10年目の灯籠絵が揃いました

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5月中旬に行った取材合宿から1ヶ月半、今夏の温泉街を照らす灯籠絵が揃いました。
「ひじおりの灯」が10年続くなかで、「また今年も」と、継続してプロジェクトに関わってくださる卒業生の皆さん。今年の描き手16名のうち、13名は過去にも灯籠絵を描いたことがあるメンバーです。取材合宿で得たことはもちろんですが、参加を重ねるなかでそれぞれの中に「ひじおりの灯」として描きたいものが具体的に宿り、それらが結晶された印象です。大学院生や版画コース1年生の作品もまた、新しい目で肘折という土地を私たちに教えてくれます。10年目の夏を飾るにふさわしい、力作が揃いました。

平面のままでも素敵な作品ばかりですが、「ひじおりの灯」はあの木枠に貼られてこそ。夕刻にあかりが灯されることで、それぞれの物語が匂い立つように感じます。建築・環境デザイン学科の竹内先生が設計した八角形の木枠は、ぐるりと360℃見渡せる構造。これから、庄内町にある建具屋の柿崎さん、表具師の齋藤高子さんの手に渡り、”灯籠絵”へと仕立てられます。

先月の中間講評の際に、地区の皆さんが「私たちも時を同じくしてドキドキしている」とおっしゃっていたように、完成された作品を見るのは、描き手も地区の皆さんも同じ時期。今夏は、8月6日(土)から。霊峰月山の麓に位置する肘折らしく、8月11日(木・祝「山の日」!)には描き手を務めた作家たちが一同に集うアーティストトーク「肘折絵語り・夜語り」も開催します。

10年目の夕暮れ、温泉街に灯籠絵が灯されたとき、そこでどんな語らいがあるのでしょうか。「ひじおりの灯」の10年をしみじみと、ぜひ過去に灯籠絵を描いた皆さんも一緒に、温泉街で再会したい。会期中の週末には、おなじみ「BAR肘折黒」も登場予定です。あと半月、夏の予定を立てながら点灯を心待ちにしたいと思います。

(美術館大学センター 鈴木淑子)

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肘折温泉×東北芸術工科大学
第10回灯籠絵展示会「ひじおりの灯2016」
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会期:2016年8月6日[土]→8月28日[日]18:00~20:30(会期中無休)
会場:山形県最上郡大蔵村肘折温泉(温泉街、旧肘折郵便局舎、つたや金兵衛湯治部屋)

新作出品=浅野友理子、石原葉、金子富之、辛遊理、後藤拓朗、佐々木優衣、佐藤真衣、鳥潟由子、羽賀文佳、原田圭、久松知子、藤原美咲、古田和子、松澤幸治、山口裕子、美術科版画コース

●ARTIST TALK 「肘折絵語り・夜語り」
2016年8月11日[木・祝「山の日」]19:30~21:00
肘折温泉街(集合:旧肘折郵便局舎前)/灯籠出品者×宮本武典

http://www.tuad.ac.jp/2016/06/58620/

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真夜中の廃校にて

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「ひじおりの灯2016」の点灯まで、あと1ヶ月余り。灯籠絵の制作も山場を迎えています。
プロジェクトが年月を重ねるなかで、過去に灯籠絵を描いたメンバーがもう一度灯籠絵の描き手として参加してくれることが増え、再会と「今年はどんな絵を描いてくれるのだろう」という期待感が高まる10年目。先週末、そんな卒業生メンバーが多く集う共同アトリエ「公房 森の月かげ」におじゃましました。

通称「月かげ」は、2年前に廃校となった旧宮生小学校(上山市)を利活用し、昨年春アトリエとして生まれ変わった場所です。運営するのは、「ひじおりの灯」でもおなじみ日本画コースの教授で日本画家の三瀬夏之介先生をはじめ、山口裕子さん、浅野友理子さん、佐々木優衣さんといった芸工大の卒業生たち。同じくアトリエを構える大学院生の久松知子さんも今年はじめて「ひじおりの灯」の灯籠絵を描きます。

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昇降口を抜け、下駄箱で靴を履き替える懐かしい動作にドキドキしながら階段を昇ると、かつて子どもたちの声がにぎやかに響いていた一つ一つの教室に、それぞれの制作の場がありました。大型の作品に、キャンバスや画具、制作のための写真や資料、ドローイングなどが並ぶなかに、灯籠絵を描く月山和紙が。5月中旬の取材合宿に加えて、自主取材を行うメンバーも。先月の中間報告会ではまだ下絵の状態だった絵も、一筆一筆、和紙に筆が落とされ、それぞれ描きたいイメージが形になってきていました。

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作画メンバーに配られる和紙は本番用の1枚のみ。普段から和紙に描いている方でも、最初の一筆は緊張するといいます。傍らにライトを用意して裏から光をあてながら、灯りの通り具合を確認します。中にはダンボールを使って灯籠の木枠を自作し、具体的にイメージする方も!描きたい歴史ひとつをとっても、和紙のなかで光をどう扱うかによって、その歴史のどこに光をあてたいかが変わる奥深さがあります。

今年はどんな灯籠絵が揃うのだろうと取材に夢中になりふと外を見ると、窓の外には肘折にも似た真っ暗闇が。目をこらせばジロリ、動物たちの気配も現れそうな真夜中の廃校で灯籠絵制作の追い込みは続きます。

(美術館大学センター 鈴木淑子)

中間講評、物語のに下絵にどっぷり浸かる

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先月末の「ひじおりの灯」取材合宿から約半月。東北芸術工科大学の大学院生や卒業生を中心とする灯籠絵の描き手たち、美術科の先生方、また肘折地区から旅館や商店の若旦那の皆さんにもお越しいただき、制作中の灯籠絵を持ち寄って中間報告会を行いました。

