g*g Vol.18 AUTUMN 2011

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坂茂氏によるデザインで
女川町に新たな被災者仮設住宅を建設。
棚900個の制作はボランティア。

東日本大震災で甚大な被害を受け、いまだに避難所で暮らす住民も多い宮城県女川町。新たな仮設住宅の建設は、建築家で京都造形芸術大学芸術学部環境デザイン学科教授である坂 茂(ばん しげる)氏が手がけています。NGOボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)を主体に、仮設住宅189戸とコミュニティ施設の建設に着手し、施工は8月24日から10月下旬の完成に向けて、急ピッチで進められています。既存のプレハブ平屋型仮設住宅では、平地の少ない被災沿岸部では仮設住宅用地が不足する点を克服するために、2~3階建ての仮設住宅を設計しました。また、収納スペースをできるだけ多く確保できるように、合理的な壁面収納がある空間デザインとしています。また、付帯するコミュニティ施設として、集会所、マーケット、図書室やアトリエとして利用される生涯学習センター(音楽家の坂本龍一氏、日本画家の千住博氏による寄贈)も総合運動公園内野球場内に建設されます。

宮幸茂さん/ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)所属。「強度が高く建設期間を短縮しコストダウンできる貨物用コンテナを利用しています。ひと手間かけてクオリティを上げ、快適な住まいにすることを考え、光が多く入る掃き出し窓、トイレの収納棚を設置しました」

これらの建設作業の中で、壁収納に使われる棚の制作ボランティアを募集し、被災地の力になりたいという多くの人の手によって一つひとつ組み立て作業が行われました。本学からは環境・建築学科、プロダクトデザイン学科の学生が中心となって参加しています。岐阜県出身でプロダクトデザイン学科3年の宮島康太さんは、震災時に山形で学生をしている意味を考え、元気な身体を活かしボランティア活動に参加することを決めました。「棚の組み立てや塗装のほかに運搬などをやっています。資材を運ぶこと、トンカチひとつ打ち込むことをとっても、被災者の方々に繋がっているんだと思うとやる気が出てきます」と語り、再びボランティアに参加したいという意欲を見せました。

左:東京の職場からボランティアのために女川町に駆けつけた、京都造形芸術大学通信3年生の小林雅人さん。中:「板先生の考えやデザインに触れるいい経験にもなりました」と語るプロダクトデザイン学科3年の緒方真璃子さん。右:「東京や滋賀から来ている方もいるので、もっと山形の学生も積極的に参加しなくては」と語る、プロダクトデザイン学科3年の宮島康太さん。

同じくプロダクトデザイン学科3年の緒方真璃子さんは、スマイルエンジン山形に参加して被災地の現状を知り、被災地のこれからについて思案している時に坂氏のプロジェクトがあることを知りました。「仮設住宅とはいえ住み心地のよいクオリティを保つことは大切です。実際に坂先生とお会いして、その想いに賛同しました」将来は玩具や遊具のデザインの仕事に就きたいと考えている緒方さんは、子どもからお年寄りまでが寄り添って暮らす環境の中で、集い語らう場所の必要性を肌で感じ、この経験を活かしたいと語りました。

また、本学の学生以外に姉妹校の京都造形芸術大学からもボランティア活動に参加している方がいます。京都造形芸術大学の通信教育で芸術学を理論的に学んでいる小林雅人さんは、普段はテーマパークや劇場づくりの舞台制作を仕事にしている社会人。小林さんは「震災から半年が経過し、街づくりと心のケアが大事になると思いました。女川町の状況をしっかり見て、現場で復興に携わりたいと思い参加しています。散歩がてら、徐々に出来上がってくる仮設住宅を見にくる被災者の方と話をしていると、入居日にどんな感想をくれるのかが楽しみになってきました」と語り、「これがアクションの第一歩であり完成後も女川町を訪れ地域の人たちとコミュニケーションを取っていきたい」という想いを抱いていました。

多くのボランティアが入れ替わり、共同生活をしながら制作した棚は、189戸分、900個ほど。完成を待ちわびている避難所の方々を身近に感じる環境で、得意分野を活かし黙々と作業を進める学生たちの熱意が、ひとつの形として女川町に実を結ぼうとしています。

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