入試課ブログ

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2011-04-21

Operation Arigato!!

今日は長文です。

こんにちは、入試課ブログです。

先日、震災に関連してこんなニュースがテレビや新聞で流れました。

仙台の海岸にARIGATO、読んだ米軍感激[Yahoo!ニュース]
〈世界から被災地へ〉ARIGATOに感動 「トモダチ作戦」参加の米大佐[朝日新聞]
【地震】仙台空港復旧作業に携わった米大佐が会見[テレビ朝日]

仙台空港の復旧作業を手がけた米軍に向けて、
空港近くの浜辺に木を並べて「ARIGATO」のメッセージが書かれてあり、
米軍の皆さんがいたく感動された話。

で、ここからは、なかのひとが本学の卒業生とやりとりをして、いただいたメールを紹介します。
「新入生に向けてお願いします!」と依頼したので、
新入生向けへのメッセージになっていますが、
もちろん在学生の方も、教職員のみなさんも、
芸工大に限らない芸術を、美術を、デザインをいま学ぼうとしているみなさんに
ぜひ読んでいただければと思い、今日の記事で紹介します。

————————————————-
この度、晴れて東北芸術工科大学にご入学される新入生の皆様。
芸工大映像コース(現:映像学科)卒業生、チコと申します。

この度の東日本大震災で、私の地元、宮城県名取市も大きな被害を被りました。
幸い家族は無事で、実家も海から離れていたため津波の被害に遭うことはありませんでしたが、
幼い頃から家族と出かけ、また日頃から良く遊びに行っていた
仙台空港、閖上漁港といった沿岸地域は津波によって壊滅しました。

震災当時東京にいた私は、慌てて名取へ舞い戻り、
15日に仙台空港周辺の様子を見に行った時は
「どう考えても復旧は絶望的だ」と、涙にくれました。
ありがとう作戦.001

 


ところがその空港を、あっという間に復旧してくれた人たちがいました。
「トモダチ作戦」として行動した、在日米軍の皆様です。

「どうにかして米軍の皆様にお礼がしたい!!」と思った私は、
4月1日に仙台空港まで行き、米軍に協力者を得て英訳していただいたお礼のお手紙と、
震災前の美しかった名取沿岸部の写真をまとめたフォトブックを渡してきました。

彼らはとても温かく迎えてくれて、お礼を言いに行った筈なのに、
むしろ余計に感謝の気持ちを一杯もらってきちゃいました(笑)

彼らのおかげで、「ありがとう」という気持ちを伝えるのに、
国や言語の違いなんて関係ないということを学べました。

本当はそのまままっすぐ家に帰るつもりだったのですが、
ふと思い立って仙台空港近くの砂浜に向かい、そこらじゅうに散らばっている木片を使って、
空から見えるようにでっかく「ARIGATO」と書いてきました。
ありがとう作戦02.001 そしてそのことを3日にmixiに日記として掲載したのです。

詳しい経緯はこちらです。

http://ypsilon.exblog.jp/12431869/

公開当初は、コレと言って注目されることのないありふれた個人の日記だったのですが、
この「ARIGATO」に空から気づいた米空軍の大佐が、
8日に横田基地司令部ニュースとして発表。

COMMENTARY – “Thank You” is not necessary; U.S. forces honored to help reopen Sendai[U.S.AIR FORCE YOKOTA BASE]

さらに電話での記者会見に応じた際にこの件に触れて
「非常に感激した」というコメントが、上空から撮影した写真 と共に、16日にメディアに掲載された瞬間、

「まて!!これを作ったやつはmixiにいるぞ!!」

と大騒ぎになり、当該日記のリンクも転載もフリーにして いたことから、
口コミで爆発的に広まり、大変な反響を呼ぶことになりました。

16日だけで足あと(アクセス数)が12万を超え、
これを書いている現時点では30万、
関連日記のコメント欄はほぼ全て上限を突破し、
さらに直接 頂いたメッセージは1千件を超えております。

おまけにツイッターのアカウントを持っている在日アメリカ大使館、
在日米海軍司令部などにも正式にフォローされました。

この件を改めて振り返ってみると、制作当初は意図はしていなかったものの、
結果的には空の上に「ありがとう」という自分の気持ちを伝え、
またそれがネットの口コミという形でこれだけ広く皆様に伝わった立派な「作品」になったと思うのです。
ありがとう作戦03.001
私は映像コースの卒業生ではありますが、
「想いをカタチにし、それを見た人に伝える」という意味では、
映像にしろ砂浜の文字にしろ、mixiのテキストにしろ、同じだと思います。

率直に言って私は、学生時代の作品はパッとすることなく、
名のあるコンテストで実績を上げたわけでもない、無名の卒業生であります。

映像コース (現:映像学科)のアーカイブには過去作品が残っているかと思いますが、
恥ずかしくて死んでしまうような出来なので、絶対に見ないでください(笑)

