うんどうのオフィスアワーも今年度後半の部スタートということで、柳川郁生がデバイスづくりをしてみました。
だいち・たいよう・ほし組&それ以下共通のコースだったので、なんとなくしぼりきれないところはありましたが、私なりに願いを込めて(ねらいをもって)つくってみました。
つぶやきカルテ2010(10月28日)
1.どんなことをしていましたか(子)
スタートは「支える」感覚です。
渋滞した列で待っているときも、実は楽に「支える」感覚を見つけるチャンスかもしれません。
自分の肩にスッと体重をあずけることで、軽く「支える」ことができる感覚をここで見つけてほしいですね。
そして腕だけではなく、背中やお腹、脚なども「支える」ために協応してくると、この前転への導入がスムーズにいきます。
腕だけで支えようとすると疲れるし、背中が一緒に支えないとお腹がでてからだを丸くできないので、前転がスムーズにできません。
そんなことをくりかえし体験しながら運動ができ上がってきます。
そしてその「支える」感覚を腕に残したまま、腕支持跳びです。
もうこれもみんな勢いよくできますネ。
さらにはその「支える」感覚と勢いをつないで開脚跳びをなんてことに結びつけようと、あえてノーマルな形で跳び箱を置いてみました。
だいち組ぐらいになったら、より具体的な目標としてこんな工夫に取り組んでみてもいいかと思います。あくまでも自分の運動感覚と向きあうという意味で……。
次は「共通演習「芸術と子ども」 後期 第1回ワークショップ」で紹介した『毒キノコ返しの術』です。
今回はオリジナルとは変えて、間に踏み切り板を設置しました。これは、毒キノコ という障害物があると、どうしても運動が止まってしまい、運動のリズムのようなものが打ち消されてしまったりします。そこでジャンプ・前転、ジャンプ・前転とくりかえすことで、軽やかなリズムをつくりたいと考えたのです。
これをそばで見ていたはなこさんには、それが見えたのではないでしょうか。
そしてコーンを使ったジグザグ走。
体重を傾けて走る心地よさを体感できるとより楽しくなってきます。平均台を使ったバランスもいいけど、こんなふうに動く中で自分のバランスをうまくコントロールするということも大切ですネ。
そして「走って」いって「跳ぶ」。
これもこども芸大の子どもたちはみごとに運動をつなげています。「走る」いきおいをそのまま「跳ぶ」という感覚につなげています。この感覚は、体操教室のように何分も並んで何回かしかできないようなやり方では、なかなか子どもたちも見つけられないのではないでしょうか。
そういった意味で、もっと渋滞しないでこのデバイスに子どもたちが跳びこんでこれるような工夫を必要ですネ。
そして「ポンクリン」みたいな運動感覚の発見を子どもたちにもしてもらいたいと思います。
最後はとにかく全身を使って動いてほしくて、マットの壁をつくりました。
鬼ごっこもそうです。ギュッと抱っこされた状態から逃げだすのもそうです。かけっこも、ボール投げも、フラフープも、からだの一部を動かすのではなく、全身が総動員して動いた時に心地よさがあります。
そんな感覚と、子どもらしい興奮をここでつくれたらと思って設置してみました。
それからこれは、わたしのデバイスを見てまきこさんがつけ足してくれたものです。
なかなか「支える」という感覚と向きあってくれなかった男の子たちが、改めて「支える」感覚と出会うよい機会になったのではないでしょうか。
だから最初のうちはいい加減なやり方だったのに、少しずつだったり、こっそりだったりしながらちゃんとやるようになってきたのでしょう。
2.どんなこと(関わり)をしていましたか(母)
このしっかりと「支える」感覚を習得することで
さまざまな運動感覚と結びつけてこんなことや
こんなことができはじめるのです。
子どもたちの運動感覚の感性は、この手のひらのように広がりつつあります。
ですから、子どもたちの運動を既成の型の中にはめ込むのではなく、緩やかにそして時には刺激的に、いろいろと試しながら工夫して共につくっていきましょう。
4.次回のオフィスアワーに向けて
またお母さんたちと子どもたちの様子を見ながら、緩やか〜に関わっていきます。
3.運動面において気づいたこと、変化はありましたか
