g*g Vol.18 AUTUMN 2011

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東北の未来を担う、福島の子どもたちに創造体験を。
「キッズアートキャンプ山形」を開催。〈東北復興支援機構TRSO〉

芸工大が夏休み期間中だった8月9日から12日、福島原発事故で被災された南相馬市のご家族(22組)を、3泊4日でご招待した『キッズアートキャンプ山形』を開催しました。東北芸術工科大学キャンパス、こども芸術大学をメイン会場とし、ステンシルを使ったTシャツづくりや草木染め、陶芸、果樹園や水田での農業体験など、美術大学らしい創造体験と山形らしい自然に触れる機会を多く設けた内容となりました。

左:ボランティアスタッフとして参加した、福興会議メンバーの佐藤太一朗さん(プロダクトデザイン領域院2年)と佐藤成美さん(グラフィックデザイン学科4年)中:ボランティアをする学生同士がフレンドリーでチームのような一体感を感じたという、小見実可子さん(京都造形芸術大学空間演出デザイン学科)。右:「子どもが喜ぶものを作りたかった」という、佐藤成美さんのロゴサインが使われた万国旗型の小さなフラッグ。

子どもたちを迎える学生ボランティアは、特製のバッジや小さなフラッグを用意し、子どもたちが思いきり楽しんで遊べるキャンプにしようと工夫を凝らしました。グラフィックデザイン学科の佐藤成美さんは、キッズアートキャンプ山形のロゴを制作。「緑豊かな山形と、子どもを日射しから守る麦わら帽子、子どもが大好きなお子様ランチをイメージしました」というポップで親しみやすいデザインで、告知用ポスターやフラッグ、Tシャツに使用。キャンプの一体感を作り出しました。福興会議メンバーでプロダクトデザイン領域院2年の佐藤太一朗さんは、「初日に感じられた子どもとの距離感がだんだんなくなり、仲良くなっていったのが嬉しかったです。ボランティア同士の団結が、子どもにもいい影響を与えたのではないかと思います」と語り、この活動を長く続けていきたいという想いを胸にしました。

子どもたちの活動は、"サポーター"の学生たちが寝食も共にしてフォローアップ。日中の活動だけでなく、夜の勉強会では子どもの宿題をみたり、一緒にお絵描きや折り紙をするなど、子どもと学生の関係性は濃密なものとなったようです。
京都造形芸術大学で空間演出デザインを学ぶ、ボランティアスタッフの小見実可子さんは、「こんなに長く子どもたちと触れ合う機会は今までありませんでした。どの子も元気で仲良く、楽しそうにニコニコしている顔が印象に残っています。最後にアーチを作って子どもたちを見送る時、笑顔でしたけどウルウルとしてしまいました。まだ放射線量が高い南相馬へ戻るんだと思うと胸がつまるようで…。」と去来する想いをにじませました。

「とにかく楽しい!のひと言ですね」と声を寄せてくれた小澤さんご家族。活動的なお子さんたちの輝くような笑顔が印象的。

南相馬市に自宅がある小澤さんは、7歳、4歳、0歳のお子さんと家族5人で参加。放射線量が高い南相馬市では子どもを外で遊ばせることができないので、村山市の農場での体験は子どもにとって非常に良かった、と語っています。「芝生の上で走り回っている姿を見た時には、親としてとても嬉しい気持ちになりました。顔を真っ赤にして、水を飲むのも忘れるくらいはしゃいでいました」。子どもたちが一番楽しんでいたのはTシャツ作りだったとか。ステンシルの模様を交換してTシャツに付けるというアイディアは友達づくりにも一役買ったようで、子どもたちが打ち解け、その流れが親同士の交流につながりました。小澤さんはキッズアートキャンプ山形に参加して、「本格的だけどシンプルな活動を、親子で一緒にできるということが珍しいと思いました。学生さんや先生が積極的に接してくれるスタイルが素晴らしいですね。本当に楽しかったです」と、感想を述べています。

最終日には、南相馬を象徴する「相馬野馬追」をモチーフにした旗を2枚制作。あらかじめグラフィックデザイン学科の学生たちが描いた馬のアウトラインの中に、前日に書いてもらった「未来の君へのメッセージ」をカッティングシート(フィルム)で出力し張付け、自分が書いたメッセージの上に、想いを込めてアクリル絵具を摺り込んでいきます。そして背景にはTシャツと同じステンシル技法で星を転写。最後にカッティングシートをはがすと、絵具の付かなかった生地がでてきて、メッセージが白く浮き出てきて完成です。子どもたちは、集中して色を塗ったり、走り回ったり、学生について遊んだりしながら、創作の時間を過ごしました。今にも空を駆け出しそうな、メッセージが輝く夢の馬が描かれた2m×3mの大作は、南相馬市鹿島中学校と鹿島小学校に贈られ飾られています。

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