2009-07-16

卒業研究中間報告会

  • home
  • tuad
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • YouTuve

こんにちは。

夏まっさかりですね。

暑さに弱いのでばてばてです。

一番好きな季節は真冬です。

古川です。

今日は4年生の卒業研究中間報告でした。

卒業研究とは、4年生が興味のあるテーマを自分で選んで、

1年間かけてとことんじっくり掘り下げて、

最後に「論文」や「設計」などの形にする、というものです。

そのアプローチは実に自由。

思いのたけをおもいっきりぶつけて

どんなことだって、やりきったもん勝ちです。

賛否両論ありましたが、

ある町の魅力を「漫画」にする、という人もいましたよ。

その途中経過を報告する今回の報告会で、

わたくし古川はタイムキーパーという大役をおおせつかりました。

なのであまり写真をとってないのです。(いいわけ)

さらっとこんな様子。

2009-07-15

3年「近自然工法」最終講評

  • home
  • tuad
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • YouTuve

こんにちは。

Fit’sというガムのCMソングが頭から離れません。

噛むとふにゃんふにゃん♪です。

古川です。

今日は、3年生のランドスケープ(風景)デザインの演習課題、

「近自然工法」の最終講評でした。

きのうの記事で紹介した模型、

さて、どうなっているでしょうか。。。

この課題は

大学の近くにある竜山川と、それを挟んだ両岸約100メートルを

広場空間としてデザインするというものです。

同時に、豪雨時の氾濫に備えることや、

周囲の環境にどうなじむかということも考えていきます。

今日は特別コメンテーターとして

環境デザイナーの田賀陽介さんをお招きしました。

「図書館」のマエキタさんといい、

演習の講評会では第一線で活躍されている方から

実際に意見をもらえるのもこの大学、この学科の特徴です。






川を上流までさかのぼってみたり、

まわりの住民を訪ねて話を聞いたり、

土地の歴史を調べたり、

いろいろな方法で調査をして、

そこから川と広場の在り方を導き出します。

デザインするのは植える木や草花の種類、

その密度、

それがどう増えていくのか、

川の底は何でつくるか、

水はどのくらいのスピードで流れるか、

などなど。

その提案が、

きれいなドローイングと、模型で

プレゼンテーションされていました。

古川もランドスケープの講評は

あまり聞いたことがなかったので、

いちいち興味深かったです。

建築と比べるともっとやわらかくて、

時間の経過まで含めてデザインするところ、

おもしろいなあと思いました。

いやあ奥深い!

*****

さて明日は、4年生の卒業設計中間報告会。

わお。

60人以上の4年生が全員発表

5時間を超える大イベントですよう。


明日の記事で、レポートします。。

あ、そういえば、

彫刻のブログがついに☆

裏番長(なの?)

今後が楽しみですね。

 

2009-07-14

プロジェクトレポート1

  • home
  • tuad
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • YouTuve

こんにちは。

ブログを更新すると目がおばあちゃんになりますね。

しょぼしょぼです。

古川です。

今日はプロジェクトシリーズ。

建築・環境デザイン学科ではいくつかの、

社会的なプロジェクトチームが発足しています。

その中で今日は「山形R不動産」について。

彼らのサイトはこちら

要は住宅に限らず空いている物件を探して、

住宅に限らずいろんな用途に使えるように、

かっこよくカスタマイズしている人たちです。

「リノベーション」というのですが、

経済的にも環境のためにも、建物を新しくつくるのではなく、

すでにある建物を使っていこうというのが、

最近の建築界のひとつの流れになっています。

みなさんもテレビの「大改造!!劇的ビフォーアフター」見たことありますよね。

あんなかんじ。

実際に、R不動産の学生たちは、

もと旅館だった建物をカスタマイズして、共同生活をいとなんでいます。

学科ページのコラム(by馬場先生)に詳しい経緯が

ブログでも様子がわかります

さて、いま彼らが取り組んでいるのが、旅館に続くリノベ物件。

「一戸建て×2(畑付き)」です。

オープンハウスとして一般に公開しているその場所を、日曜日にのぞいてきました。








畑との距離感が良く、とても味のある物件でした。

よくよく聞いてみると破格の賃料で、改装のための待遇も抜群!