今回のお母さんたちには、わたしのつくったデバイスについて説明を聞いてもらい、その中で子どもたちがどんなふうに動いていくのかを見てもらいました。
するとあきこさんから「一つ一つのコースに意味があって」というコメントがありました。学生たちの授業でいつも言うことですが、“動きの形だけが見えていてもダメで、なぜそうなっているのか、どんなねらいがあるのかという動きの意味が見えていないといけないんだ”ということです。たとえばバドミントンでシャトルをうつときに、左手が上に挙がります。だからといって意味も分からず左手を挙げただけではその動きは役に立ちません。そんなふうに動きの意味が見えてきたり、その動きを引き出すためのコースの意味が見えてきたということは、かなり運動の理解者になってきたということではないでしょうか。
そしてかずよさんのように「自分の体重を体のどこに分けてバランスよく保てるのか私もやってみることで伝えられた気がします」と動きの意味を自分が理解することで子どもたちにも伝えられるようになるのです。
また今回はじっくりと子どもたちの運動にまなざしを向けることもできたので、えつこさんのように「体がフワッ⤴っと浮いて「体が浮く」という感じが見られた!」とその運動感覚を共感することができたり、いづみさんのように「お友達のうんどうを見ていた後では「こうやるんだ」「こうするといいかも?」と自分の中でも気づいたようで」とか、じゅんこさんのように「少し助走してとか勢いをつけてすると何か出来ちゃうかもと気がついたような感じです」といった感じで、子どもたちの意識や志向を感じとることができたりしていたようです。
こんな感じのコメントがけっこう鋭いっ!てことにお母さんたち自身が気づいていなかったりするんですよね(笑)
ということで、今回のことをふまえてぜひ次回はいろいろと試行錯誤をしながら工夫をしてもらいたいと思います。
とにかく色々と試すことで、なにかが見えてきたりします。
ちょっとした料理の工夫といっしょで、すご〜く気にいってもらえたり、逆に気づいてもらえなかったり、でも実は気づかないうちにしっかりと栄養をとれていたり、嫌いだったものが好きになっていたり、そんな変化を見つけた時に「うふふ」と思うものです。
「支える」・「支える」・「支える」・「支える」・「支える」
ふーっ やっとブログアップです。
なんか日増しに文章が長くなります。
次回こそはもっとエコでいきたいですネ。
(ただ今11月2日0時21分 とりあえずアップ完了)
つぶやきカルテ2010(10月21日)
「親子・運動の日」も終わり、今年度のオフィスアワー後半がスタートって感じです。
1.どんなことをしていましたか(子)
ここのところ男の子はボールを使った遊び、女の子はフープを使った遊びから始まります。
それと肋木で遊ぶ子どもたちもいます。
お母さんと一緒に縄跳びをする子もいました。
なんだか今日はいつにもましてお母さんと子どもたちがべったりした感じです。
これはこれで良いことですね。
そしてしばらくたつとかがりちゃんがやってきて、逆立ちの準備を始めました。
するとほかの子どもたちも集まってきて逆立ち練習の始まりです。
ただまだ「支える」というより、逆さまになるということが優先されています。
まずはそれでもいいのですが、ちょっと「支える」感覚と背筋を使って背中を引っ張る感覚を誘発してみようかなということでこんなことをしてみました。
お母さんたちは「支えて」とか、「伸ばして」とか、「頭を中に入れて」とか、一生懸命運動のイメージを伝えています。
それが伝わる関係ができあがってくるのを見るのも楽しみです。
そして言葉ではなく、感覚を通して理解してもらえると伝わってきます。
この関係は、指導者としての私が選手である子どもたちを指導するときにじっくりじっくり時間をかけてつくっているものです。
そしてそれはこども芸大の子どもたちとの間にもできてきたりします。
するとがっくんみたいな感じで、すっと私の意図を理解して動ける関係が生まれてきたりするのです。
(なんて書いているうちにただ今10月23日の午前1時24分。内村航平くんが世界体操競技選手権大会で金メダルをとりました。オメデトウ。)
そしてこちらではコースづくりも始まりました。
まずはジャンプ!
