つぶやきカルテ2010(12月16日)
うっすらと雪景色の寒い朝でしたが、「うんどうのオフィスアワー」のころにはすっかりと青空が広がっていました。
さあ、年末最後のオフィスアワーです。
1.どんなことをしていましたか(子)
なかなかみんな集まってこないので、ゆっくりとしたスタートになりました。
どうなるのかな?と思ったりもしたのですが、前回のデバイスを自然とアレンジしながらコースづくりが始まっていった感じです。
「スラローム」
子どもたちの目線になってスタートラインに立って見ると、どんな並べ方がジグザグに走りたくなるような気持を引きだせるのかイメージしやすくなりました。
トン・トン・ターンとリズムをつくっての「横跳び」
前回から継続させることで、運動のねらい(願い)が子どもたちに少しずつ伝わっていきそうです。
鉄棒の「前回り」
ちょっとずつ、ちょっとずつ鉄棒と仲良くなってください。
連続の「支え跳び」
支えてフワッとなった時の感覚が、少しずつ子どもたちのからだに理解されてきたようです。
だから見た目は地味で単純な運動ですが、熱心に取り組めるんですね。
するとこんな感じで跳べちゃったりもしました。
そしてお母さんたちは大変ですが、壁登りは人気です。
全身を使った感覚は、外遊びが制限されてくる冬の時期に大切な運動かもしれませんね。
それからここのところ継続的にコツコツと倒立に取り組む子どもたち。
これが“うんどう”と向き合う意識の始まりですよね。
この子どもたちの意識と意欲を大事に大事につなげていきたいと思っています。
そしてきっとそれはもうすでにお母さんたちにある‘願い’でもありますよね。
やはりなぜか「後ろ返し」
やはりこうなってしまうのならもう少し肘をピンと伸ばした状態でできるものをつくってあげたいですね。
(ちょっと中途半端でモッタイナイかも)
2.どんなこと(関わり)をしていましたか(母)
このお母さんたちのまなざしが、きっと子どもたちの‘逆立ち’をやがて‘倒立’へと誘ってくれるでしょう。
そしてこうやってお母さんたちが子どもたちの運動に寄り添っていくことで、だんだんと『まなざしカルテ』の記述の中にどうやって子どもたちが“運動の感覚”を発見していくのかがつづられています。
すばらしい観察と記述の力が備わってきています。
そしてさらに、そのことをもっともっと実証するために、柳川郁生はまだまだ勉強をして力をつけなければいけないと感じてしまいました。
3.運動面において気づいたこと、変化はありましたか
じゅんこさんが言っていましたが「少し後退してしまった」。
そう、子どもに限らず覚えたての運動はまたできなくなってしまうことが大人になってもたくさん現象として起こります。
やっとできた〜と思ってまたそれを再現しようとしても、さっきのようにやってみようと思えば思うほどどうするんだっけ?と分からなくなってしまう。またさっきできたことに新たになにか新しい感覚をプラスしようとすると、いっぺんに運動のやり方がすっとんでいってしまう。そんな経験ありませんか?
「いま私は目の前に落ちてくるシャトルを打とうと思っているんだから、左手の使い方とか、足のステップのこととか余計なことを意識していられないのっ!」って感じで、それを意識するとからだが硬くなってしまい、今まで楽しく羽根つきしていたのに全くそれができなくなってしまう。
それを運動学では『意識化による分裂現象』といいます。
なんか後ろ向きなイメージをもたせる言葉ですが、私はこの言葉が大好きです。つまりこの『意識化による分裂現象』というのは「運動の覚えたてのころにこまかいことを意識するとうまくいかなくなってしまうことがありますよ」、「それが覚えたてということですよ」と考えるからです。だからうまくいかないときは「あ〜、まだ意識化による分裂現象を起こしてしまう段階なんだ。だったらもう少し余計なことを意識しないで、じっくりと今の状態を試していこう」と思うのです。
そうすると一度できなくなってしまった運動がまた再構築される『再統合』というものが起きます。この『再統合』によって再びできるようになった運動は、強い意識の記憶に裏付けられるためとても壊れにくい運動としてからだに定着します。
だから‘少し後退した’ということは覚えたての頃のあたりまえの特徴であり、しばらくして運動のやり方を獲得した時にとても得をします。
なんとなくできちゃった人と、苦労をしてできた人、どっちが得?と言われたらどっちも得と考えてしまえばいいということでしょうか(笑)
いやむしろ柳川郁生の場合は、後者の方が得と考えています(個人的に)。
4.次回のオフィスアワーに向けて
そしてだいち組を意識して、こんな感じでたてよこに跳び箱をつなげて開脚とびのきっかけをつくってみました。
今回もデバイスつくりと、大きな子ども(お母さん)と子どもたちが体育館の中で迷子になることなく「うんどう」に取り組んでいました。取り組みと言ってもまじめにやるというのではなく、いっしょに食卓に着くといった感じですね。子どもたちがおいしそうに食べているときは笑顔で見守り、残さず食べたり、嫌いで食べられなかったものにも箸をつけたらほめてあげたり、そしてそんな様子を見守りながら次にご飯をつくるときにはもっと……とか、もう少し……なんてイメージをもってみる。そして食卓から離れて遊ぶ子どもに、あそこに座って食べなさいと外から指示するのではなく、こっちにおいでよと中から誘ってくれる。そんな雰囲気がいいんじゃないでしょうか。
それからこのオフィスアワーの時間を、お母さんたちがどんどんと広げていってくれます。
かおりさんも、もう体育館に来る前からすみれちゃんと、しんくんとオフィスアワーをスタートさせてくれていました。
食べる話ばかりで申し訳ありませんが、「今日の晩ごはんはお楽しみ〜♡」というのもいいけれど、「今日は〜、買ったばかりのタマネギをこまかく刻んでハンバーグに入れて〜、まあるく輪切りにしたニンジンとホクホクに温めたジャガイモを添えて〜……、スープは……」なんていっしょに想像しながら帰ってきたらなんかいつもの晩ごはんが楽しみになってきませんか?