暇さえあれば、古川が住んで店開きたいくらいです。。。

うちはデザイン学科で唯一、課題で実物をつくれない学科なんですね。

家具やポスターやCMと違って、建築や公園やまちは、

お金や、いろんな人の労力が必要だから(大工さんとか)

試しにつくってみることが難しいんです。

でも、だからといって諦めたらもったいない

やりかたを工夫すればお金も大工さんも使わずに

自分たちで建築をつくることができます。

それが彼らにとってはリノベーションだったんですね。

DIYの精神でどんどん建築をつくっていく彼らの姿は

なんだか、かっこよく見えます。

課題ではまだ見ぬ大きな公共建築をシュミレーション。

大学から帰ったら半径5メートル以内を

トンカントンカン自分の手で建築していく。

すてきですね。

物件に興味のある方はホームページのお問い合わせ先に、

ご連絡ください。

*****

もうひとつのプロジェクト

「山形蔵プロジェクト」についてはまた後日。

古川、実は4年ほど前に蔵プロの代表をやっていたので、

熱が入ってしまいそうですね。

最後に今日の環境棟から。。



明日は3年生の課題「近自然工学」の最終提出。

みんな追い込みの作業をしていました。

今日は眠れないな…とつぶやいている人も…

体壊さない程度に、がんばれ!

あと、車と自転車の運転にだけは気を付けてくださいね。。。

明日、完成したものレポートします!

2009-07-13

3年「図書館の設計」中間講評

  • home
  • tuad
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • YouTuve

はじめまして、古川です。

この4月から副手として大学にきました。

副手は毎日、学生の演習室のとなりの部屋にいます。

だから、とてもよくわかります。学生のこと。学生の毎日のこと。

写真もほぼ毎日撮っているし。だからブログを書きたいと思いました。

考えすぎると、書けなくなりそうなので。

できるだけ、するっと出していきたいと思います。

もしお気に召しましたら、ときたまのぞいていただけると嬉しいです。

さて第1回目は、3年生の演習課題「図書館の設計」。

さる7月1日におこなわれた中間講評の様子をお伝えします。

中間講評とは、8週かけておこなう課題制作のうち、

だいたい半分が過ぎた時期におこないます。

こんなコンセプトでこんな平面や立面にしようと思っています、と

ひととおり最後まで考えた案を発表します。

そこで意見をばんばんもらって、完成まで加速度的に進化させていくわけです。

いつもは「中間だから〜」とまだまだ涼しい顔のみんなですが、

今回は始まる前からカチコチ。

なぜって、マエキタミヤコさんが特別に講評にきてくれたからでした。

(マエキタさんについては学科長も5月26日の記事で書いていましたね。)




マエキタさんは広告畑の方で、建築の専門家ではないから、

とても刺激的な講評会になりました。

建築も広告も社会を相手にするというところで、

ものをつくるときのアプローチの仕方が似ています。

でも扱っている素材が物理的なものではなくて

「言葉」や「見せ方」だから、とても新鮮。

たくさん発見があった様子。

最終発表は7月22日。みんながんばれ。

また、最終発表レポートします。

最後に、

このブログを始めるきっかけをくれた

ブログ女王(なの?)洋画のオオウラさんに、ありがとう。

だいぶ手続きにてまどって遅くなったけど、ちゃんと約束守りました!

(約束の内容についてはここ参照)

次は彫刻の誰かさんの番ですよ♪

楽しみにしています。。

2009-07-10

選手交代します。

  • home
  • tuad
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • YouTuve

わたし、学科長がいままでブログを書いていましたが、かなり、忙しく不定期に。。。でも、みなさんに、いま学科でどんなことがおこっているかをおしらせしたい!!