そして『お花のジャンプ』
4つ足でフープをくぐって
跳び箱をとびこえて
坂道を転がると
ミッキーマウスに会えました。
2.どんなこと(関わり)をしていましたか(母)
今回はまったりと、べったりと親子の関係で過ごしていました。
それでもいいのですが、ここでは子どもたちに「うんどう」の志向性をつくりたいと願っています。
子どもたちがもっともっと自分自身の動く感じ(運動感覚)」に志向性をもって取り組めるようにするためには、ちょっと厳しいことを言うと遊びと運動に区別をつけなければいけません。
その区別を理解したうえで遊ぶことができれば、それでいいのです。
とにかく子どもたちの瞳の向こうに運動がある、子どもたちの意識の中に運動感覚がある、そんな世界をつくりたいと思っています。
なんて言うと難しく感じてしまうかもしれませんが、要するにお母さんたちには子どもたちの遊び相手ではなく、理解者になって欲しいということです。
まあそのへんはまたオフィスアワーの時間の中でお話をしながら、ということで……
3.運動面において気づいたこと、変化はありましたか
だいち組の女の子たちのなかには、だいぶ自分の運動感覚と向き合うことができるようになった子がでてきましたね。そうすると、コツコツと一つの運動に取り組んだりすることができます。
そう、さくらさんが願う「支えている、はずんでいる、という感覚を自分で自覚できる」ようになるのです。
まだ、たいよう組の子どもたちはそれに気づいていませんが、お母さんたちで優しく誘(いざな)うことができれば、もうすぐで出会うことができるはずです。
そう、くじけて泣いてしまっている姿は、きっとなにかが違うということに気づき始めた証です。運動の中に違和感を感じ始めたということ、自分自身の動きが思い通りでないと感じ始めたということ、それは運動に関する感性が働き始めたということです。
ですからこれから後半のこの時期が、もしかしたら来年にむけて重要な時期かもしれません。なんて言ったら大げさかもしれませんが、なんかこのままではこのオフィスアワーの時間がもったいないと思っています。
4.次回のオフィスアワーに向けて
ということで、次回は柳川が少し子どもたちと、お母さんたちに、願いを込めてデバイスを考えてみようかなと思っています。
なんとなく「親子・運動の日」のあとだからか、子どもたちはコースに自然とストーリー性をもたせて構成をしていたようです。
恐るべし、です。
つぶやきカルテ2010(9月30日)
またしばらくあいだが空いてしまいましたが、オフィスアワーの再開でした。
1.どんなことをしていましたか(子)
お母さんたちと、というよりはむしろお母さんたちが夢中になってフラフープに挑戦です。
できるようになるための工夫(動感志向体験)や、できた時の心地よい感覚を体験することはとても大切です。その嬉しさを子どもたちに伝えたいと願うことが、うんどうの世界を創ります。
お母さんたちが運動のデバイスを準備しはじめると、自然と子どもたちも協力しています。だれに言われるともなく、参加しています。
ここがどんな場なのか、自分たちがここをどんな場にしたいのか、そういったみんなの願いのようなものが見えてきているということですよね。
そしてお母さんたちが鉄棒を準備してくれました。
その先に平均台渡り。
そこから踏み切り板を使って、ジャンプ、ジャンプの連続から
ボールタッチです。
そのあとは、高い台に跳びのってからの
跳び下りジャンプでお母さんの手にタッチです。
そして角を曲がったところで、今度はブリッジ返しです。
その先には跳び箱が置いてあります。
そして次のコーナーをぬけてコーンのまわりを走り抜けると
こんなふうに跳び箱が置いてあります。
そして最後のコーナーをぬけると、こんなふうにフープを使ってケンケンパです。
2.どんなこと(関わり)をしていましたか(母)
お母さんたちの手助けが、良い加減になっています。一人でやっても大丈夫、ちょっと危ないけど体験するにはちょうどよい危険度なんてことを見極められるようになってきています。つまり目の前で行われている運動を質的にとらえられるようになっているのです。
