文化財保存修復学科

立体作品修復/東洋絵画修復/西洋絵画修復/保存科学
*
2009-07-01

蟇股彫刻への想い


  はじめまして、立体作品修復ゼミです。
  さまざまな立体作品の保存と修復について日々学んでいるわけですが、
  今日はその中から、実際の活動についてちょっと紹介です。

  さる6月26日、蔵王温泉の高台にある酢川温泉神社で例大祭が行われました。
  酢川温泉神社は、古くから地域の人々に愛されるまさに蔵王温泉の鎮守。
  素敵な温泉と硫黄の香りは、この神社のおかげなのです。


  さて、この酢川温泉神社のちょっと下に、薬師神社というお堂があります。

  このお堂の蟇股(かえるまた)には、十二支の彫刻が置かれていたのですが、
  そのうち10体が長い間失われていました。


  蟇股とは、屋根の重さを分散させるために梁の下に設置される部材のことで、
  上の写真のように、蛙が足を広げて踏ん張っているみたいに見えるМ字の部材のことです。
  そしてその中に置かれるのが蟇股彫刻です。

  私たち立体作品修復ゼミの学生は昨年(2008年)一年をかけて、
  失われた10体の十二支を新たに制作しました。

  そして今回の例大祭にて、
  実際に地域のみなさんにお披露目することが出来たのです。

  例大祭には多くの地域の方にお越しいただき、
  温泉神社の宮司さんをはじめ喜んでいただき、
  大変嬉しく感じました。

  無事にお披露目となったわけではありますが、ここにいたるまでは試行錯誤の連続。

  蟇股彫刻を制作すると決まった時は、、
  「ええー!そんな大役、私たち学生がやってもいいの!?」
  と思ったのですが、
  地域の人々に愛され、神聖な場であるお堂を装飾するための彫刻。
  遣り甲斐を持ちながら作業を続けることが出来ました。

  とは言っても、はじめての経験。
  
  他の蟇股彫刻をたくさん参考にしながら、
  粘土をこねて原型を作ったり、
  木彫の道具を仕立てたり。
  10人(のゼミ生)での作業となると、個性がそれぞれに表れて。
  自分の技量と知識のなさに落胆したり。
  下から(拝観される方が)見上げる角度についてみんなで考えたり。
  
  作業が進んで、先が急に開けたり。
  また、わからなくなったり。
  苦悩しながらも、とっても楽しんで、愛情込めて、
  そして、協力して作っていくことが出来ました。

  安置前の写真ですが、
  私たちが制作した彫刻をいくつか。


子です。

巳です。

申です。

亥です。
それぞれに制作者の思いと個性が入った彫刻となりました。


  蟇股彫刻は、今後もう一度取り外し、
  最終調整に入りますが、
  お堂に設置された十二支彫刻、
  機会があればぜひご覧下さい。

  立体ゼミ4年

  
  ※酢川温泉神社 (スカワオンセンジンジャ)
  所在地 〒990-2301
  山形県山形市蔵王温泉坂の上関神811-6
  TEL:023-694-9133
 先日、山形市・蔵王温泉にある酢川温泉神社の蟇股復元について、
 テレビや新聞に掲載されたのですけれど、ご存じでしょうか。
 
 本学科の立体作品修復室(ゼミ)の学生さんが関わっております。
 学生さんからは、どのように映ってみえるのでしょう。
 超絶多忙な学生さんにレポートをお願いしました。
 
 お隣の学科のこと、なかなか、
 分かっているようで分からないことありますもの。

 もう一歩、踏み込んでみませんか、それではどうぞ。わくわく。

 =====
  ゼミのみんなで、何か一つの研究し、一つのものを作りあげるということは
  なかなかないことです。

  そして、ずっとこの先も地域の人々に守られながら残っていくものとして形にできたことは、
  本当に嬉しく、普通の学生では味わえない経験が出来たと感じています。

  貴重な機会を与えて下さった教授や、宮司様をはじめ
  地域の方々、本当にありがとうございました。

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