2009-07-10
「新しい郊外」の家
昨年末、僕が房総の海辺に建てていた「房総の馬場家」(すなわち自宅)が竣工した。このプロセスは、僕の環境や身体に対する、ここ数年の意識の変化そのものだ。なぜ房総に土地を買い、住み始めようと思ったのか?
それまで、僕は賃貸派。一生、賃貸マンション暮らしでいいと思っているタイプだった。都心にフットワークよく住む、それが合理的だと信じて疑わなかった。しかし最近、都会の喧噪に20年間も曝され続け、体内に少しづつ悪いモノが蓄積されている感覚を感じ始めていた。このまま都心生活だけでいいのか? それって本当に豊かなのか? そういった危機感に近い疑問を抱き始めたのが2年前。40歳の足音が聞こえるようになったある日、東京から1時間半、外房の海辺に魅力的な場所を見つけてしまった。土地の値段は同じ時間距離の湘南の1/10~1/20程度。300m歩けばサーフィンのできるビーチが、ドーンと広がっている。
とはいえ、仕事の中心は東京。毎日通わなければいけないし、まだバリバリ働きたい。そこで気がついたのが、「新しい郊外」という概念だった。
それは仕方なく住むベッドタウンとしての郊外ではなく、積極的に目的意識をも持って住む郊外。僕の場合の目的は、海とサーフィン(引っ越しを機に始めてた)、そして自分や家族と向き合う時間。
馬場家(夫婦と子ども二人)は、房総に自宅(この家)、都心に小さなマンション(こっちが別荘)を借りて、ダブルハウス生活をしている。仕事場まで一時間半なので十分通勤圏。でも忙しいときは都心の部屋に帰る。ローンと家賃を合わせても、都心部の80~100平米のマンションを借りるのと同じくらいだ。
1月14日に、この家ができるまでのプロセスを書いた本が出版された。ちょっとした気づきから家を買ってつくるまで、それに至った家族の経緯、そして僕の考える都市論を書いてみた。特徴的なのは、土地を買ったり、家を建てたりすることに対する、謎や微妙な部分を、あえて全部書いている部分だろう。小さな設計事務所の経営者が果たしてローンが借りれるのか? それはいくら? そのためにはどうやったらいいか。土地はどうやって探し、買うのか?
また、家を建設する場合は何がポイントなのか? どうすればコストを抑えられるか。見積もりまですべて公開している。今まで、建築家も不動会社も銀行も、曖昧にしていた部分を、全部、ガラス張りにしてしまった。勢い余って、家のデザインまでガラス張りにしてしてますが・・・。
とにもかくにも、僕はここで生活を始めた。
「新しい郊外」の家