ちょうど、1年前。山形市内は、30年ぶりという豪雪でした。道路脇に白い山脈のように雪が積み上がった中、山形市の真ん中、八日町になる歴史ある酒蔵の門をそろりとくぐりました。江戸時代の寛政の改革が行われた時期に創業したという羽陽男山酒造です。
この通りを歩いていくと、古くからの店があり、特に、酒、しょうゆ、そば、麩など食品関係の工場や店などが多いことに気づきます。それは、蔵王山系の伏流水が流れているところだとのことです。
日本酒は、米を主食にする稲作文化と麹菌による発酵食文化(東アジア圏)が生み出したものです。米×麹×酵母×水×温度から、酒造りの職人の手と道具によって生み出されます。日本酒を飲む人なら、どこの酒蔵の何の酒がどうのこうのと、ほんのわずかな違いを味わい比べて談義します。そのような感性はまさに人間らしい行為であり、私たち日本人は、それをご飯と日本酒を代表にして磨いてきたのでしょう。
では、その微細な味の違いとしての男山酒造さんの特徴は?見学してわかったことは、山形の契約農家がつくる米、地下100mからこんこんと汲み出る蔵王山系の硬水、そして素材をブレンドしてつくり出す職人(杜氏)さんチームの世代伝承しながら創意工夫する技のようです。
日本酒を飲まれる日本人の方で、まだ、酒蔵を見学したことがない? それは、毎日米を食べている人が田植えや稲の育ちや稲刈りの風景を見たことがないのと同じですよお。
人生、なんとももったいない社会勉強です。これからの時代の豊かな暮らしとは、たくさんの物を持っているかではなく、自分が消費するものをできるだけ自分の足と目で見聞してモノの先に人の営みや背景をも共感することではないでしょうか。男山酒造さんには、アットホームで誠実さを感じました。
こそっと酒蔵見学の妙味を。物体としての米がふつふつと微生物的作用によってまさにアルコールに変化している変わり目をちょっといただくことができるんです!
「米が発泡している!」口の中でそんな感覚がわきあがります。まさに、発酵の現場の醍醐味!!
醸造部長さんいわく「酒蔵見学には車でこないでください」と。泊まり込みで米を酒に変化させる冬の仕事もまもなく終わるそうです。
さて、あれから1年。この男山酒造さんの純米大吟醸酒(山形県で開発した酒米を用いた)に、本学日本画コース学生のラベル絵が5種類貼られた酒が出来上がりました!
平成版鳥獣戯画のようなユニークなラベルです。しかも、これには、酒びんに貼られているラベルと別のラベルがおまけについています!(このアイデアは専務さんの発案です)
松見町ヤマザワなどでも販売しているとのことですが、つくっている現場を体験して購入したいという方は、男山酒造さんのHPからメールか電話をして酒蔵見学されてみては、いかがでしょうか?
ちなみに、この写真のラベル画をかいた高田さんも見学したいということに、今度、フィールドワークとして連れていく予定です。
ぜひ、山形の4年間の学生生活で、日本文化としての日本酒づくり見学も「日本の教養学習」だと思いますよ。くれぐれも、試飲する方は、近くまでバスで行って、歩いて酒蔵にどうぞ。