昨日、炎天下の中、中山町のスモモを調査に行きました。中山町商工会がつくっているスモモしょうゆのラベルデザインの依頼を受けて、スモモを観察するフィールドワークです。探索者は、総合美術3年のハルミさんとアイさんです。
スモモを栽培している青木さんの話を聞きながら、わかったことは、スモモの立地は、一番山奥。人家の近くは、モモ、次に、サクランボ、次にブドウ、その奥がスモモ。標高が高く、傾斜によって水はけがいいほうがいいのだそうです。
どうりで、東北一の生産地と言われていても、どこにスモモがあるのかわかりませんでした。
水の神の石像をこえて、山に登ったところに、一面、スモモ畑が広がっていたのです。
連休前には、ここは一面、スモモの白い花畑になるとのことです。桃源郷(桃はスモモ)です。この先をさらにのぼっていくと、かつて、「おしん」の生家があり、その近くには、オナカマさんという、青森の恐山のイタコさんと同じような、霊を呼ぶ女性が住んでいて信仰されていたところがあります。その証は、中山町の民俗資料館に展示されています。
スモモは、モモと違って、実のつき方が、サクランボのように、軸があるのが特徴で、それゆえ、すぐ落ちてしまうのだそうです。これも木になっているところを見なければ、わかりませんでした。
ついでに、青木さんの畑の頂上まで行ってみると、眼下に山形盆地が広がりました。まるで天空の果樹園という感じです。太陽が近いのか、暑さも格別。
次に、穂積さんのカーペット工場も見学させてもらいました。もともと、今回の中山町のスモモしょうゆのデザインの話は、穂積さんにメールをして、穂積さんのカーペットづくりに何らか参画できないかというきっかけからの派生です。
スモモしょうゆについては、ラベルのデザインだけでなく、箱、デザインコンペ、容器、食べ方、など、いろいろ展開がさらに広がっていく感じです。
総合美術コースの活動領域と私が担当するプロジェクトは、現在の社会で分野に分けられている領域をすべて超えて、あらゆる方面に枝葉を広げて展開していくことが特徴です。
そういう意味で、穂積さんの会社のモノづくりも、先代社長の穂積さんのお父さんが、いろいろな分野とコラボレートして、いろいろなものを共同開発するのが好きだった、ただし、売るのは苦手だった、という会社の特徴は、大きな潜在的な可能性を持っているモノづくりの現場だと直観しました。
山辺町のニット工場と共同したバッグあったり、鮭川村のスリッパ工場と共同開発したスリッパあったり、じゅうたんの麻の原糸で編んだベストあったり、お母さんがじゅうたんの糸で手編みした服があったり、カーペットの時計があったり、何とも、カーペットの多面的展開の発想トレーニングができます。
工場は、山辺町のオリエンタルカーペットで学んで創業したおじいさんが、旧帝国陸軍の教育施設(神町にあった)をそのまま移築したものだそうで、3代目の穂積さんがこれからしていきたいことは、この工場の現場に消費者に来てもらって、カーペットづくりのワークショップ体験などもしてもらい、カーペットがどのような手間でできていくのかを知ってもらって買ってもらいたい、というのが願いなのだそうです。
地元の中学生が来て、自分たちでつくったというカーペットもありました。
かつて、学生時代、私は、未来学者アルビン・トフラーが『第三の波』の中に提示した、生産者と消費者が一体になるという姿の具現化を試みようとしました。それをインターデザインと名づけて、生産者と消費者を仲介する者(その時は私がそれになろうとしました)が、それを具体的に生み出していくという試みです。その襟ネームも作ってニット工場で仲介生産販売を試みたのでした。
この試みは、学校や企業などの現代社会のしくみができた近代社会のあり方を超える、次の時代の社会づくりを実践から大構想をつくっていきたいという私の大主題の一つの試みでしたが、それは今も延々と続いています。駄菓子屋研究とだがしや楽校などの試みも、その大主題の中の実験研究の一つです。残念ながら、だがしや楽校に関心や応答があっても、インターデザインは反応なかったりと、私がめざす、次世代の社会づくりという大主題全体に丸ごと関心と共感持ってくれて、共同活動するという人は、まだ現れていません。
製造現場に市民が入り込み、製品を共同開発したり、余剰物から新たなものづくりをおこしたり、工場の営業マンの役割もしたり、消費者にもなったり、という試み。この基本原理は、人間は、元来、生産者でもあり消費者でもあり、教育者でもあり、学習者でもある、という、そもそも人間はあらゆる多面性(多重知性、重層創造性)を持っているという考えです。近代から現代にかけての社会システムでは、人間の多重性を自由にさせていくとシステム化がめんどうになるので、できるだけ、人間を一義的な役割に限定させる方向に来ています。コンビニのアルバイトは、マニュアルにある労働のみ、といったように。
穂積繊維さんの工場は、現代の経済社会からすれば、雑だったり、駄なものが多く、また、完全に現代の流通経済の中にすべて組み込まれて、他者(市民・異者)が入り込む余地がなく、また、市民に見せないものではない、半端な感じがする生産現場ゆえに、市民が参加する可能性の余地があり、新たな共同実践が生まれる未来の芽があるところでもあります。何より、その可能性の有無は、当事者の人柄が一番です。
未来の社会を生きる若い人、何かしたいと思っている人、穂積さんの工場に行ってみて、何か自分もできる手がかりがあるかどうか探索してみたいという人は、案内します。それは、単なる工場の道案内ではなく、いっしょに、みなさんの立場に寄り添い、何かができるかを考え、実際に何かを生み出す、創造的な案内者(活動を仲介して生み出す花粉媒介者、ポリネーター)です。私は自身の活動を通して、新たな人材像も創出したいと思っています。新たな社会づくりは、当然のことながら、新たな人間の活動像、新たなさまざまな様式づくりや流通ネットワークなども生み出していくことでしょう。これまでの経済システムにおける単なる卸業や小売業やサービス業ともまったく異なる人間の活動像です。
しかも、それは、現在の社会に対峙して革命による変革をおこそうというものではなく、現在の社会と共生しつつ、新たなものを生み出していくということで、これまでの社会変革の方法論とも異なります。
私は、山形に現在住んでいて、大学もここにあるので、自分が住んでいる山形で、ものづくりなどの現在や人・モノを捜し、共同活動ができそうなところを見つけていきます。そして、山形インターデザイン・ツーリズムをオプションで常時、希望者がいれば案内したいと思います。
お気軽にメールください。
穂積さんがつくった、奇妙なカーペットの一点モノのポンチョ、なかなか着心地は、頭の創造性をふわっと高めてくれるような感じです。みなさんも、この工場に来られた方は、ぜひ、来て写真をとって帰りましょう。
残り糸ももらってきましたので、杉並、世田谷の講座に再度持参していきますよ。
ついでに、宿泊したい方は? 何ともユニークな古民家がありました。それは、総合美術の学生ブログにハルカさんアイさんが紹介してくれるかもしれません。今日は、コスプレ団体が泊まるのだということでした。
普通でない旅、出会い驚き考える旅、何かを生み出す旅
ボーン・ツーリズム
「やまがたインターデザイン・ツアー」ガイド:松田道雄
問い合わせ:dagashiyamatsuda@gmail.com
みなさんの地域のボーン・ツアーをポリネートする養成講座も行なえます。