2009-07-07
山形R不動産リミテッド
「山形R不動産」のはじまり
昨年から、僕が東北芸術大学で教え始めたのをきっかけに、山形の街なかを対象にして「山形R不動産」を始めることになった。一見「東京R不動産」の兄弟サイトで、地方版R不動産。今までも、福岡、金沢でもやってきている。しかし、山形の場合はそれらと決定的に違う部分がある。ただし、それは不動産紹介サイトではなく、街なかのライフスタイル、楽しみ方を表現するメディアに特化しようとしているところだ。
それには二つの理由がある。まず大学が主体なので不動産業を営めないこと。そしてもうひとつ、空き物件が人口の割に多過ぎることだ。最初、学生たちに「魅力的な空き物件を発見してこい!」と号令を掛けた。一ヶ月後、街なかの空き物件の場所がマーキングされた住宅地図を彼らは持って来た。僕はそれを見て驚愕する。「空き物件だらけじゃないか・・・」。そこには地方都市の現実があった。「山形R不動産は発見ではなく、街に対して、新しい住み方自体を提案し、交流人口を増やすエンジンにしよう」そう方向転換した瞬間だった。
まちなかを「住む」エリアとして捉え直す
今、日本じゅうの商店街は空洞化に苦しんでいる。同時に、さまざまな活性化案が考えられているが、どれもなかなかうまくいっていない。それは商業地を、商業の再生で再生しようとしているのに無理があるのではないか?
僕らの提案は、まちなかを「住む」エリアとして捉え直すこと。
なぜ、そこに考えが至ったか、その理由は案外単純な理由だ。学生たちに「郊外に住みたいか、まちなかに住みたいか?」と訪ねてみると、「そりゃ、飲み屋もバイト先も近い街なかも、住む場所としてはありだと思います。でも、住む場所がないんです」という答えが返ってくる。しかし、実際のまちなかを眺めると空き物件はたくさんある。問題なのは、それらがすべて店舗や事務所で、「住む」ための場所ではないこと。要するにミスマッチ。本来、ニーズがあるかもしれない居住機能が、まちなかには用意されてはいない。交流人口が増えない一因はここにあるのではないだろうか。
山形への小さな実践のスタート
どうせ空いたままにしておくなら、街のためにも、安く学生や若者の活動のために貸して、一肌脱いでくれる有志だっているかもしれない。みんな、再び街に若い人々の声が戻ってくることを望んでいるのだから。実際、空き物件をギャラリーやショップに改造したい人間たちはたくさんいる。しかし、イニシャルコストや保証金の存在が、それにブレーキをかけている。
まずは行動ということで、山形R不動産チームは、古い空き旅館を再生してアーティスト・イン・レジデンスや長期滞在型の宿、そして学生たちが運営するギャラリーをつくるプロジェクトが動き出した。旅館のオーナーさんを見つけ出し、強引にプレゼンテーションし、さらに予算が足りなかったので地元の銀行にも融資のプレゼンを行った。地方都市が強いのは、そのコンパクトさ。提案は瞬く間に承認され、3月に着工してした。コンパクトゆえに関係者が少なく、ものすごいスピードで結果が出るのだ。この古い旅館では、学生たちが設計し、そして壁のペンキを塗ったりしてチュ-ンナップした。自分たちが使う空間を、自分たちでつくって、それを街に定着させようとしている。山形への小さな実践のスタートだ。
建築環境デザイン学科
馬場正尊研究室
三沢旅館キッチン Before
三沢旅館キッチン After
廊下 Before
廊下 After
ダイニング Before
ダイニング After
ベッドルーム Before
ベッドルーム Before
山形R不動産リミテッド
「街中の空き物件再生中!_元旅館を学生が再生」の記事一覧
「街中の空き物件再生中!」ブログの中で、古い空き旅館を再生する様子を詳しく読むことができます。