取材合宿では、温泉街や周辺の山々を歩いてのスケッチや地元の方への聞き書きを通じ、各々の視点から“肘折”という土地を捉えた制作者の皆さん。それぞれ制作を進めてきましたが、本番用の〈月山和紙〉に筆を入れることができた方はまだ少数派。原寸大の下絵やドローイングなどを持ち寄った方も多く、完成されていないがゆえの混沌として濃密な表現が教室じゅうにに立ち込めます。 制作者の脳内をめくるように持ち寄った下絵を机に並べながら、現時点での制作状況や作品のイメージをみんなで共有しました。
今はまだ平面作品ですが、八角の木枠に貼られることでまた違った表情を私たちに見せてくれる灯籠絵。「あかりが灯ったらどんなふうに見えるだろう?」といった技法的なことはもちろん、「ここに描かれた歴史は実は・・・」など地区の皆さんから地元目線のコメントをいただき、肘折の土地に蓄積されてきた記憶や物語を少しずつ呼び起こしながら、作品としての表現を深めていきます。

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こうして作画者と地区の皆さんとの間で丁寧なコミュニケーションを重ねることで描かれていく「ひじおりの灯」。「灯籠絵が飾られるたびに見慣れた土地をまたひとつ生き生きとした目で見ることができる」と地区の方がおっしゃっていたように、灯籠絵が温泉街で灯されたとき、そこに描かれた情景は制作者の表現としてだけの枠を越え、肘折に暮らす皆さん自身の物語としても息づき始めるように思います。肘折の皆さんは灯籠絵の「受け手」であり、「語り部」でもある。今年の新作灯籠は16作品。その灯籠絵を介して、制作者、地区の皆さん、またお客さんの間でどんなことが語られるのかとても楽しみです。

ちょうど梅雨入りした山形。自身の表現と地域の中で描くということ、その狭間で接近し離れ様々なチャレンジを重ねながら、だんだんと夏が近づいていきます。
灯籠絵の締め切りは7月初旬!物語が匂い立つまでまだもう少し、それぞれアトリエで灯籠絵と向き合う日々が続きそうです。

(美術館大学センター 鈴木淑子)

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地区の皆さんと作画メンバー、「点灯まであと2ヶ月!10年目もあかりを灯して待ってます!」の図。
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こちらと合わせてお楽しみください。

「ひじおりの灯2016」公式ビジュアルをリリースしました

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Artwork: Nozomi Tanaka / Photo:Yasushi Kobayashi + Art Direction & Design: Satoshi  Suzuki(FLOT)


8/6[土]より肘折温泉で点灯する「ひじおりの灯2016」の開催にあたり、今夏のメインビジュアルを公開しました。
今回のメインビジュアルには、丁寧なフィールドワークや研究を重ね、その土地の民俗や体験から着想した作品を制作する本学大学院博士課程在学中の画家・田中望さんが描いた「たまふゆ」(2014年)、「こけしのゆめ」(2015)の2つの灯籠絵が登場。〈これからの10年〉に向かって灯籠を担いで歩く肘折の子どもたちとともに、田中さんが描いた表情豊かなうさぎたちや肘折こけしが灯籠絵から飛び出し、肘折に湧き出る温泉のようにじんわりあたたかく、生命感あふれるリズミカルなポスターとなっています。

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肘折温泉×東北芸術工科大学
第10回灯籠絵展示会「ひじおりの灯2016」
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大蔵村肘折温泉――古くから人々の傷や疲れを癒してきた湯が脈々と湧き出るこの土地に、10回目の「ひじおりの灯」が灯ります。肘折温泉開湯1200年の 夏からはじまった灯籠絵の展示会「ひじおりの灯」では、毎年雪解けの季節に東北芸術工科大学の学生・卒業生たちが温泉街で滞在制作を行い、肘折の暮らしや 自然、歴史などの物語を八角の灯籠に仕立て、夏の夜の温泉街で点灯しています。これまで200名以上の学生・卒業生が参加。描かれてきた255の情景は大 蔵村の夏をうたう風物詩として、宵闇の温泉街を照らしてきました。
10年目となる今年も、旅館や商店、湯治部屋や旧郵便局舎を会場に、大学院生や卒業生有志ら若手作家16名が描いた新作を含む美しい灯籠絵44景を点灯します。湯治場と絵画のコラボレーション、“仙境霊湯”の絵物語をぐるりと回してお楽しみください。


会期:201686日[土]→828日[日]
点灯:18:00~20:30
(会期中無休)
会場:山形県最上郡大蔵村肘折温泉(温泉街、旧肘折郵便局舎、つたや金兵衛湯治部屋)

新作出品=浅野友理子、石原葉、金子富之、辛遊理、後藤拓朗、佐々木優衣、佐藤真衣、鳥潟由子、羽賀文佳、原田圭、久松知子、藤原美咲、古田和子、松澤幸治、山口裕子、美術科版画コース

●ARTIST TALK 「肘折絵語り・夜語り」
2016年8月11日[木・祝「山の日」]19:30~21:00
肘折温泉街(集合:旧肘折郵便局舎前)/灯籠出品者×宮本武典(キュレーター)
「ひじおりの灯」の灯籠を描いた若手作家たちが会場に集い、それぞれが描いた思いを語る夜のリレートーク。今年は「山の日」に開催します。[申込不要]