ということで、副手の古川さんに選手交代します。時々は、取材される側になって登場しますので、よろしくお願いします。

それでは。みなさん、お楽しみに。
オープンキャンパスでもお会いしましょう。
学科のみんなはまた、来週。
OBのひとはまた何らかのかたちで。。

それでは。

2009-07-10

風景を読む

  • home
  • tuad
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • YouTuve

目の前の風景はなぜそう見えるのか? このことに、私はいつも並々ならぬ興味を抱いてしまいます。山のかたち、雨や雪の降り方、草木の種類、村や町の位置、建物のかたちや庭のつくり、人びとの暮らしぶり……どれにも当たり前では済まされない理由があると思うのです。
私は「風景の観察」を行うようになりました。風景をスケッチしながら、です。目に見えるもののそれぞれについて細かく把握ができていなければ、風景は描けません。自然、そこにあるものごとを注視する必要が生じます。知らないこと、分からないことに気づきやすくもなります。それらについては絵を描き上げてから調べ、分かったことは絵のかたわらに順に書き添えます。
そのように、場所をかたちづくる様々なものごとや、それぞれのものごとの間にある関係を、私は読み進めます。「風景を読む」ことから、私のデザインは始まります。

2009-07-10

畑を囲んで建つ郊外の小さな農家

  • home
  • tuad
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • YouTuve

一昨年、東京郊外に小さな農家を設計した。
住所は茨城県守谷市。一見、はるか遠くのように感じる住所だが、実際はつくばエクスプレスで秋葉原から35分でしかない。
お施主さんはごく普通のサラリーマン。定年退職まであと5年あって、都心のオフィスまで通勤しなくてはならない。定年後はがんばり過ぎない程度の農家をやってみたいと思っている。映画も観たいし、美術館にも行きたいので山奥にひっこむわけではない。都会のインフラは享受しつつ、同時に喧噪を離れた田舎の空気も味わっていたい、というわけだ。そこで選ばれたのが守谷という土地だった。
何かを犠牲にするわけでもなく、すべてをバランスよく手に入れる。その力の適当な抜け具合が心地よく見えた。極めて合理的な判断の上で、この場所が選ばれている。いつしか、僕はこんなエリアを「新しい郊外」と呼ぶようになった。それは積極的に、ある目的意識を持って住む郊外。
この家の中心は畑である。畑を取り囲むように家が建っている。土間が畑に着き出していて、収穫した野菜はまずそこに上げられる。地下を掘って引き込んだ井戸水がたっぷり出る屋外の炊事場で泥を洗い流す。土間はそのままキッチンへとつながっている。昔の農家と同じ空間構成だ。
お風呂も畑に面していて、汚れた作業着を着たまま直行。服は隣の洗濯機に投げ込んで、そのままドブン。お風呂は流行のビューバスで、自分が育てている野菜たちを一望しながら湯ぶねに浸かる。都心の夜景ではなく、昼間に緑を眺めながら入るお風呂なのだ。こんな風に、すべてに畑が中心のプランになっている。
この仕事をしながら、お施主さんに気が付かさせてもらったのが、本質的な意味の便利で心地いい生活は、どうしたら実現可能かということだった。答えは「素直さ」。自分の生活のイメージを淡々と見つめて無理せずに必要なものを選択するセンスのようなもの。田舎暮らしでもなく、リゾートでもない。日常の延長線上にも両者を満たす環境が存在している。都市と地方の中間領域、「新しい郊外」にはまだまだ魅力的な風景が広がっているのだ。
このお施主さんは、畑の一部に堆肥を溜めて肥料にしている。もちろん生ゴミもすべて肥料。エアコンは基本つけない。そのかわり風通しと断熱性には気を配った。そのどれもが特別なことではなく、畑の維持と自分たちにとっての快適さの追求という、ごく素直な必要性から導かれたものだった。僕はその「素直さ」を、そのまま素直にデザインしただけ、そしてできたのが、この「郊外の小さな農家」。

