戦略論という学問領域があります。おもに、企業戦略や国際関係の戦略などで用いられますが、そのもとは、戦争での戦略論から来ています。
将棋や囲碁なども、戦略論のゲームと言えます。
それは、ある目的を最も効果的に達成するための方法論と言えます。
社会活動の良し悪しも、よりすぐれた戦略の図面を頭に描くかにあります。
私のコースの担当のプロジェクトで言えば、社会のあらゆる分野に創造的な人材と活動を提供するという総合美術コースの目的をめざすことになりますが、それはこちらの都合で、社会の人々からすれば、別に、本学総合美術コースはわが身のことではありません。
そこで、相手の立場にたった目的、例えば、楽しく創造的なことづくりで相手の売り上げをあげる、それら個々の豊かさづくりの総体として、だれもが楽しく創造的に生きる社会や人生をつくる といった理想を示して、共感してくださる方と目的の実現に向かうということになります。
それゆえ、その目的のためには、一箇所だけではなく、社会はつながっているので、多面的に作戦を展開することで、相乗効果をはかって、目的に近づくことになります。
ゼロから起こして、世界や社会の歴史的ムーブメントをつくるには、そのような多面的戦略が不可欠です。
スイカドームのペイントの午後に、用意通りに別働隊(マナミさん、アヤカさん)を率いて、しめ飾りの調査と、スイカの箱をデザインする農家の調査に出向きました。
私たちのデザインの最大の強みは、依頼者の現場をフィールドワークして、その風土、特徴、思いなどをつかんで図案化し、それを生かすために、さらに他につなげて変容展開していくことです。
まずは、猪俣商事さんです。
ところが、思わぬことに直面。
コロコロと手の平でわらを転がして、なう という、見るだけだといとも簡単そうなことができないのです!(私も)
あらためて、わかったことは、素材と動作に対応した手わざの微妙な身体知の感覚です。わきで同じようにして教わっても、なかなかできません。(それですぐできたら、人間の伝統技術は不要だとも言えますが)。
名人のおばあちゃんは、はるか先にある存在です。そばでしているのですが。
まず、自分たちも技を学び、そこから、どんな発展・変容・新生のしめ飾りができるのか、まずは、今回、調査に来た2人が火曜日までにしっかり、わらをなうことができるようになって、しめ飾りメンバーに伝えてほしいと思います。
次に向かったのは、ここだけ雑草が生い茂るスイカ畑。
山の微生物菌を畑の土に入れて、除草剤を使わないスイカづくりをしているのだそうです。
草とともに共生しながら育ったスイカは、何とも甘いのだそうです。
自然のエコロジーからすれば、草を殺す薬がスイカにもいいはずはありません。まわりの草がみな殺されて自分しかいない土地よりも、草といっしょに育ったほうが、スイカにとっても健康的に違いないでしょう。
その草は、雑草ではなく、スイカとともに生きている共草。
その姿は、命がみな交響し合って生きている響生 ということばが似合うように思いました。
この地域のふるさとの山が、あの二こぶのような二つ森山。通称、荷鞍山(にくらやま)だそうです。あの山を見ながら、ここの農家の人たちは作物を育て、あの山から吹き降ろしてくる風と格闘しながら、たくましく人も作物も育ってきているのが、この土地柄だそうです。
草との響生、そのエコロジーを支えている目に見えない菌。ふるさとの山、風、そこにたくましくつると葉を広げて生きるスイカ。そして、将来の尾崎さんの夢。それらが、図案に込められた箱が、尾崎さんのスイカを入れるにふさわしい箱です。
スイカの小さな実がなっていました。毎日、尾崎さんたちは、スイカの世話ですることはいっぱいあるのだそうです。
これらの実が約3000個、実るまでが、箱のタイムリミットです。ダンボール会社を決めるところから頼まれましたので、こちらも、時間スケジュールを決めて今週から活動を始めなければなりません。
スイカドーム、しめ飾り、スイカの箱 …
これらは、どのように、これからつながって販売に向けて、さらなるアートの付加価値といっしょに、コトが生まれるか、みなさんはどんなコトを想像しますか?
豊かな想像をすることができる人が、それを具現化しようと動き出すことができます。
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