主催=肘折地区、東北芸術工科大学/共催=大蔵村/企画=東北芸術工科大学地域連携推進室、ひじおりの灯実行委員会
灯ろう制作= 竹内昌義(設計)、柿崎建具店(組子)、斎藤高子(表装)、下山普行(金物)、三浦一之(紙漉き)、TIMBER COURT(什器)
制作サポート= 鈴木淑子、佐々木翼

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●肘折温泉までのアクセス
バス:JR新庄駅より「肘折温泉行き」で約50分。
お車:新庄市から国道47号、国道458号で約40分。山形市から国道13号、県道31号、国道30号、国道458号で約100分。
●宿泊のご案内
肘折温泉に宿泊希望の方は、「肘折温泉郷」Webサイト(http://hijiori.jp/)をご利用ください。
●お問い合わせ
ひじおりの灯実行委員会(早坂隆一) Tel=090-2076-5698 E-mail=hijiorinohi@hijiori.jp
肘折温泉観光案内所 Tel=0233-76-2211
●関連リンク
肘折温泉郷HP:http://hijiori.jp/
ひじおり旅の手帖:http://hijiori.jp/tabi/
※屋外で点灯する灯籠については、雨天・強風時には点灯しない場合がございます。
お出かけ前に当日の点灯情報をTwitter『ひじおりの灯』でご確認ください。twitter@hijiorinohi


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この秋は、「みちのおくの芸術祭
山形ビエンナーレ2016」でも再点灯します。
会期:2016年9月3日[土]→9年25日[日](9/5、9/12のみ休)
点灯:9:00~16:30
会場:山形市郷土館「文翔館」2階ギャラリー
http://biennale.tuad.ac.jp/

●ARTIST TALK 「肘折絵語り・夜語り」
2016年9月3日[土] 15:30~16:30/灯籠出品者×宮本武典

●お問い合わせ
東北芸術工科大学 山形ビエンナーレ事務局
〒990-9530 山形県山形市上桜田3-4-5
tel=023-627-2091(受付:月~金9:00~17:00 土・日・祝休み)
email=biennale@aga.tuad.ac.jp


(美術館大学センター 鈴木淑子)

10年目、初夏の取材合宿へ

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月山の麓で先年続く湯治場肘折温泉で、東北芸術工科大学と肘折地区が2007年から共同開催している灯籠プロジェクト「ひじおりの灯」。在学生や卒業生が描いた灯籠絵は毎夏張り替えられ、いにしえの湯治場の夏の夜をほのかに照らしています。

5月21日(土)から23日(月)まで、灯籠絵を描くための2泊3日の取材合宿へ!
今夏の灯籠絵を担当する大学院生と卒業生の皆さんともに少しずつ近くなる霊峰月山の姿に胸を躍らせながら、バスで北上。タイムワープできそうなトンネルを抜けた先、カルデラの底にある肘折の集落を歩けば、轟々と雪解けの音を立てて流れる銅山川、温泉街に脈々と湧き出る湯の音にだんだんと身体がチューニングされながら、その土地の感覚が呼び起こされていきます。

地区の皆さんに温泉街や地蔵倉、大蔵鉱山跡などを案内いただき肘折の暮らしや歴史に触れたあとは、各々自主取材。絵を描いている皆さんならではのスケッチ、地元の方への聞き書きを通じ、灯籠絵として描くストーリーを膨らませていきます。

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2日目の夜には、共同浴場上の湯の2Fにて「灯籠絵のプラン発表会」。各々が2日間の取材で捉えた「肘折」をどのように灯籠絵として表現していくか。 あかりを灯す側である地区の皆さんからもご意見を頂きながら、構想をさらに深めていきました。
2泊3日という短い時間ながら、暮らしの情景や歴史を単に持ち帰るだけでなく、土地や人々と丁寧に対話を重ねるスタイルで行う「ひじおりの灯」の取材はなかなか体力が要りますが、それぞれ表現者としての感覚を研ぎ澄ませながら、充実した取材となったようです。


また、取材合宿と平行して、現地で「ひじおりの灯2016」公式ビジュアルの撮影も行いました。メインビジュアルとして紹介する灯籠絵のアートワークは、「ひじおりの灯」でもおなじみ、画家の田中望さん。灯籠のあかりによって、プロジェクトのこれまでと〈これからの10年〉を照らし出すような、ささやかなあかりがじんわり灯るポスターになりそうです。

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肘折地区の皆さま、3日間本当にありがとうございました。
これより、各自のアトリエで制作を開始。地区の皆さんと大学が重ねてきた10年という月日を越え、「ひじおりの灯」はレジデンス的なアートプロジェクトでありながら、描いた灯籠絵を地区へ納め、そこに描かれた「肘折」を地区の皆さんと作者がともに物語るような協働意識のもとで灯るプロジェクトなのではないかと感じています。

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山形に戻り残雪の月山を眺めながら、この夏に灯される物語と〈これからの10年〉をぼんやりと思い浮かべながら点灯にむけた準備を。
10年目も、あかりを灯してお待ちしてます!