なんか最近そんなふうに準備してくれているお母さんたちが増えたように感じます。
そしてこの時間のあとも「うんどう」をもち帰って、お家や公園など身近な生活の中でもどんどん運動の体験を広げていってくれています。
そんなお母さんたちのコメントが増えてきました。
それからそれから、もっとほめたいことがありました。
えつこさんやまきこさん、かずよさんなど、まるで選手とコーチのような関係になっていたりします。
単なる指示で運動をさせるのではなく、お母さん自身が思ったこと、感じたことを子どもにやらせてみる。そして「ダメだったな」、「違ったな」と思ったら、やめて違うやり方を探してみる。これが指導者としての正り方ではないでしょうか。
悪口みたいになってはいけませんが、指導力のない指導者はよく怒ります。自分のやり方でやってできない子どもは、能力が足りなかったり、努力が足りなかったりと子どものせいにするのです。そうすれば自分の威厳は守られるわけです。
でも私は教えていて「ゴメンナサイ」と謝るときがあります。「あ〜、そうじゃなかったか」と思ったら、また違う方法を探します。すると「お〜!これだ〜!!」といったやり方が新しく見つかり、それが子どもと私の喜びになるのです。
そんな関係も生まれてきていますよね。
いやあ土曜出勤して書きはじめたら、また止まらなくなってしまいました。
本当はもっともっと現場で話したいことなのですが、子どもたちが運動している中でそうじっくり話すこともできないのでしょうがないですね。
でもここのところお母さんたちが“仲良く”相談(話)をするようになってきて、オフィスアワー全体の空気感が変わってきました。決してカーテンを開けて明るくなったからではないですョ。共通演習「芸術と子ども」の第2回ワークショップのブログでも触れていますが、準備する側が仲良くなるということがとても重要ですね。
そんな仲間の輪の中に私もどんどん入れてほしいと思っています。
なんだか「これでいいのかな〜……」なんてコソコソ自信なさそうに相談しないで
「せんせ〜ぇ、こんなんでどう?」みたいな感じで……
というわけで、また来年みんなといっしょに仲良く『うんどう』できることを楽しみにしています。
「良いお年を」
つぶやきカルテ2010(12月 9日)
週末は金曜日の午後は山辺町の作谷沢小学校へマット運動の指導に行ったりしていたので“つぶやく”ひまがありませんでした。
また山形市のジュニア体操選手権大会もあったので、大会委員長(つまり、会場設営から進行などもろもろの雑用係)を務めなければいけない柳川郁生は、土曜日の朝9時から夜7時まで体育館ではたらき
日曜日の大会本番は、体操を教えている22人の子どもたちを8部門の種目に出場させたため、監督役と大会運営の同時進行で朝8時から夜8時までずっと体育館ではたらいてました。
そしてわが家の息子2人も出場させたので、父兄としての役目もあり“つぶやく”ひまがありませんでした。
でも、子どもたちと楽しい時間を過ごすことができましたよ。
でも、ここでも子どもたちと楽しい時間を過ごすことができましたよ。
ということで少し遅くなりましたが『つぶやき』ますね。
1.どんなことをしていましたか(子)
壁のよじ登りが人気でした。
全身を使ってクリアする感覚がチャレンジしたい気持ちを生むようで、だいち組(5歳児)にとっておもしろいデバイスだったようです。
スラーロームも、からだの重心をなめらかに倒しこむ感覚を楽しめている感じになってきました。
その感じ、ほし組(3歳児)はこれからですネ。
支えて跳びこえるデバイスも、少しずつ子どもたちに認知されてきたでしょうか?
