山形市の西の丘陵に、三角形の山があります。富神山です。古来、里の一番ふもとの三角形の山は、人が亡くなるとまずそこに霊が昇ると信じられてきた信仰の山です。とがみ山という名称は、全国各地にあります。この山ふもとにも、かつて、古墳時代の豪族の古墳跡が残っています。
この富神山ふもとの街道沿いの集落に、かつての地域社会のコミュニティが形成される重要な役割を果たしていた姿が今も残っていて、これからの少子高齢化する地域社会を再生していく手がかりになるものとして、見つけました。山形市内の門伝という地域の古い街道沿いです。
この街道沿いに、店が何軒かあります。昔はもっとあったそうですが。昨年の暮れ、12月30日に、この通りを通った時のことです。どの店にも、人がいるので、びっくりしました。一軒のお菓子屋さんに入ると、近所の方々がお茶を飲んでいます。
「まず、一服」とお茶を出してくださります。そして、なごなごと世間話をした後に、買い物をしていくのです。ここの地域の店は、単にモノを機械的に買う店ではありません。喫茶店でもあり、相談所でもあり、デイケアセンターのような役割もあり、まさに、毎日の家庭の食卓の必需品を買う、生きるための生命的な場所が、人と人がつながる潤いのオアシスにもなっている、近所地域のコミュニティショップなのです。
この店、新清堂さんに昨日、うかがってきました。新しいお菓子を開発し商品に出したというのです。何とも、この道といい、この店構えといい、なつかしい(きっと、コンビニで育った若者には新鮮な)、心がほっと温まるような店ですよお。
菓子をつくっているのは、3代目のご主人の丹野順一さん。おじいちゃんが和菓子を、ご主人が洋菓子をつくられています。にこにこと温厚なご主人さんです。
その新商品は、きなこを入れた生地であんをつつんだ菓子です。商品名は「陽だまり」。すでに、この地域をイメージした菓子をいろいろつくられています。三角の富神山をモチーフにした「とんがり山サブレ」のパッケージの図案は、ご主人がデザインしたのだそうです。そこに生まれ育ち住んでいる人ならわかる富神山ふもとの風景が図案化されています。近所の方がお客さんであるこの店にとっては、この地を図案の素材にしていくことは、重要なコミュニティの媒介物になります。印刷会社に図案も頼んで、パソコンのソフトにある図柄を適当に雰囲気にあうようにして、さっとつくるのとは、決定的に異なります。土着の地域性(ゲニウスロキ:ラテン語で、土地の精霊)があるかどうかです。
さて、新商品、「陽だまり」は、とりあえず、既成品のビニルパックに入れて販売を始めていますが、この図案を、頼まれました。なぜ、この話になったのかも、私から提案したのですが、そのやりとりは土着性による人のつながりづくりから発芽したものです(その原理は授業などで話します)。
この新清堂さんの新商品「陽だまり」のパッケージを描きたい学生を募集します!
この図案の趣旨は、「地域のコミュニティづくりの媒介物になるフィールドアート活動の試みの一つ」です。
この地を自分でも歩き、地域の人と語り合い、ご主人が陽だまりを連想した場所(ちゃんとあります)を聞いてそこも訪れ、ご主人や店の想いもくみ取り、それらを総合して、自分がこの地とこの図案化に共感した「コミュニティの参画者」人が、描く資格者になります。
ちなみに、近所のおばあちゃん、おじいさんたちの駄菓子屋にもなっているこの店は、この地域の子どもたちにとっての駄菓子屋でもあります。店の前に置いている子ども向けの駄菓子を並べた台は、ご主人の手づくりだそうです。
この店と、この通りは、「駄菓子屋楽校」の原風景を今も残しているところです。山形市内にもあるんですよ〜。
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