(美術館大学センター 鈴木淑子)

「ひじおりの灯2016」点灯のご案内

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撮影:瀬野広美(Flot)

この夏、「ひじおりの灯」は10年目を迎えます。

山形県大蔵村肘折地区と東北芸術工科大学が、肘折温泉開湯1200年を迎えた2007年の夏から共同で開催しているアートプロジェクト「ひじおりの灯」。霊峰月山の麓でいにしえの湯治文化を今に伝える肘折温泉では、毎夏、山形に縁ある若手画家に灯籠絵「ひじおりの灯」の作画を依頼し、これまで9年に渡り、夏の夜の温泉街で灯し続けてきました。

今夏は、肘折温泉街での点灯のほか、9月に開催される「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2016」へ地域プロジェクトとして参加し、夏と秋の2回点灯します。
10年目の夏を飾る灯籠絵の制作者には、本学の大学院生や過去の「ひじおりの灯」に参加した卒業生をはじめとする、新鋭の若手作家16名が揃いました。これより、肘折温泉で数日間の逗留制作を行い、それぞれが捉えた〈肘折の絵物語〉を月山和紙に描いていきます。

この夏、日が暮れた温泉街にはどんなあかりが灯るのでしょうか。10年目の夏も、ゆったりと湯にでも浸かるようお楽しみいただければ幸いです。皆さまのお越しを心よりお待ちしております!


肘折温泉×東北芸術工科大学
第10回灯籠絵展示会『ひじおりの灯2016/HIJIORI Light Project 2016』


夏期点灯 
会期|2016年8月6日[土]→8月28日[日] 18:00~20:30
会場|山形県最上郡大蔵村肘折温泉 (温泉街、旧肘折郵便局舎、湯治部屋ほか)

●灯籠鑑賞会「肘折絵語り・夜語り」
日時|8月11日[木・祝]  山の日
灯籠出品者×宮本武典 (キュレーター)

秋期点灯
会期|2016年9月3日[土]→9月25日[日]
会場|山形市郷土館「文翔館」
※「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2016」へ参加
http://biennale.tuad.ac.jp/


新作出品|
浅野友理子、石原葉、金子富之、辛遊理、後藤拓朗、佐々木優衣、佐藤真衣、鳥潟由子、羽賀文佳、原田圭、久松知子、藤原美咲、古田和子、松澤幸治、山口裕子、東北芸術工科大学美術科版画コース(16名/五十音順)

主催|肘折地区、東北芸術工科大学
後援|大蔵村
企画|ひじおりの灯実行委員会、美術館大学センター
協力|竹内昌義(設計)、柿崎建具店(組子)、斎藤高子(表装)、下山普行(金物)、三浦一之(紙漉き)、TIMBER COURT(什器制作)

お問い合わせ|
ひじおりの灯実行委員会 E-mail=hijiorinohi@hijiori.jp
東北芸術工科大学 美術館大学センター tel: 023-627-2091 fax: 023-627-2308

関連リンク|
肘折温泉郷HP:http://hijiori.jp/
ひじおり旅の手帖:http://hijiori.jp/tabi/
美術館大学センター「ひじおりの灯」Blog:http://blog.tuad.ac.jp/hijiori/
twitter:@hijiorinohi

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追伸:
冬の間のこと。肘折地区の皆さんに大学にお越しいただき、10年目の灯りのこと、そしてこれからの「ひじおりの灯」のことを話し合いました。
夏の点灯まで、あと3ヶ月。この夏も、どうぞよろしくお願いいたします。

(美術館大学センター事務局 鈴木淑子)

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「ひじおりの灯2015」ーわたしたちの活動記録

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改めまして、「ひじおりの灯 2015」、9月13日(日)夜を持って今夏の点灯を終えました。7月25日(土)からはじまった51日間のロングラン。今年はじめて設けたコアウィークを経て、8月3日(月)からの1ヶ月間は肘折地区の皆さんによる自主運営。山形から遠く肘折のことを、ワクワクしながら思っていました。点灯終了から1週間ほど経った今も、この夏の灯りを思い出すとあかりに照らされた頬が少しあたたかくなるような気がします。それはこの夏に灯された灯籠の物語を思い出しながら、肘折のこと、灯籠を見に来てくださった皆さんや地区の皆さんのことを思い出しているからかもしれません。
ご来場いただいた皆さま、灯籠制作者の皆さま、支えていただいた関係者の皆さま、本当にありがとうございます。地区の皆さまも、大変お疲れさまでした。

▽「ひじおりの灯2015」開幕!―絵語り・夜語り⇒http://blog.tuad.ac.jp/hijiori/?p=449
▽コアウィークを終えて⇒http://blog.tuad.ac.jp/hijiori/?p=470
▽『肘学』前半編 湯の上で話す、ロングライフなモノとコト⇒http://blog.tuad.ac.jp/hijiori/?p=556
▽『肘学』後半編 イメージのなかを旅するはなし⇒http://blog.tuad.ac.jp/hijiori/?p=587


思えば、今年の「ひじおりの灯」は春の打合せからはじまりました。残る雪がいよいよ溶け出し、周りの山々でブナの新芽があちこち顔を覗かせようとする季節に、地区の皆さんと考えたこの夏の灯りのこと。2007年の夏から8年という月日を経て少しずつ運営の主体を地区の皆さんに委ねていこうとする動きの中で、運営体制の見直しやコアウィーク・湯治部屋での点灯などはじめての試みをも行われました。
5月下旬に行った取材合宿。このプロジェクトが1年、1年と年月を重ねるなかで、かつて灯籠を描いた卒業生の皆さんがまたリピーターとして活動に参加してくれることはとても心強く、何度でも再会はうれしいものです。土地に、人に出会うたび、それまで見えていた肘折とは異なる姿に出会え、灯籠に描かれる物語も変化してくるという彼女らの絵を待ちながら、また肘折の新たな面に出会えるのではないかと胸が高鳴ったこと。また、大学院に進学したばかりの院生の皆さんが「参加します!」と声をかけてくれるたびに、彼女らは肘折でどんな出会いをし、どんな灯籠を描いてくれるのだろうと心踊ったことを覚えています。

