ブリコロールとは、文化人類学者レヴィ=ストロース『野生の思考』に出てくることばで、器用仕事人と訳されています。器用仕事とは、ブリコラージュの訳で、ありあわせのもので作り出すということです。レヴィー=ストロースは、この方法を、ないものは欲望のままに作り出す近代社会の技術に対して、世界各地の民族の技術の特質ととらえ、それをお粗末でも駄なものでもない、という見方を西洋近代人に示しました。
さて、先日、研究室に持参された、猪俣商事さんがつくった、日本の正月のしめかざり。ここにも、身のまわりののものに名づけのことばに掛け合わせた、ダジャレのような願いの仕掛けがたくさん盛り込まれているのを知っていますか?
新たなしめかざりを考えるには、まじめなブリコロールではなく、笑うブリコロールのようなセンスを学ぶ場になります。それは、収穫を祝うお祭りや田楽のように、地域での生産生活を楽しくする道化の知、コミュニティを活性化させる人材性の一つにもなっていくでしょう。
私の名前は、松田。笑うブリコロールの訓練として、表札を立体化して表現したら、こんな感じ。小さな一本松があれば、松だは、在学。なければ、不在。
その台に使ったのは、18年ほど前に行なった器用仕事の残り物(オッズ・アンド・エンズ)。中学校の美術の先生、牧野先生と、NHK山形のスタジオを、ペイントしたジュースケースで、埋め尽くして、番組のセットをつくったことがありました。
ジュースケースやビールケースは、積み重ねができ、強度があります。巨大なレゴ・積み木遊びのアートとして、つくりました。名付けて、「積み器」(ユニットアート)。その残りです。その中で、青から白への4色の積み器でつくったオブジェ遊びもしました。そのイメージの素は、ネフ社の積み木セラです(この部屋に現物があります。30年前、学生時代に買いました。店主からまけてもらって)。
のちに、積み器は、コンサートの舞台でも使い、その場で、1器500円で販売して、電気屋さんが、商品のディスプレイなどにも買っていかれました。
ただ、当時は、表面にペイントしただけだったので、はげてしまい、ペイントの工夫改良の余地はあります。
のちに、始めた だがしや楽校の屋台も、この利用の展開です。
積み器の台には、こんなマツケンカードを2種類置いています。関心ある方は、どうぞ。小さな出島空間です。カードは、印刷会社に裁断してもらいました。A4の8分の1です。
現代の我々人間の社会生活は、最も効率的なことは、定形化してどこででも互換性があり、広めることができる共通規格化が、大量生産システムからITまでの中で普及してきました。
これに対して、代替え不可能な独自性の表現がアートです。規格化している身のまわりの中のありあわせのものを用いて、いかに人間生活、人間精神の豊かさを育むアートを生み出していくか、現代の生活芸術運動は、ここが一つの活動の切り口になると思っています。
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