そしてこんなデバイスがあると、子どもたちはすぐ背中からひっくり返ります(アハハ)
本当はこんなふうにして欲しかったのですが……
ということで次回はうまくひっくり返ることができるデバイスと、支えて跳びこえるデバイスをうまく区別できるような工夫ができるといいですネ。
そしてこんな走る(跳ぶ?)デバイスもありました。
後ろ跳びのデバイスもあり、これがこれから来年に向けてどんなふうに発展、展開していけるのか、ちょっと考えてみたいですネ。
それから、さらちゃんのリクエストで「サーカスの空中ブランコ」があったので、ロープを使ってぶら下がったり
その“振られる感覚”を“振る感覚”へ転換させることを意識して、鉄棒のスウィングのデバイスをつくりましたが、ちょっとさらちゃんには不評でした(笑)
2.どんなこと(関わり)をしていましたか(母)
とにかく今回のお母さんたちは、
みんながデバイスづくりに関わっています。
なかなか一気にお母さんたちの願いが子どもたちには伝わりませんが、
時間をかけていきましょう。
なんかもったいなくて途中でだいち組の子どもたちを引っ張りだして、
母さんたちの願いを伝えようと思いましたが、
うまくいきませんでしたね。
逆にお母さんと子どもたちの間に溝ができてしまった感じで、
ある意味いいヒントが見つかりました。
ということで
またお母さんと手をつなぐことからやり始めてみたら、この「うんどうのオフィスアワー」の原点に返ったように子どもたちの表情が変わりました。
なんかこういう大事な気持ちを忘れてしまってはいけませんネ。
3.運動面において気づいたこと、変化はありましたか
かなこさんが、なおくんに“コツを教えてしまったようで、正直、良かったのか”なんて書いてましたが、お母さんの感覚を子どもに伝えることができたということは良いことだと思います。
私が運動を伝えるときに意識していることは、「ほら見て!ここから見える夕焼けってすご〜くきれいでしょう!?」って感じで自分の運動感覚に共感してもらいたいということです。
ですからお母さんの感覚が子どもに伝わったり、バク転のようすを見て本人の納得できない感覚が理解でき、その次に「よしっ」という運動感覚の共有が生まれたということは子どもの感覚がお母さんに伝わったということで、とても素晴らしいことではないでしょうか。
ぜひぜひもっと子どもたちのうんどうとつながりをもって「ほらね♡」「やっぱり♡」「そうか♡」と顔を見合わせるような瞬間をたくさんつくりましょう。
4.次回のオフィスアワーに向けて
前回の『まなざしカルテ』では、‘書けない’なんて弱音を吐いてるお母さんがいましたが(笑)、ずいぶんとお母さんたちのまなざしは深くなってますヨ。
書き続けると意識するようになります。
意識すると見えるようになります。
見えるようになると書けるようになります。
なんだか一度下がってまた一歩前に進んだ感じのオフィスアワーですが、そこが面白いということで次回もよろしくお願いします。
なんてところでまたすぐお休みですネ。
つぶやきカルテ2010(12月 2日)
前回から少しまったりした感じからのスタートにしたいなと思っていました。
わーっと駆けだす元気な姿もいいけれど、ちょっと落ち着いて自分の“うんどう”と向きあえるように気持ちを準備していくことも大事かなと思っています。
1.どんなことをしていましたか(子)
鉄棒をしたり
こんなふうにジャンプをしたり
くぐるようにつくったデバイスで、こんなことをしたり、コースを中心に運動をしていました。
2.どんなこと(関わり)をしていましたか(母)
そんな合間にまきこさんが、鉄棒とジャンプのデバイスの間にこんなデバイスをつくってくれました。
カラーマットを折りたたんで段々に重ねてあります(工夫)。
どうなるのかなと思っていたら、子どもたちが気持ちよさそうにジャンプ・ジャンプと跳ねてくれました。
思いが伝わったって感じですかね。
それから今回デバイスづくりには、柳川郁生も少し早めに関わっていきました。いっしょに相談をしながら、思いを伝えあいながらつくるといった感じでしょうか。
なので私自身ももっともっとお母さんたちの思いを聞きだせるよう、近づいていきます。
そして私のつくったデバイスの思いも理解してもらおうと思います。
それと今回‘あれ?なんかお遊びアイテムが……?’と思っていたら、いづみさんだったんですネ。
前々から私も考えていたのですが、なんかあからさまにできなくていたことです。
……でも実はもうすでに私もバドミントンのラケットやフリスビーをこっそりと……(笑)
3.運動面において気づいたこと、変化はありましたか