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▽9年目の夏がはじまります!⇒http://blog.tuad.ac.jp/hijiori/?p=297
▽春の取材合宿へ⇒http://blog.tuad.ac.jp/hijiori/?p=316
▽アトリエと講評と、近づく夏⇒http://blog.tuad.ac.jp/hijiori/?p=383
▽今夏の灯籠絵が完成しました!⇒http://blog.tuad.ac.jp/hijiori/?p=410


今夏から肘折地区側の運営体制も少しずつ変化しはじめ、青年団長の早坂さんを中心に「ひじおりの灯実行委員会」が発足。点灯に向けた準備や学生たちの受け入れ、イベントの企画・運営など、地区としてもプロジェクトとしても〈これからの10年〉を受け継ぐ若手の皆さんが中心となって作られていきました。少しずつ変化しながら次の10年に向かうなかで、今までプロジェクトを担ってきた地区の先輩方が、父のようなまなざしで見守ってくれることはとても心強いことです。

ここ肘折では、この土地でずっと暮らしてきた人も、一度都市へ出て他の土地を見て戻ってきた人も、あるいは、余所の土地からこの土地や人に惹かれここで生きようと移ってきた人も、各々が、各々のまなざしを活かしともに暮らしを作っています。かゆいところに手が届く商店街のお店のように、「これだったらあの人だよね」とか、顔が浮かぶ。湯を分け合い、講や雪降ろしなど、生活していく上でともに在ることが必要だからこそ生まれる共同体。そんなコミュニティーもときには逃れられないもののように感じることもあるのかもしれませんが、そうしたつながりこそが肘折という湯治場の姿を色濃くしているように思います。

観光地に行くと、ある意味でそこで暮らす人びとの生活が抜け落ちているように感じることもありますが、ここ肘折は少し違うようです。一歩、裏の通りに入れば、湯の音とともになじみある生活の音が聞こえてくる。湯治客が行き交う表通りでは、宿の若いおかみさんが幼い子どもをあやしながら歩いていて、湯治にきたおばあちゃんが話しかけ、一緒にあやしている。昼間、湯治客で賑わう共同浴場も、夜には地区の皆さんが一日の疲れを流しにやってくる。「また明日」と別れて帰っていくのは旅館の玄関口で、ここも生活があることを知る。仕事の場と生活の場が背中合わせ、というよりも同じ場所にあり、その豊かな場を灯籠を描く学生たちにもいつもひらいてくださっています。

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▽村の祭り 湯坐神社の奉納角力⇒http://blog.tuad.ac.jp/hijiori/?p=545

何度も書いているような気がしますが、肘折に暮らす皆さんとそのコミュニティーはとてもしなやかだと感じます。雪どけのあと、萌え立つ土とともにみずみずしく生きる肘折の山菜のようだなといつも思うのです(が、褒め言葉として受けとっていただけるかは少し不安です)。周りの自然や環境はときに厳しいけれど、それゆえ生きるひとはやわらかい。そんな姿に惹かれ、憧れ、少しでも触れていたいと思って、わたしたちは何度もこの土地を訪れるのかもしれません。

「ひじおりの灯」、来年はいよいよ10周年。10年続けて来れたこと、本当にすごいことだと思います。記念すべきと銘打って大々的にやりたいような、いつもと変わらぬ姿で皆さんをお迎えしたいような、いろいろ想像はふくらみますが、肘折はこれから実りの秋を越え、すこし早めの冬支度。雪の壁に囲まれる冬のあいだも、10年目の春を心待ちにしながら地区の皆さんと作戦を練っていきたいと思います。

仙境霊湯、いくつもの山に囲まれたこの湯治場の夏に灯る物語。灯籠制作者の皆さん、見に来てくれるお客さん、そして何より地区の皆さんにとって、10年目の灯りはどんなふうに映るでしょうか。そして灯り終えたころ、それはどんな記憶としてこの土地に残され息づいていくのでしょうか。この言葉を言えるのは、とてもうれしいことですね。また来年お会いしましょう!

(美術館大学センター事務局 鈴木淑子)

P.S. 「ひじおりの灯2015」の象徴でもあるコアウィークの様子をお届けしながら締めくくります。また来年!↓ (撮影 瀬野広美,FLOT
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『肘学』 後半編 イメージのなかを旅するはなし

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写真で巡る、「ひじおりの灯 2015」 前回に引き続き、『肘学』の様子をお伝えします!

『肘学』第2部は、第1部にご登場いただいたd design travelの空閑理さん、山伏の坂本大三郎さんのお二人に加え、日本画家の三瀬夏之介さん、そしてこの「ひじおりの灯」を手がけるキュレーター宮本さんによる「アートと旅のはなし」。「絵語り・夜語り」の後ということもあり、会場となった肘折ホテルさんには灯籠鑑賞からそのまま参加された方も多く、アート好き、旅好きなたくさんの皆さんにお集まりいただきました。

まずは、旅館の皆さんにご用意いただいたおいしいご飯とお酒とともに、ゲスト4名それぞれが選んだ“アートと旅”にまつわる写真を見ながら、みんなで“旅”について考えます。

空閑さんは香月泰男の「シベリア・シリーズ」、大三郎さんはタマンネガラ国立公園で原始的な生活をする人びとの写真。三瀬さんが選んだのは、山形県村山地方に伝わる「ムカサリ絵馬」。宮本さんは、奥さんが臨月のときに描いたという荒井良二さんのライブペインティング作品。
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4名それぞれの話を聞きながら、”旅”にはいくつもの入り口があるのだと思いました。住む場所を離れ、どこかよその土地を訪ねるだけでない旅とは、どんなものなのでしょうか。