2009-07-10

オフィスと環境の新しい関係

  • home
  • tuad
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • YouTuve

これは昨年設計したオフィス、東京湾の運河沿いの倉庫を改造したものだ。
この場所をオフィスとして選んだのは、静岡を拠点に靴の製造及び輸入を行う「シードコーポレーション」の新ブランド「THE NATURAL SHOE STORE」。企業コンセプトは「身体に気持ちよく、環境にやさしい靴」。その思想と勝ちどきの水辺の空間はとてもマッチしているように思えたのだ。ファッションの中心からはるか離れた場所だったので、常識ではあり得ない立地。しかし社長は僕の意見を即座に理解してくれた。ここでは、いわゆるオフィスのような空間ではなく、圧倒的に居心地のいい、リビングルームのような風景をつくろうということになった。
巨大な倉庫をオフィス兼ストックとして使うにはさまざまな困難が伴う。まず空調が最大のネック。断熱もない巨大空間をまともに空調すると、とんでもない光熱費がかかる。そこで考えたのは、倉庫の中にガラスのキューブを置いて、その中だけを空調すること。もちろん、環境負荷の低い環境にしたい。無駄な空調は避けたかった。
4トントラックも出入りする幅6mの巨大なドアを開ければ、キューブの周りはほぼ屋外のような環境だ。だが床全面にフローリングを敷きつめ、裸足で歩かせることで、人は室内と認識する。内と外の中間領域をつくることで庭のようにも、巨大なリビングのようにも感じることができる。
ガラスキューブがゴロンと置かれ、そこを中心に、「水辺のテラス」や「半屋外のラウンジ」にデスクやミーティングテーブルが散在する。人々は、時に寝ころびながら、時に運河の風や陽を浴びながら仕事をすることができる。その空間はエコロジーやカンファタブルをコンセプトに掲げる企業の思想を体感させる表現媒体になっている。オフィスはメディアでもあるのだ。
そもそもオフィスって何だろう? そこは新しい発想や物事を生み出す場であり、僕たちが人生のかなりの時間を過ごす生活の場でもある。だとするならば、そこは心地良く、創造性に溢れていなければならない。
かつては、なんとなくデスクに座っていることが働く風景だったかもしれない。しかし、多様化する職種、流動化する勤務形態、コミュニケーションツールの進化、そして働くことの目的自体の変化……。それらは働き方を決定的に変化させている。働き方が変われば、その環境も変わるはず。しかしオフィスはずっと四角い単調な箱のままであり続けていた。この勝ちどきのオフィスは、そんな問題意識に対する、ある一つの解答のようなものだ。

