g*g Vol.25 SUMMER 2013
2011年8月、栃木県真岡市は「訪れた人が、また来たい、住んでみたいと思う、選ばれる町にしたい!」という現市長の強い想いから、〈studio-L〉の協力のもと観光を手段に町を元気にしていく取り組みを開始。2014年春、開設するコミュニティデザイン学科の学科長に就任予定の山崎亮氏が代表を務める〈studio-L〉は、地域住民が自分たちの力で課題を解決する計画の策定をサポートしています。
これまでに始動したプロジェクトは、市民や行政職員が中心となり真岡市の魅力を発見していく「魅力発見隊」の結成。真岡市で出会い、つながることができる人々や伝統を住む人の目線で実体験するモニターツアー「てまひまツアー」など。住民一人ひとりが真岡について考え、愛し、真岡そのものになろうというコンセプトで作成した「マイネーム イズ モオカ」というキャッチコピーとロゴは、名刺やTシャツ、記者発表用のバックボードなどに使用し、住民の意識を高めています。真岡市産業環境部商工観光課観光係、係長の長谷川佳孝氏は「これまでは市民のアイデアを取り上げる機会がなかなかありませんでした。現在では、市民発信のプログラムで、観光地ではない真岡市の等身大の魅力を発掘し発信できるようになってきました。今後はこの動きを地域の方々にきちんと伝え、地域の若い担い手づくりをしてもっと多くの方に関わっていただけるようにしたいですね」と、活動に手応えと期待感をにじませました。
2013年6月10日に開催した「真岡市観光ネットワーク中間報告会」では、これまでの活動報告と、新たに動き出したモニターツアー「モーカの休日」や、市民全体が観光客を案内して市の魅力を発信するボランティア「観光コンシェルジュ」の取り組みを市民の方々に紹介。モニターツアー参加者の意見や魅力発見隊メンバーが感じたことなどを発表し、情報を共有しました。
また、「未来をつくる!真岡の観光まちづくり」と題して、じゃらんリサーチセンター研究員の三田愛氏と山崎亮氏のトークも開催。三田氏は、一人旅が増えていること、旅行者の3割が初回訪問であとの7割はリピーターであること、リピーターを獲得するためにかかるコストは初回訪問者の6分の1であることなど、最新の調査データを元に動向を伝えました。さらに、三田氏が行った熊本県黒川温泉のプロジェクトを例に上げ、"らしさ"を考え抜き、まずは形にすることや、都市の人を仲間にして共にまちづくりを行う重要性を述べました。山崎氏は、江戸時代の物見遊山から始まった観光が産業化され、観光の主体が団体から個人へと変容している流れの中で、"観光から関係へ"という、新しい視点で観光を捉える必要があることを語りました。
その後は、参加者がテーブルごとに7、8人のグループとなり、"あなたができる真岡の観光まちづくりって何?"というテーマでワークショップを実施。それぞれが付箋に書いたアイデアを、難易度を縦軸に、1人ですることか、10人、100人ですることかを横軸にしたグラフに貼付けて、意見の視覚化、共有をしていくもの。参加者は、農家にUターンで戻ってきたビジネスマンや、ママサークルに所属する女性、市役所の職員や、楽しそうだから来てみたという方まで様々。ファシリテーターとなったスタッフは、各人各様の意見を上手に引き出し、まとめ、和ごやかな雰囲気を作りながら、人と人との結びつきが深まっていきます。〈studio-L〉がサポートしてきたコミュニティデザインの力が、市民の手に委ねられ着実に育っていることが感じられるワークショップとなりました。
最後に、真岡市観光ネットワーク協議会会長の陣内雄次氏は「ないものねだりではなく、"あるもの活かし"が観光まちづくりの重要なコンセプトです。そして何より大事なのは皆さんがそれを楽しむこと。私は、小学生や中学生、高校生がまちづくりに参加してもいいと思っています。大人がつまらなそうな顔をしていたら子どももつまらないですよね。楽しみながら子どもたちが参加できるような活動をしていきましょう」とコメント。真岡市が向かう、新しい観光の方向性を確認しました。