以前、大蔵村出身の舞踏家・森繁哉さんが肘折のおばあちゃんに聞き書きをしていたとき、その想像力の豊かさに驚かれたのだそうです。おばあちゃんたちの中には、肘折から出たことがない、あるいはそのほとんどの時間をこの土地を離れず生きてきた方もいるそうですが、イマジネーションに富んだ方がほんとうに多いのだそうです。おばあちゃんたちが持つそうした想像力は、昔から湯治客や修験者を受け入れてきた肘折の気質によって生まれているのか。あるいは…いくつもの山々に囲まれ、冬は積もる雪のなか。ひらけただけでない場所や時間が今も残る肘折だからこそ、その外側にある世界に対する想像力が育まれてきたのでしょうか。一つの場所に固定的に生きているけれど、想像の中ではずっと旅を続けている。旅とは、住む場所を離れ土地から土地を訪ねるだけでなく、イメージからイメージへと移動する、そんな姿も持ち得ているのかもしれません。

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『肘学』後半は、「絵語り・夜語り」の様子を振り返りながら、灯籠絵のなかに描かれた肘折へと旅します。春の取材合宿を経て制作される「ひじおりの灯」、毎年いくつもの肘折の表情を捉え見飽きることはありませんが、今年の灯籠もバラエティー豊か。様々な物語が描かれています。ゲストの皆さんには、それぞれ、今季点灯した灯籠絵のなかから印象に残った作品を挙げていただきました。

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1つの場面が描かれているけれど、昼と夜、あかりに灯されることで異なる時間が浮かび上がり、描かれた時間が移動していくもの。結婚や出産などを経て、絵のなかに描かれたひとりの人生や時間が、写真とは違うかたちで残され記録されていくもの。宿のおかみさんから聞いた幼少の頃の話など、ここに暮らす人びとのこれまで生きてきた時間やヒストリーを丁寧に聞き書きし描くことで、この土地の記憶に出会えるもの。あるいは、一見、肘折とは直接つながらないように見える絵が、偶然この場所に飾られることで、物語が動き出したもの。灯籠絵「ひじおりの灯」に描かれた物語や情景は、こうして夏の夜に灯されることで浮かびあがり、秋へと季節がゆくなかでじんわりとこの土地に記憶され、わたしたちに新たな風景を見せてくれます。

温泉街に飾られた灯籠を見ていると、ときどきそこに描かれた場面へと旅に出た気持ちになることがあります。川を越え、山を越え、はるばるこの地まで来たわたしたちはまた、「ひじおりの灯」の灯籠のなかへ旅立つことができる。夜の灯りのなか、イメージに誘われる。それも「ひじおりの灯」が持つの魅力のひとつだと思いました。

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さて、その日会ったばかりの人とも話がはずんでしまうのは、昔から人びとを受け入れ、身も心もほぐしてきた湯治場ゆえでしょうか。二度目の乾杯をしても、夜が更けても、なかなか話は尽きません。思い出すだけでもとても楽しい夏の夜でした。

湯治場は、お湯に浸かって身体を癒すだけでなく、地元の人と湯治客をつなぐ交流の場でもあったのだそうです。肘折の湯のなか、これからどんな会話が生まれていくのでしょうか。どうぞお楽しみに! 肘学Website⇒ http://hijiori.jp/hijigaku/index.html

(美術館大学センター 事務局 鈴木淑子/撮影 瀬野広美,Flot)

『肘学』 前半編 湯の上で話す、ロングライフなモノとコト

こんにちは。「ひじおりの灯」、お盆シーズンは帰省した皆さんが見に来てくださったり、16日からは「湯座神社祭礼」行われたりと、とてもにぎやかでした。そんなお盆も過ぎ、吹く風と足元から鳴る虫の音に秋の訪れを感じる肘折。
点灯も残すところあと3週間ということで、写真とともに、少しずつ今年の「ひじおりの灯」の様子を振り返ってみたいと思います。

まずは、点灯初日に同時開催された『肘学』イベントから!

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会場となった共同浴場上の湯2F。座布団とともに、湯の上で語らいました。/Photo: Hiromi Seno(Flot)

かつて湯治場は、お湯に浸かって身体を癒すだけでなく、地元の人と湯治客をつなぐ交流の場でもありました。この『肘学』は、〈湯治文化〉や〈伝統文化〉、また肘折温泉に関することなどをテーマに講師をお呼びし、地区の人も湯治客の人も一緒になって考える場を作ろうと、地元肘折青年団の皆さんが企画した場です。その第1部では、「d design travel」編集長の空閑理さん、そしてホスト役に山伏でイラストレーターの坂本大三郎さんをお迎えし、「山と温泉とロングライフデザイン」をテーマに、取材で出会った「山」と「温泉」にまつわる土地のロングライフなモノ・コトについてご紹介いただきました。

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編集長と山伏とクマ

現在、空閑さんが編集長を務めるトラベルガイド「d design travel」は、“ロングライフデザイン(長く愛されるデザイン)”をテーマに、47都道府県それぞれにある、「その土地が持つメッセージを伝えていること」「価格が手頃であること」「デザインの工夫があること」など、その土地に長く続く個性やらしさをデザイン的観点から選びだしてまとめた、旅の本です。
「感動しないものは取り上げない。本音で、自分の言葉で書く」「ロングライフデザインの視点で、長く続くものだけを取り上げる」「取り上げた場所や人とは、発刊後も継続的に交流を持つ」といったポリシーのもと、必ず自分たちの足で歩き、見て感動した場所だけを紹介されているそうです。昨年の秋には念願の「山形号」が発刊され、記事中ではひじおりの灯の様子もご紹介いただき、また、大三郎さんもその土地のキーマンとして登場しました。(何より、その表紙となったのが大三郎さんの灯籠絵「森」でした!)