2009-07-10

「新しい郊外」の家

  • home
  • tuad
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • YouTuve

昨年末、僕が房総の海辺に建てていた「房総の馬場家」(すなわち自宅)が竣工した。このプロセスは、僕の環境や身体に対する、ここ数年の意識の変化そのものだ。なぜ房総に土地を買い、住み始めようと思ったのか?
それまで、僕は賃貸派。一生、賃貸マンション暮らしでいいと思っているタイプだった。都心にフットワークよく住む、それが合理的だと信じて疑わなかった。しかし最近、都会の喧噪に20年間も曝され続け、体内に少しづつ悪いモノが蓄積されている感覚を感じ始めていた。このまま都心生活だけでいいのか? それって本当に豊かなのか? そういった危機感に近い疑問を抱き始めたのが2年前。40歳の足音が聞こえるようになったある日、東京から1時間半、外房の海辺に魅力的な場所を見つけてしまった。土地の値段は同じ時間距離の湘南の1/10~1/20程度。300m歩けばサーフィンのできるビーチが、ドーンと広がっている。
とはいえ、仕事の中心は東京。毎日通わなければいけないし、まだバリバリ働きたい。そこで気がついたのが、「新しい郊外」という概念だった。
それは仕方なく住むベッドタウンとしての郊外ではなく、積極的に目的意識をも持って住む郊外。僕の場合の目的は、海とサーフィン(引っ越しを機に始めてた)、そして自分や家族と向き合う時間。
馬場家(夫婦と子ども二人)は、房総に自宅(この家)、都心に小さなマンション(こっちが別荘)を借りて、ダブルハウス生活をしている。仕事場まで一時間半なので十分通勤圏。でも忙しいときは都心の部屋に帰る。ローンと家賃を合わせても、都心部の80~100平米のマンションを借りるのと同じくらいだ。
1月14日に、この家ができるまでのプロセスを書いた本が出版された。ちょっとした気づきから家を買ってつくるまで、それに至った家族の経緯、そして僕の考える都市論を書いてみた。特徴的なのは、土地を買ったり、家を建てたりすることに対する、謎や微妙な部分を、あえて全部書いている部分だろう。小さな設計事務所の経営者が果たしてローンが借りれるのか? それはいくら? そのためにはどうやったらいいか。土地はどうやって探し、買うのか?
また、家を建設する場合は何がポイントなのか? どうすればコストを抑えられるか。見積もりまですべて公開している。今まで、建築家も不動会社も銀行も、曖昧にしていた部分を、全部、ガラス張りにしてしまった。勢い余って、家のデザインまでガラス張りにしてしてますが・・・。
とにもかくにも、僕はここで生活を始めた。

「新しい郊外」の家

2009-07-10

神田、日本橋エリア再生/CETの実験

  • home
  • tuad
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • YouTuve

今、東京の東神田や日本橋の下町エリアが、ギャラリーやアトリエの集積地に変貌しているのをご存知だろうか。ファッションやサブカルチャーの雑誌では、青山、六本木と並んで特集が組まれるほどになっている。僕が事務所を日本橋に移した2003年頃、ここは典型的な問屋街で、ギャラリーなど一つも存在しなかった。それから5年。なぜ街は変化したのだろうか?
最大の理由は、「Central East Tokyo(セントラル・イースト・トーキョーの略、以下 CET)」というアートイベントが起こったことだ。このイベントの最大の特徴は、街に点在する空き物件を2週間だけギャラリーにしたこと。企画をした私たちは地元の物件オーナーさんたちに、こう頼んで回った。
「一週間だけタダで貸して下さい。多くの人がアート作品と一緒に、あなたの物件を見に来ます。もしかすると、この空きビルを気に入って借りてくれる人もいるかもしれません。例えばNYでは空き物件がギャラリーになって、街が再生した例があります。僕らは東京のこのエリアで、そういう試みをやってみたいのです」
最初は驚かれたが、回を重ねる毎に協力してくれるオーナーさんも増えてきた。アーティストと物件オーナーという普通ではつながりにくい人々が、結果として街を変化させるために協力することになるのがおもしろかった。
実際、問屋街の倉庫とギャラリーは、必要とされている空間の性質が似ている。ガランとして、何もないのが重要だからだ。青山周辺でギャラリーを借りようとすれば、一週間で数十万円という額が飛んでいってしまう。若いアーティストにとっては大きな負担で、それがタダになるこのイベントの仕組みは魅力的だ。オーナーにとって自分のビルの一部を、短期間とはいえ得体の知れない人間たちに貸すことは多少心配なことだとは思うが、ただそれをきっかけに観客の誰かがその物件を気に入って、借り手が見つかるかもしれない。イベントに参加した来客者は、アート作品を見て、物件を見て、そのプロセスの中で街を体験することにもなる。それはアーティスト、オーナー、観客の三者にとってハッピー。もちろん街にとっても。
このイベントを6年間続けたことで、街はいつのまにかアートエリアとして浸透し、今ではたくさんのギャラリーが集まっている。小さな運動が街の様子を大きく変えようとしている。この仕組みは、東京だけではなく、地方都市でも援用可能なのではないかと考えている。
僕が山形に来てチャレンジしているのは、まさにこれ。
七日町でも同じような展開、そして変化が起こせないだろうか。「山形R不動産」というウェブサイトをきっかけに、新しい動きが今、始まろうとしている。