だいち組の子どもたちは、少しずつ自分のうんどうのすがたや、感覚がみえてきたのではないでしょうか。
できた時の感じ、できそうな感じ、そういった“コツ”や“カン”のようなものが運動には重要になってきます。
“コツ”や“カン”といったものが自分の中で生まれたときに、それを感じとれないと運動を獲得したことにはなりません。
そうでないと、ただ単にわけも分からず機械的に運動を反復したり、鋳型化されたロボットのような動きになっていたりすることになるかもしれません。
だから、しのちゃんの「うまくできな〜い」というつぶやきは、“なにかが分かったから言える言葉なのでは?”というかずよさんの発見の通りなのです。
なんかうまくいかないからやめてしまう。それはただ単に子どものわがままに感じるかもしれませんが、うまくいかないことの認識が始まったということですよね。
運動学では、そのまず最初に感じた違和感というものも運動を一歩先に進めるために利用します。
「どこがおかしいんだろう」「なにがへんなんだろう」「どうすればおもしろくなるんだろう」「どんなふうにするといいかんじになるんだろう」と探りをいれる“探索位相“の始めにするのです。
ぜひ子どもたちといっしょに考えて(=動いて)みてください。
するとまきこさんが逆上がりでフワッとなった瞬間に思わず声をあげてしまったのですが、子どもたちがそんな感覚に出会ったときに、くみこさんのいう“得意げな満面の笑みを見せるときがあるので、そのしゅんかんを見のがさないようにしたい”ということもできると思います。
この探索位相という段階まで子どもたちの意識が発展すると、ちょっと空気感の違う運動の場ができ上がるのですが。
まずは“原志向位相”、そして“偶発位相”とあせらずにいきましょう!
といってもただ単に待っているだけではダメですョ。
どうすればこの“探索”の意識が生まれてくるのかみんなで工夫をしながら子どもたちを誘いましょう♡
そんなこともあり、そろそろ自分の運動を感覚的なイメージでとらえられるようにするきっかけとして鏡を置いてみたりしました。
実際に鏡に映った自分の姿を見ることはできませんが、なんとなく鏡を置くことで自分の姿や運動をイメージするきっかけにできるのではと考えたのです。
なんとな〜く見えない自分が見えるようになる。
それが運動感覚との出会いかもしれません。
そんな感じで『側転』を材料にしています。
側転をできるようにするためではなく、運動を感じられるように側転という運動を利用しています。
そう考えれば、「逆上がり」をしたって、「開脚跳び」をしたって、「野球」や「サッカー」をしたっていいのです。
ぜひぜひお母さんたちも一緒に考え、発見しましょう。
〜それからそれから〜
〜さらにさらに〜
今回のオフィスアワーの中で、なおくんがいつにもまして“うんどう”と向きあっているような感じがありました。
そこでバク転に誘ってみると、細ーい身体にある瞬間ス〜ッと力の線が生まれたのを感じました。なんとなく本人も感じたはずです。本当に本当に簡単に折れてしまいそうな線ですが、なんとなく二人の間で感じられた嬉しい感覚でした。
これがたまらないんですネ♡
4.次回のオフィスアワーに向けて
あづさちゃんから‘ジグザグ走る’‘ボールを使ってリレー’なんて希望もありました。
柳川郁生も、お母さんたちの思いを引き出せるように入っていきますので、遠慮せずに伝えてください。
背中から跳べる子どもたちの感覚もなにかに……
〜そしてそして〜
しつこく長くなってしまいましたが、今日かおり(る?)さんに言われました。
「書けない……」
うん、それでいいと思います。
以前もこの“つぶやきカルテ”で書きましたが、たくさん書こうと思うと‘ウソ’を書いたりします。学生たちにバドミントンのハイクリアーという打ち方を見せて、観察記録を書いてもらっているのですが、「え〜と〜」とか「う〜ん」なんて考えはじめたら、ウソをつきだすゾなんて言ってます。
見えていたことだけを正直に書けばいいんです。見えていなければ書かなくていいし、少しずつ少しずつ運動ができるようになるのといっしょで書けるようになってきます。
そしてそれは慣れるのではなく、理解できるようになってくるからです。
だから書けなくても書き続けてください。
そうすると見えてきます。
理解できてきます。
理解できてくるともっと見えてきます。
もっと見えてくると書かずにはいられなくなります。
そして子どもの“うんどう”が変化すると、お母さんの意識も変化するはずですから、そこまでいくと書かずにはいられなくなるはずです(笑)
そんな状態に今すぐではなく、ずっとずっと先になれればいいのですから、正直に書き続けてください。
よろしくお願いします。