うんどう

東北芸術工科大学の柳川郁生の周りで展開する『うんどう』のブログです。
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2013-06-21

創発「うんどうの時間」

6月18日に共通演習「芸術と子ども」の授業で、

学生たちが企画したこども芸大の子どもたちへのうんどうのワークショップが展開されました。

 

その時の学生(高木唯さん)の感想を、みなさんへお伝えしたいと思います。

 

 学生たちがどんな優しい気持ちと、あたたかい愛情をもって、

子どもたちの“うんどう”を展開していったのか……そんな“ねがい”がうまく伝わるといいのですが。

 

 この日のテーマは

「山のおさるさん」

 

 

世界観について

 前回よりも良く伝わっていた。世界観自体は物語の登場人物を踏まえたものから、山にいる猿になった。前回は物語の設定や世界観までもともとあるものから理解しなければならなかった。しかし今回は誰でも知っている猿という生物の一般的なイメージを持ってきた。だから上手くいったのだ。

 猿になった理由として、第一回のワークショップで子どもたちがある学生を猿というキャラクターとして見ていたからだ。もともと子どもたちが作り出したものをそのまま使うことで、よりスムーズに世界を構築することができると考えた。

 

デバイスについて 

(注:ここにこめた“ねがい”が大事だと思っています)

 

①   跳ぶ:ロイター板とマット 

 

 山を模したデバイス。少しずつ高く設置されていくロイター板四枚を跳んで進み、マットの敷かれたステージ台に跳び乗って坂を転がり落ちる。

 ステージ台に跳び乗るには少し高すぎたようだ。なんとかよじ登るといった風な子どもがほとんどだった。しかしその少し難しいことが子どもたちにはちょうど良かったように思える。

 

 

 どうにかしてステージ台に跳び乗ろうと、ロイター板の上で何度もジャンプしていた子どもがいた。最初はあまり高く跳べなかったのがどんどん高く跳べるようになっていく様を見れた。身体の動きはひざが曲がるようになっていき、足首が滑らかに動くようになっていっていた。結局跳び乗ることは叶わなかったが、その過程を見ることができたのは十分な収穫である。

 

②支える:鉄棒

 谷を模したデバイス。鉄棒にぶら下がって谷を越えて行く。

 

 

 恐怖心が強く出ていた子どもも多く見られた。しかし先生の補助でなんとか進むことが出来ていた。

 前のデバイスで、跳び乗る動きだったのが今度は鉄棒に跳びつく動きになっている。跳ぶときにロイター板で行ったようにひざを曲げ、思い切り上に伸びることが必要になるのがこのデバイスだ。その点において関連性がありしかもそれが上手く機能していたと思う。

 

 

 跳びつくことと向こうの岸に跳び降りることの二つが難関だったようだ。特に後者は難しく、恐怖の穴に落ちてしまうとずっと鉄棒にぶら下がっているしかなくなる。そのときに先生が子どもの横に立って、手を添えて補助してくださった。あくまで子どもたちのタイミングに合わせて寄り添うだけで決して強引にならないところをちゃんと私たちも実行していかなければならないと感じた。

 

③走る:マットとコーン 

 花を模したデバイス。まるく並べられたマットとコーンの周りを走る。

 

 

 複数の子どもたちが一緒になって回って走っていたことが印象的だった。このデバイスでは複数でのコミュニケーションが行われればいいというねがいがあったので達成されたことになる。

 マットの厚みでころんでしまう子どもがいた。その厚みを自分のリズムで避けながら走ってほしいと思っていたがいざそうなって泣かれてしまうと申し訳なく感じてしまう。しかしすぐに泣き止み元気に次のデバイスへ走って行ったので救われた思いだ。

 

 

 走るときぐるぐると回るうちにスピードがでてきて楽しそうだった。ただ、上体が傾く様子を私は見れなかったので悔しい。

 

④支える(回る):棒 

 木を模したデバイス。棒につかまって身体を支えながら周り、また別の棒を目指して走る。

 

 

 子どもたちがぶつかり合う可能性を危惧していたが、鉄棒のデバイスでかなり時間がかかり順番待ちの子どもが多くできていたのでそのような事態にはならなかった。事前に色々な可能性とその対策を考えることができたのは学生の成長である。

