、"立地や周辺環境に素直に(順応して)建つ"ことをコンセプトに、建築・環境デザイン学科の竹内昌義教授、馬場正尊准教授、西澤高男准教授とと共に開発を進めています。12月5日、6日には無印良品開発担当者をお招きし、実際に無印良品の家具を使ったインテリアデザインのワークショップを実施。学生が木造3階建ての都市型木造住宅をベースに、空間の利用方法について、実物大のモデルと本物の無印良品製品を使用してインテリアのデザイン提案を行ないました。
ワークショップ1日目は、木造3階建て住宅のフレームを図面に落とし込み、3つのグループに分かれてキッチンや浴室、窓の配置から都市型木造住宅での家族の生活スタイルを考察。各グループが考えたプランをプレゼンテーションした後に全体でディスカッションを行いました。2日目は、学科ギャラリーに設置した実寸大のモデルルームに無印良品のダイニングテーブルやソファなどを実際に配置しプランを具現化。エコハウス仕様のモデルルームには住宅の真中に階段があり、1階から3階まで吹き抜け構造となっているため一般的な住宅とは違ったユニークな提案が多く、原寸大で検証することでその精度を高めることができました。
階段に向けてキッチンを配置し、向かい側にあるリビングや上の階にいても家族の視線が交わるように工夫したのはAグループ。リーダーで4年生の石母田諭さんは、「料理をしているお母さんが寂しくならないように、ソファやクッションを使って目線の高さを合わせるようにしました。階が違うから別々になるのではなく、内の中央にある階段を通してコミュニケーションが取れるように配慮し、空間をつなぐことが家族のつながりになることを念頭におきました」と、提案のポイントを語りました。
Bグループは、閉鎖的な空間をどのように他の部屋と関連づけて使うかという課題に対し、"無駄なく使う"ことと"部屋の名前を疑う"ことをテーマに取り組みました。二階の中心に浴室を配置した大胆なプランでは、脱衣所を使用する時以外はリビングとつなげることでひとつの空間として機能させています。リーダーで4年生の小野寺涼さんは、今回のワークショップについて「図面だけではわからない部分が見えたり自分のグループ以外の人の意見が聞けるなど、多くのヒントをもらいました。いろいろおもしろい提案ができるな、と感じています」と、手応えを感じていました。
Cグループは、毎日の食事が家族のコミュニケーションにおいて大きな役割を持つと考え、3階にキッチンを設置。料理の匂いや調理の音が階下に届くように吹き抜けを利用しました。また、キッチンを玄関の土間に置いたプランでは、玄関をガラス張りにし、近所の人にも開かれたお店のような雰囲気を出すアイデアも提案。リーダーで4年生の加藤愛花里さんは、「壁による仕切りがない空間だったので家具によって目線を調整しました。家具の置き方で家づくりができることは新たな発見。家具については建築学では考える機会があまりないので貴重な体験だったと思います」と語りました。
学生たちが検証を重ねる様子を写真に収めながらワークショップに参加していたのは、無印良品の開発担当者である本多氏。「図面のプランで見るとどうかな、と思った提案も実際に家具を置いてみると、実現可能でアイデアの新しさに感心することがありました。学生による柔軟な発想を蓄積し、いい要素は商品開発の段階で反映させていきたいですね」と、今回のワークショップを意義深く捉えました。また、「木造フレームの搬入・組立の時に、大工さんに教えてもらいながら和気あいあいと楽しそうに作業する姿が印象的でした」と、いきいきとした学生の姿にも関心を寄せました。
指導にあたった馬場正尊准教授は今回のワークショップを振り返り、学生たちは身体を動かしながら考えることがどれだけ大切かを感じたのでは、と語りました。「建築は図面や模型を使って考えることがどうしても多くなりますが、立体的な視線の絡み合いなど、原寸大で確認しコミュニケーションを取りながら考えていくことは発見が多く、大切なことです。このプロジェクトでは環境が余りよくない都市型のエコハウスを開発していますが、大学の中でこれほどゆったりと使えるスペースがある芸工大の環境のよさ、自由さ、先生方の協力体制があって初めて実現したワークショップだったと思います」。無印良品と芸工大との連携だからこそできる、贅沢な学びの場となりました。