だから子どもたちの運動を見ていて、思わず「スゴイ!!」という声がでてしまったり、「しなやかだよねー」なんていう運動の質を感性的にとらえた言葉が出てきたりしています。
「しなやかだよねー」という言葉は、絵画や景色を見て「きれいだよねー」と感じる感性と同じことです。「スゴイ!!」という感動も、作品や自然の景色と出会って圧倒される感覚と同じものだと思います。
そんな感覚が、お母さんたちの中に生まれてきたり、再生されてきたりしているのではないでしょうか。
そしてこんな重いマットも、お母さんたちは厭わずに運んでセットします。
するとついに
お母さんたちがセットするコースが、おそらく今年度初めて自然と体育館の中央のラインを越えました。これは、いままで「コースという枠の中」で子どもたちの運動を考えていたものが、子どもたちの運動を考えていたら大きなコースになったという変化が起きたということです。「記念すべき第一歩がこの日踏み出されました。」なんてお母さんたちに伝えましたが、子どもたちののびのびとした運動を引き出すためにはどれぐらい広いスペースを確保すればよいのか、ふわっと空中に跳びだすためにはどれぐらい助走の距離が必要なのか、そんなことを探ってみるのも今後の課題にしてみてください。短すぎず、それでいて長すぎない、そんなちょうど良さをお母さん自身の動感志向体験を通して探ってみると面白いですよ。
3.運動面において気づいたこと、変化はありましたか
支えるという感覚がかなり習得されてきました。
この感覚が鉄棒や、跳び箱での運動にもひろがっていくと、やがてだいち組になった時にもっともっといろんな運動ができるようになっているはずです。
跳び下りた時の着地の様子に注目してみてください。
はじめのうちはベチャッとつぶれてしまうような着地だったものが、うまく弾むように受け止められるようになってくる(運動弾性)と
この感覚が連続ジャンプをするときの感覚とつながってきます。
跳び下りるときの高いジャンプではなく、着地の時の柔らかい受けとめの感覚に注目してみるのも面白いですよ。
それからお母さんたちのカルテの中に、順番を守ったり、前の人が終わるまで進まないで待ったり、鉄棒で前の人の運動がぶつからないように避けたりなんてことが書かれていたり、先生(私)の動きを見てまねするようになったなんてことが書かれています。
順番を守るようになったり、前の人が終わるのを待つようになったのは、この先に自分が行う運動を予期することができるようになったということです。そのためには今動き出すのではなく、前の子がいなくなってからの方がやりやすいということを理解したということです。
そしてこれが、やがて「運動」のなかで『過去把持』や『未来予期』といった今動いている運動というものは、過去の感覚と未来の感覚を感じとりながら行われているのだということと結びついていくのだと思います。
それから人の動きを理解できるようになるということも、これから少し意識して取り組んでいってみたいと思います。私の動き、友だちの動き、ちょっと年上の子どもの動き、そしてお母さんの動き、いろんな動きがこの場には存在します。ぜひぜひそれをたくさん利用していきましょう。
4.次回のオフィスアワーに向けて
子どもたちが感じている運動の楽しさを聞きだしているお母さんのコメントが増えてきました。どんどん子どもたちの運動に関する志向性が理解できるようになってきたのだと思います。というより一番理解できるのがお母さんかもしれませんが……その理解をもっともっと運動感覚の世界へ近づけていきたいなと思います。
まずは「親子・運動の日」がありますが、それが終わったらまた半年かけてじっくりじっくり取り組んでいきましょう。
あせってもしょうがない。1年、2年、3年かけてその時その時の喜びを見つけていくのが私のやり方かもしれません。
ということで、時間がかかってスミマセン。