g*g Vol.25 SUMMER 2013
こんにゃくや豆腐、納豆などの日常的な食品の製造を行う、山形県長井市の株式会社平野屋さんより、「現在の設備で生産可能な新しい玉こんにゃく商品を企画してほしい」と依頼を受けた田中範男教授と企画構想学科の3年生10名。その中間プレゼンテーションが、6月26日に本社にて行われました。当日までの約2ヶ月間、学生たちは観光地などをまわりながら毎週のように玉こんにゃくを試食。同時に現代人の食生活やこんにゃく市場の現状を調査するなど、アイデア出しに必要な作業の数々に取り組みました。そして集まったアイデアは実に100案以上。「1人につき10案というのが課題だったので、他の皆とかぶらないような案を考えるのに苦労しました」と企画構想学科3年の高梨恭輔さん。その後、話し合いを繰り返し、最終的に絞られた5つの案を平野屋へ提案することになりました。
社長や専務など、平野屋の方々が着席したところでプレゼンテーションがスタート。はじめに田中教授より、実現性や話題性、平野屋さんらしさといった部分に重点を置いてアイデアを考案した事などの経緯を発表。続いて企画構想学科3年の中津元人さんと同学科3年の岡本明純さんが、学生を代表して、パワーポイントでまとめた映像を使いながら、今回の企画内容について説明をしました。中津さんは、家庭外で調理された食品を購入し家庭内で食べる「中食」商品が売れている現状や、市場調査の結果や他社の製品状況、玉こんにゃくの起源などについての調査結果を報告。それを踏まえ、今こそ新たな商品をつくるチャンスであることを訴えました。次に、学生が考案した5つの案について、岡本さんがターゲット層や販売方法、パッケージ、PR方法なども含めて1案ずつ丁寧に説明。伝統を活かしたものからこれまでにない斬新な味わいのものまで幅広い案が揃い、平野屋の方々もとても興味深そうに学生の提案に耳を傾けました。発表が終わると、「発想やネーミングが面白い」「頭の中で想像してとてもワクワクした気持ちになっている」「今すぐにでも試してみたい」といった声が次々に上がり、また意見交換も行われ、大変活気のある場となりました。
「今まで、新商品をつくりたいという思いはあっても、いわゆる昔ながらの"玉こん"というところからなかなか抜け出せずにいました。社内で話していても、かかる手間にばかり目が行き、できない理由を探してしまっていたような気がします」と平野屋の平浩一郎専務。しかし今回、学生から従来の商品にこだわらない様々な案が出たことで、製法の見直しなどを含め、もう一度ものづくりやブランディングについて考えてみようと思うことができたといいます。プレゼンテーション後、「緊張してしまった」と話す中津さんに「全然緊張しているように見えなかったよ」と声をかけた田中教授。一切原稿を見ずに堂々と提案を行った中津さんと岡本さん、そして、この2ヶ月間で5つの企画案をまとめた学生たちに、平野屋の方々も「期待以上」ととても感心した様子でした。
今回、企画のテーマとなった玉こんにゃくは山形の特産品でもあったため、「新商品にも"山形らしさ"を残さなければいけないのが一番難しかった」と振り返る企画構想学科3年の山崎由奈さん。「大切にしたのは、玉こんにゃくや平野屋の歴史を知り、そして山形らしさを出すこと。アイデアというのはただの思いつきでは全く説得力がないので、学生たちには情報収集からきちんとやっていこうと伝えました」と田中教授は話します。普段、スーパーやコンビニエンスストアなどで何気なく手に取っている商品にも、実はネーミングやパッケージ、大きさ、味など、あらゆるところに企画の力は加わっているもの。市場調査にもしっかりと時間を割き、これまでにない提案につながる様に、とにかくアイデアを沢山出し合ったことで、平野屋さんに新しい風を吹き込むきっかけを作れた様子。今回のようなプロジェクトを通して、田中教授が学生たちに実感してほしいのは、企画の楽しさやアイデアを出す楽しさ。「自分が楽しいと思ったことは、きっと相手も楽しいはず。世の中には企画という仕事、立ち位置があるということを皆に知ってほしいですね」。平野屋さんとの新商品開発プロジェクトは今後も続いていく予定です。