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大三郎さんの灯籠絵「森」(2013)とd design travel YAMAGATA EXHIBITION(2014)

何を取材するかという具体的なイメージは決めず、まず土地に飛び込み、その土地に暮らす人に出会い、その土地を知ることからはじめる。「山形号」の取材でも、「明日、山伏が湯殿山に登る…」という知らせを受け、ついて行ったら、湯殿山での滝行に参加してしまったそうです!(しかも、その滝は撮影厳禁。内容は他言厳禁)

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空閑さんも参加した「ひじおりの灯 2014」のワークショップ「カミさまホトケさまを彫る」/Photo: kohei Shikama

空閑さんは「山形号」の取材中、とても「山形らしい」ことに出会ったといいます。その一つが、山伏文化が身近にあるということ。
山岳信仰が残る他の地域に比べ、山形で山伏文化が身近なのはどうしてなのか。大三郎さんは、その理由の一つとして、修験の場が残っていることが大きいのではないかとおっしゃいました。たしかに、山形に暮らしていると、「昨年行った修行で・・・」とか「今度修行に行く」とか、身近な人たちからそんな話を聞く機会があります。空閑さん自身も「山形号」の取材中に修行に誘われるなど、今まで取材された県ではなかったことに驚かれたそうです。
古くにあった文化としてそれを学びとるのではなく、今を生きる人が自分のこととして捉える山伏文化。それを身をもって現しているのが大三郎さんであり、そういった場所があるということは、貴重で山形らしいことなのだと改めて思いました。

温泉ついても、全市町村すべてにあるというのはとても珍しいそうです。山形県内、どの町に行っても温泉に入れる。どんなに安い宿に泊まっても、とりあえず、お風呂は温泉。実際、山形号の取材でユースホステルやゲストハウスに泊まった際も、しっかりと温泉に浸かり、一日の疲れを流すことが出来たとおっしゃっていました。

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一年のうち、約半年は取材に歩いているという空閑さん。今回もはるばる取材中の滋賀県からお越しいただきました!

「山」と「温泉」にまつわるロングライフなモノとコト。話は山形を飛び出し、富山と大分へ。

「山」つながりでご紹介いただいた「富山号」は、先のナガオカ編集長に代わり、空閑さんが編集長になった最初の号(!)だそうです。立山の山の中にある家具屋さん。黒部ダムへ向かうトロリーバス。断崖絶壁の展望台で食べるカレーとおいしいコーヒーの話。山伏と薬売り。立山の山稜に建つホテル。映画「春を背負って」。
立山連峰や黒部峡谷など、今も豊かで美しい自然が生きる富山県。富山は、そこに在る豊かな自然を、みんなのものとして美しく残していくことができる県だといいます。特に立山は古くから立山修験と呼ばれる山岳信仰が息づく山で、かの有名な富山の薬売りは立山修験の山伏とも深い関係があるのだそうです。山や温泉の文脈をたどると、つい出会ってしまう山伏の存在。ここ富山にも山伏たちの足跡がありました。

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空閑さんがはじめて出会った“山伏”が、大三郎さんだそうです

「温泉」つながりでは、大分県。古い伝説によると、肘折温泉は大同二年(807年)に豊後の国(今の大分)よりやってきた源翁により発見され開湯したと伝えられていて、ここ肘折の誕生ともつながりがある(?)土地です。

ワニ園やカバ園、ラムネのような炭酸泉に浸かれる湯など、大分には脈々と湧き出る温泉を利用したユニークな取り組みや場所があります。
大分の温泉、と聞いて想像するのは、温泉街から湯けむりが立ちのぼるあの風景。あれは「鉄輪温泉」という湯治場の風景なのだそうですが、そこにはその湯けむりを利用した面白い調理法があるそうです。その調理法とは、「地獄蒸し」。湯治宿にある地獄(=あつあつの源泉)から湧き出でるミネラルたっぷりの蒸気で食材を一気に蒸しあげると、いつもの食材がぐんと美味しくいただけるそうです。調理場には、「ほうれん草 2分」など蒸し時間の目安も表示されていると聞き、ますます心惹かれます。
湯治場にある魚屋さん、肉屋さん。散歩ついでに「こんにちは」と顔を出し、その日食べる食材を調達。温泉に入る前に食材を地獄釜にセットし、湯上りにできたてほやほやの食事を楽しむ。温泉から湧き出るエネルギーをポジティブに活用した、湯治場の栄養万点なご飯です。

少し話がずれますが、同じく湯治場である肘折にも、古くから自炊の文化がありました。持参した炊事道具を旅館の縁側に広げ、七輪や火鉢を使ってつくる食事。持ち込んだお米を炊き、温泉街の周辺で摘んだ山菜やきのこ、商店で買った食材を調理したほかほかのご飯は、たいそう美味しかったのだろうと思います。自炊をするものがあれば、「何をつくっているのですか?」とのぞき込むものもあり、湯治客同士の交流の場として多くのつながりを生んでいた縁側の自炊文化。

以前よりは少なくなったようですが今も湯治中に自炊をするお客さんはいて、中には自前の自炊セットを持ち込み、肘折の朝市で食料を買い込む方もいらっしゃるそうです。
山を越え遠く離れた土地に骨休めに来たのに、なんだか普段の顔が覗いてしまうような湯治場での自炊。湯に浸かるとともに、その土地のもので作った食事で、流れる季節のなかに身体をほぐしていく。そこから生まれる、よそ者同士のつながり。こうして湯治場肘折で育まれ長く愛されてきた自炊の文化は、ロングライフなモノコト、なのかもしれません。

