g*g Vol.22 AUTUMN 2012

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「キッズ・アート・キャンプ山形2012」で
南相馬の子どもたちが生んだ、想像と創造の世界。
グラフィックデザイン学科がサポートしました。

8月3日から5日の3日間、福島県南相馬市の子どもたちとそのご家族を招き開催した、ワークショッププログラム「キッズ・アート・キャンプ山形2012」も今年で2年目。今回は世界中で愛されているウクライナの民話『てぶくろ』を題材に、ダンスとファッション、音楽、舞台美術を総合したワークショップを開き、最終日に作品として披露しました。舞台演出はアートディレクターの中山ダイスケ グラフィックデザイン学科教授、衣装はファッションデザイナーの飛田正浩氏、音楽はパーカッショニストの村山政二朗氏、ダンス指導はコレオグラファーでダンサーの伊東歌織氏、美術は原高史 グラフィックデザイン学科教授、と幅広く活躍するクリエイターが直接に子どもたちの創作活動を導きました。

また、芸工大のグラフィックデザイン学科の在学生に加えて、姉妹校の京都造形芸術大学の学生ボランティアも活動をサポート。会期中のすべての制作が即興で行われ、世代を越えた共同制作を行いました。

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写真左:原高史グラフィックデザイン学科准教授。写真右:エウゲーニー・M・ラチョフ原作絵本『てぶくろ』。新訳・東北版の舞台『てぶくろ』で描いたのは、原作の

音楽を担当した3年の藤原真里奈さん、小野木梓さんは、演劇を即興でつくることに普段では味わえない楽しさを感じたと振り返ります。早坂歩さん、三浦保奈美さん、藤田淑子さんは、「パーカッショニストの村山氏と、即興のアイデアで擬音語のように言葉を響かせることは新しい体験で、日常の音の聞こえ方が変わった」と語りました。また、茅原ゆきのさんは「アートとしてかっこいいものができるのか?」という不安が、真剣に創作をする子どもの変化を見て払拭され、公演後に「やってよかった!」と感激を伝えてくれた母親と子どもたちの屈託のない笑顔に、舞台の成功を実感したそうです。当日の舞台では「暗闇で聴こえる音が印象的だった」と感想を述べる観客がいたほど、独特の音響効果を生み出していました。

『てぶくろ』には様々な動物が登場しますが、その衣装や動きの創作に関わった2年の佐藤万美さん、秋山愉理さん、武田香葉子さんは、子どもと触れ合う機会が多かったことから一緒に創り上げたことに対する一体感を感じ、より深く「キッズ・アート・キャンプ山形」に関われて良かったと話します。佐藤理央さん、遠藤紗也佳さんは、ミシンを使う不慣れな状況でもチームの協力があったため夜遅くまでの作業もやり遂げることができたと充実感を感じたそうです。また、高橋櫻さんは、「当日は舞台美術や音楽チームの支えを感じ感動しました。参加した家族や観客の方にもあたたかい気持ちが伝わったのでは」と、当日の様子を振り返りました。

次々と登場する動物たちを受け入れる「てぶくろ」の村を表現したのは、暗い森の中でもほんのりと灯る明かりのようなテント。制作した4年の伊藤薫さんは、子どもたちが入っても崩れないようにドーム型テントの強度を確保することに気を配ったと言い、鈴木紗綾さん、高野拓也さんは「初めて会う人と一緒にものづくりをする事は新鮮で、それぞれの表現の違いによって化学反応がおきた」「子どもたちが楽しい時間を過ごせたようで嬉しかった」と感想を述べました。金束玉さんはワークショップを通して親子との交流を楽しんだことと、1年生も裏方として力を尽くしてくれたことを伝えました。「今年はより創作性が高い即興の表現活動だったので、子どもと学生、クリエイターの世界観を合わせることで化学反応が起こることを狙い、事前に会議を重ねました」と語るのは、主に舞台美術の指導を担当した原高史准教授。南相馬市の家族を迎えるにあたり、限られた時間、即興の緊張感の中で、子どもと一緒になって実験を楽しむチーム作りを実践し、最高の舞台を創り上げました。

(左から)「このような想像の世界を広げた活動を、ひとつの支援の結果として観ることができ感謝の気持ちでいっぱいです」と語る佐藤氏、プロデューサーの後藤教授、営業本部長の西村氏と早川氏、近藤氏。

今回の「キッズ・アート・キャンプ」のような、想像力と創造力を育むワークショップ型プログラムを次代の東北・日本を担う被災地のこどもたちに長期にわたって提供しサポートするために、「こども芸術の家プロジェクト」が始動しています。この事業には株式会社三越伊勢丹が活動支援をしていて、三越伊勢丹が主催する新鋭アーティスト作品チャリティ・アート・オークション「KISS THE HART #1」では、売り上げの全額を「こども芸術の家プロジェクト」に寄付。アートによる子どもたちの支援事業に充てられました。「キッズ・アート・キャンプ山形2012」には三越伊勢丹の役員の方々が視察に訪れ、ワークショップと本番の舞台を見学。公演後、営業本部長の西村氏は「ブラボー!」と声を上げ「私たちが構想する"Living with Arts"の姿がここにあるじゃないか、と。未来をアートと一緒に創っていくことができると確信しました」と感激の言葉を述べました。早川氏は「正直言ってびっくりしました。中山ダイスケ教授が"一瞬、復興支援だということを忘れてました"とおっしゃいましたが、私たちも"そうだった、これは復興プログラムだった"と思うぐらいに非常に素晴らしかった」と、学生とアーティスト、子どもたちがひとつになって表現した舞台の完成度に驚きと感動の表情を見せました。

プロジェクトのプロデューサーを担当する京都造形芸術大学の後藤教授は「こども芸術の家プロジェクト」を三越伊勢丹が支援することについて、「大きな災害があり、最悪を最善に換える転換期を迎え、企業も大きく変わりました。未来をつくっていくのは想像力。デザインは"ソリューション"でアートは"問い"です。問い続ける切り口として大企業がアートを選ぶ時代がきたということです。本気でやり続けることが一番大事ですね」と語りました。三越伊勢丹は来年、「KISS THE HART #2」を企画。そこでは、より大きなアート支援、震災支援をするために「キッズ・アート・キャンプ山形2012」の成果を伝え、一人でも多くの賛同を得るためにメッセージを発信していく予定です。

「こども芸術の家プロジェクト KISS THE HART #1」http://kisstheheart.jp/

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