そんな無名の私ですが、沢山の偶然に助けられた面は大きいにしろ、
砂浜に描いた「作品」に込めた想いを
これだけ多くの皆様にお伝えすることができるという幸せにめぐり合うことができました。

「レミーのおいしいレストラン」の主人公、ネズミのレミーは

「誰にでも料理はできる」
「独創的に、失敗を恐れず、何にでも挑みなさい。
 どこで生まれ育とうが、他人に限界を決めさせてはいけない。
 あきらめなければ何でもできるのです。
 でも、偉大な料理は勇気から生まれる」

という言葉を信じて、ネズミであっても立派なシェフとなりました。

同じように、誰にでも、どんな形でも、ほんのちょっとの勇気を持って、
純粋な想いを込めて伝えようとしたものは作品になりうる。

それは人の心に届くのだと、今回私自身が大いに学ぶことができました。

「面白い作品を作りたい」「人を感動させる作品が作りたい」と、
そのために技術や手法を考えるばかりで、
肝心な「どんな想いを伝えたいか」という原点の部分を、
どこかおざなりにしていた学生時代の自分を叱りつけたい気分でいます。

これから芸工大に入学される新入生の皆様は、
現実に被害に遭われた被災地から入学された方や、
遠くの出身地から被災地である東北に入学された方など、
これまでにない様々な不安を抱えての入学だと思います。

ですが、今から50年前に人類初の宇宙飛行を成し遂げたガガーリンはこんな言葉を残しています。

「人間にとって、最大の幸福とは何かって?それは、新しい発展に参加することだよ」

確かに今回の震災で、多くのものが失われ、多くの悲しみと苦しみが生まれました。 しかし、一たび「これから」に目を向けた時、広がるのは新しい発展、新しい可能性、新しい未来です。

皆様は芸術という限りない普遍性を持った手段で、
これからの新しい発展の一翼を担うことができると、私は信じています。 芸工大は、どの学科も、あらゆる専門機材が使い放題であり、
同じ志を持った学生のみならず、現役で活躍されている教授陣の皆様と直接触れ合い、
大いに刺激を受けられる非常に恵まれた環境であります。

きっと私の「ARIGATO」が忘れ去られるほど大きなものを作り上げてくれると、心から思っています。

また本文を読んでいただけるとわかると思うのですが、
「芸工大卒業生」というプライド、
芸工大で培った「芸工魂」があったからこそ、完成までに至れたのは間違いないです。

どうか大いに「芸工魂」を養い、作品制作に励んでいただければと願います。

最後にはなりますが、無名の存在でありながら、
このような機会を与えてくださった入試課様に、心から感謝と敬意を表して。
本当にありがとうございました。

2011年4月20日
東北芸術工科大学卒業生、チコ
——————————————-

チコさん、こちらこそいろいろとご快諾いただいて
本当にありがとうございました。

少しだけチコさんが書かれた制作の本文から引用させていただきます。
——————————————
痛くて痛くてたまらなかった。
「G」まで書いたあたりで、もうやめようと何度も思いました。
単純に資材がクソ重いからでも、切れた手が痛いからでも、死ぬほど喉が渇いてたからでもなく…。

手にしたカケラの一個一個が、誰かの家で、
誰かの幸せで、誰かの思い出がいっぱい詰まっているものだったから。

オイラのよく知っている、あの美しい景色を形づくっていたものだったから。

そりゃあ、震災前にもこの砂浜には流木やゴミは打ち上げられていました。
だけど、家の資材や、車の部品や、船の残骸、
ましてや非常持ち出し袋やハンドバックや、家族の写真や、
何かのトロフィーがそこら中に散らばってるなんてありえなかった。

正直言って、体力的にもきつかったけど、それ以上に気持ちが折れそうでした。

けど、ここで辞めてたまるかと思った。

元自衛官舐めんなよ!!なにより、これでも美大生だったんだ!!
この手のでっかい「ものづくり」はお手のもんじゃないか!!って、頑張って気持ちを奮い立たせた。

最後の方は、

うわああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!
ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!
負けてたまるかあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!

って、ひたすら絶叫しながら、溜まり場から使えそうなものを選んで、
下書きした場所に運んで並べて…って作業を続けてました。

————————————-

3.11以来、東北は、日本は3.11以前とは全く違う世界になりました。

その中で、24日に入学式を迎えるみなさんは、
多くの期待とともに、不安を抱えての入学になることだと思います。

「へ~芸工大なの~絵描くんだ~」

おそらくあちらこちらで言われることだと思います。

でも、誤解を恐れずに言えば、芸工大で学ぶこと、
芸工大に限らず、芸大や美大で学ぶことは、絵や文の技術ではありません。

芸大や美大で学ぶことは、生きていく力だし、人を幸せにする力だし、
社会を世界を幸せにしていく力だと思います。

東北芸術工科大学の新入生のみなさん、
そして日本中で4月からアートやデザインを学ぶみなさん、
芸術や美術を学ぶことはそういうことだと思います。

それを伝えたくて、チコさんにお願いして紹介させていただきました。

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