2010-03-29

卒業研究 淡い画

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人が建築を経験することは、空間と出会い、体で感じること。「ここの場所いいな。」と感じる瞬間、懐かしさと重なってはじめて自分を取り巻く空間を意識する。実に個人的な感覚であるが、人間の記憶にある原風景はきっと人類みな繋がっていて、個人を越え同じ空間の下で共感することは可能ではないかと考えた。「淡い」という生あたたかい感覚は、次に続くことばをほのかに染めて薄く色付づける。まるで母親の胎内で繰り返される呼吸のように。幾度も織りなす円と曲線の景色は、記憶をひとつひとつ紐解きながら穏やかな線の構成で、筆で描くように表現した。共感の輪が広がっていくことを願いながら。

[講評]
曲面で囲まれた連続した空間で住宅を考えたいというのが、この設計の出発点である。それは四角く囲まれたハードな壁に対する痛烈なアンチテーゼなのであるが、立体に展開しようと考えた途端、建築的な制約が自由な計画をいかに不自由なものにしようと襲いかかってくる。しかし、作者はそれを竹という地域的なイメージの強い材料を駆使して、軽く造ってしまった。この軽さが本作品の最大の特徴であり、居住空間のこれまで追求がされてこなかった可能性を示唆するものである。(竹内昌義)