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後半は、「自分のふるさとにあるロングライフデザイン」について。参加者の皆さんも交え、故郷に息づくロングライフなデザインのモノ・コトに思いを馳せます。「椎葉村の神楽」に「青森のりんご箱」、「瀬戸内海の島と島をつなぐ渡し舟」、「定規山の箒」、「温泉マーク」、「鎮守の森」・・・。故郷を離れて山形で暮らしているという方も多く参加していたこともあり、みなさんの幼少の頃の記憶をひも解きながら、その暮らしのそばにあったロングライフなデサインに出会うことができました。

そして、最後、山形生まれ山形育ちの男性に発表いただいたのが「芋煮」。芋煮の話になると、つい牛肉か豚肉か醤油か味噌か、なんて言い争いをしたくなりますが、ここで大三郎さんから突っ込みが入ります。なんと、芋煮はもともと魚(ボウダラ)を煮ていたという説があるのだそうです。牛肉、豚肉、醤油、味噌。なんて争いを気にも留めないようなボウダラ、魚、すごいです。奥深き、芋煮。

「地元のことなのに出てこない・・・」とじっくりと考えてから話しはじめる方が多かったのが印象的でしたが、今回のトークは、それぞれの故郷・土地のことを改めて考えるきっかけになったように思います。

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空閑さんや大三郎さん、そして『肘学』にご参加いただいた皆さんのお話を聞きながら、いくつもの土地を旅した気持ちに。そして、その土地で長く続いてきたロングライフデザインや風景に出会う旅に出掛けたくなると同時に、自分たちが暮らす土地をじっくりと耕しながら、すでに出会っていたもののロングライフな一面に気付いたり、そこにある暮らしの風景を愛でながら日々を過ごしていきたくなりました。

空閑さん、大三郎さん、ご参加いただいた皆さま、どうもありがとうございました。
「d design travel」は最新号の京都号まで、現在16冊が発刊されています。来る秋を、どうぞお好きな一冊を片手にお楽しみください(湯の上、湯治しながら読む「山形号」もオススメです♨︎)

(美術館大学センター事務局 鈴木淑子)

村の祭り 湯坐神社の奉納角力

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8月16日からはじまった「湯坐神社祭礼」。毎年8月20日には、湯坐神社の境内にある土俵で「奉納相撲」が執り行われます。会場となるのは、共同浴場上の湯の隣にある石段を登った先の湯坐神社(薬師神社)。肘折温泉の開湯当時からその信仰を集めるとされ、地元の皆さんからは“薬師さん”と呼ばれ親しまれています。お盆前まではひっそりと静かに温泉街を見守っていたその姿も、土俵の土は整えられ、参道には幟旗にぼんぼりと、にぎやかに。この日も、温泉街の皆さんや児童の父兄、そして湯治客ら多くの皆さんに見守られながら、湯の神に奉げる熱戦が繰り広げられました。

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まずは湯の神へお参り。お堂の中では、お赤飯とお神酒が振舞われていました。

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大蔵村小学校3年生による熱戦。東、どこんじょう山、西、花の海!

この日、力士として出場したのは、大蔵村小学校3年生の皆さんと温泉街の若手男性陣。子どもたち、そして大人たちによる相撲は、それぞれ個人戦と、三人抜き、五人抜きで取り組まれます。この日の為に練習してきたという子どもたち。慣れないながらも、まわしを巻き、塩を高く撒いて土俵入りする姿は頼もしく、観客からは大きな歓声が上がっていました。

かつて彼も相撲をとったであろうベテラン行司さんが命名した大人たちの四股名も、思わず口に出したくなるのユニークさ。ほていまんじゅう(商店ほていやさんで売っているおまんじゅう。美味しい)や箱そば(そば屋)、はがずんだ(川のほとりのだんご屋さん)、その名を呼ぶ子どもたちの声に誘われ、応援にも熱が入ります。「行けー!ほていまんじゅうー!」「押せー!そばー!」

お父さん、お母さん、爺ちゃん、婆ちゃん。小さな子どもたちに、湯治客の皆さん、そして駐在さんまで。みんなで土俵を四方からぐるりと囲んで見守る相撲はなんとも楽しい。きっと湯の神さまも見に来ていたのでしょう。気が付けば、わたしたち人間以外の何かもその熱戦を見守っているような、そんな気配すら感じました。

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たくさんの方に見守られながら、熱い、夏の一戦。

長い歴史を持つ肘折に、今も毎年続くお祭り。言葉で話すだけでなく、大人たちから子どもたちへ、姿を見せて伝えていく行事や風習。肘折には、そうしたずっと続いて欲しい風景があります。

砂のついた身体を流し終わったあと、「肘折さ居でいがったと思う瞬間だなぁ、あとは雪を待つばかり!」と言いながら笑うその姿に、日本のみならず世界有数とされる厳しい豪雪に耐えながらもここでの暮らしを楽しむ、肘折の皆さんのたくましくもしなやかな生き方を感じました。

(美術館大学センター事務局 鈴木淑子)

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メインの五人抜き、第一戦で見事優勝したカネヤマ商店の若旦那カズヒコさんと奥様のエリさん。四股名は「はなの父」(今春、ご出産されました!)この夏は、BAR肘折黒の店主としても大活躍でした。第二戦、三戦では、役場に勤めるヨーダイさん、丸屋旅館の若旦那センさんと若手男性陣のなかでも若手の皆さんが優勝され、ますます勢いを感じる肘折です。おめでとうございます!