2009-07-07

山形R不動産リミテッド

  • home
  • tuad
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • YouTuve

「山形R不動産」のはじまり

昨年から、僕が東北芸術大学で教え始めたのをきっかけに、山形の街なかを対象にして「山形R不動産」を始めることになった。一見「東京R不動産」の兄弟サイトで、地方版R不動産。今までも、福岡、金沢でもやってきている。しかし、山形の場合はそれらと決定的に違う部分がある。ただし、それは不動産紹介サイトではなく、街なかのライフスタイル、楽しみ方を表現するメディアに特化しようとしているところだ。
それには二つの理由がある。まず大学が主体なので不動産業を営めないこと。そしてもうひとつ、空き物件が人口の割に多過ぎることだ。最初、学生たちに「魅力的な空き物件を発見してこい!」と号令を掛けた。一ヶ月後、街なかの空き物件の場所がマーキングされた住宅地図を彼らは持って来た。僕はそれを見て驚愕する。「空き物件だらけじゃないか・・・」。そこには地方都市の現実があった。「山形R不動産は発見ではなく、街に対して、新しい住み方自体を提案し、交流人口を増やすエンジンにしよう」そう方向転換した瞬間だった。

まちなかを「住む」エリアとして捉え直す

今、日本じゅうの商店街は空洞化に苦しんでいる。同時に、さまざまな活性化案が考えられているが、どれもなかなかうまくいっていない。それは商業地を、商業の再生で再生しようとしているのに無理があるのではないか?
僕らの提案は、まちなかを「住む」エリアとして捉え直すこと。
なぜ、そこに考えが至ったか、その理由は案外単純な理由だ。学生たちに「郊外に住みたいか、まちなかに住みたいか?」と訪ねてみると、「そりゃ、飲み屋もバイト先も近い街なかも、住む場所としてはありだと思います。でも、住む場所がないんです」という答えが返ってくる。しかし、実際のまちなかを眺めると空き物件はたくさんある。問題なのは、それらがすべて店舗や事務所で、「住む」ための場所ではないこと。要するにミスマッチ。本来、ニーズがあるかもしれない居住機能が、まちなかには用意されてはいない。交流人口が増えない一因はここにあるのではないだろうか。

山形への小さな実践のスタート

どうせ空いたままにしておくなら、街のためにも、安く学生や若者の活動のために貸して、一肌脱いでくれる有志だっているかもしれない。みんな、再び街に若い人々の声が戻ってくることを望んでいるのだから。実際、空き物件をギャラリーやショップに改造したい人間たちはたくさんいる。しかし、イニシャルコストや保証金の存在が、それにブレーキをかけている。

まずは行動ということで、山形R不動産チームは、古い空き旅館を再生してアーティスト・イン・レジデンスや長期滞在型の宿、そして学生たちが運営するギャラリーをつくるプロジェクトが動き出した。旅館のオーナーさんを見つけ出し、強引にプレゼンテーションし、さらに予算が足りなかったので地元の銀行にも融資のプレゼンを行った。地方都市が強いのは、そのコンパクトさ。提案は瞬く間に承認され、3月に着工してした。コンパクトゆえに関係者が少なく、ものすごいスピードで結果が出るのだ。この古い旅館では、学生たちが設計し、そして壁のペンキを塗ったりしてチュ-ンナップした。自分たちが使う空間を、自分たちでつくって、それを街に定着させようとしている。山形への小さな実践のスタートだ。

建築環境デザイン学科
馬場正尊研究室

 


三沢旅館キッチン Before


三沢旅館キッチン After


廊下 Before


廊下 After


ダイニング Before


ダイニング After


ベッドルーム Before


ベッドルーム Before

山形R不動産リミテッド
「街中の空き物件再生中!_元旅館を学生が再生」の記事一覧
「街中の空き物件再生中!」ブログの中で、古い空き旅館を再生する様子を詳しく読むことができます。