 

 

 棒をつかみ身体を支えながら回って走る動きはあまり見られなかった。棒に辿り着いた時点で失速して、触りながら一周することがほとんどだった。ねらいの達成にはならなかったが、走る動きにバリエーションができたので失敗とは言えない。

 

⑤支える:ろくぼく 

 バナナを模したデバイス。ろくぼくに登ってタンバリンに貼付けられたバナナにタッチする。

 

 

 バナナを五つ用意してそれぞれが異なる高さになるように設置した。この工夫は前回のボールのデバイスの反省を踏まえて生まれたものである。同じもので難易度のバリエーションをつけたのだ。さらに全てのバナナに必ず触らなければならないということは一切せずに、むしろ触りたいものだけ触ればいいというスタンスも良かった。子どもたちの選択に任せるということまで考えることができた。

 

 

 バナナに触るとき、片方の腕をろくぼくから離す必要がある。そうなるともう一方の腕と両脚だけで身体をささえなくてはいけない。そしてバナナに向かって大きく腕を伸ばすことがちゃんと行われていた。触れてからはろくぼくに登ったまま横に移動して次のバナナに向かうこともできていた。前回もろくぼくに登っての横の移動があったが、あまりにも流れがつまってしまったので急遽無くした。しかし今回はひとつのデバイスに時間をかけるという考えがあったので問題なく、前回のねがいが持ち越して叶えられたと言っていいだろう。

 

まとめ

 今回はデバイスの数を減らしてひとつひとつじっくりとうんどうをする方向で作った。その結果疾走感はさほど無かったが、より自分の身体とうんどうの関連性を感じられたものになったように思う。周を重ねるごとに少しずつではあるが確実にできるようになっていけて、子どもたちも飽きずにうんどうをしてくれた。

 けんかやころんで泣き出してしまう子どもが多く出た。そこでの先生の対応は今後の人生で生かそうと思う。けんかで頭ごなしに一方を怒らない、なぜなら子どもはちゃんと理由があって行動するからだということを聞いて、確かにそうだしかし自分ひとりではその考えに至れなかったと感じた。

 

 

 次回はそうさくグループとの合同ワークショップだ。どのようなものになるのか想像もつかないが、この二回の体験を生かして成功させたい。

 

 

柳川郁生より 

 こんなうんどうのワークショップを、こんなストーリの元、展開していったのでした。

 

 あくまでも“うんどう”に一番の“ねがい”をこめて、しかしそれを伝えやすくするために、

そして子どもたちと学生たちが共有しやすいように、こんなストーリーができあがっていました。

 

『山のおさるさん』

 

おさるさんになって、山へ行こう!  

リズミカルに登って、ジャンプ! 

わわっ、転がり落ちちゃった 

 

谷が見えるぞ

ひょいひょいと跳び越えちゃおう♪

最後は段差を跳びおりちゃえ♪

 

あそこにいるのはボスざるだ!

一緒に走ろう! 

 

ぐるぐる木につかまって走り回ったその先には

 なんとなんと、バナナがたくさん!

よじのぼってタッチしよう♪

 

どうかな、楽しかったかな?

 

また一緒に遊ぼうね!

 

柳川郁生より

 

 こんなふうに学生たちが思いをよせて、子どもたちの“うんどう”のワークショップを展開しました。

 

 そのために一つ一つのデバイスに“ねがい”をこめながら、丹念に想像し、丹念に創造していきました。

 

 一つ一つのデバイスはほんとうにしっかりと、何度も学生たちによって味見をくり返され、

より楽しい、より気持ちいいものになるよう工夫されていきました。

 

 意外とシンプルなように見えて、

じつはいろんなことを試したうえでのシンプルなデバイスとなった今回の『うんどうの時間』でした(^_-)-☆

 

 そんな取り組みをすることができた学生たちだからこそ、

子どもたちの笑顔と歓声を嬉しく受けとめることができました♡

 

 ……この“うんどう”の世界を、またみんなでつないでいきましょう(@^^)/~~~

 

 

 

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